悪ふざけ架空戦記2   暦新島上陸作戦




第81回〜第90回









「おにょれおにょれ里在三のインチキ野郎、砲陣地を隠しやがりましたネ!!」

 ルドルフ将軍は、悔しそうに叫んだ。せっかく「ルフト・ヴァッフェ」に依頼して、空襲で砲陣地を潰して貰おうとしたのに、肝心の榴弾砲を隠されてしまってはどうしようもない。地団駄を踏んでも、手も足も出ないのだ。

「将軍閣下、どうします?まだしばらくは急降下爆撃隊も張り付いていられるでしょうけど、あまり長引くと燃料切れで帰って行ってしまいますよ」

 スカイラーク中佐の意見に、ルドルフ将軍は無茶苦茶を言い出す。

「こうなれば毒を喰らわば皿まで、ということですネ。どこでもいいから酉京市内に爆弾を落として、敵を燻し出すのです!早速、ルフト・ヴァッフェに要請を」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!そりゃいくら何でも、駄目ですって。病院や学校、住宅地域などに爆弾が命中したら、BNNが飛んできて世界中に報道されてしまうじゃないですか!『ちゃちゃちゃ国軍は鬼畜の軍隊』、とのイメージを振りまかれてしまったら、敵を利するだけではありませんか?」

 スカイラーク中佐が慌てて止める。しかし、ルドルフ将軍は不満そうな顔だ。

「マッタク、そんな甘いことをやってるから、里在三のような連中をつけ上がらせるんです。相手は便衣兵戦術をやりたい放題なのに、こちらは後ろ手に縛られて戦わなければならんとは、イカサマ野郎の思うつぼではありませんか」

 ぶつぶつと不平不満を鳴らす将軍だが、さすがに無差別爆撃敢行の要請は、思いとどまったようだ。スカイラーク中佐もほっとしている。
(第81回終了)




むぉっふぉっふぉっふぉふぉっふぉっふぉっふぉっ、ひょーっほっほっほっほっほっほっほっ。いよいよ今回も、我がマッドライフ犬柳田研究所の真価を発揮する秋(とき)が来たようじゃの。今度こそ、酉国にもちゃちゃちゃ国にも、目にモノ見せてくれるわ!」

 マッドライフ犬柳田博士は、前にも増して怪しい笑い声をあげている。さすがに、研究所員たちはもう慣れたようで、一々驚いている者はいない。

「それではブラッド君、出撃の準備ぢゃ!わが新作、傑作秘密兵器『メカジラコ』をもって、酉国にもちゃちゃちゃ国にも、目にモノ見せてくれようぞ!!」

 マッドライフ犬柳田博士は、懲りもせずに怪しいモノを作っていたようである。

「しかしですね、今回はこの前ののトロローテン提督のように、この研究所に出撃を要請して来た訳でも何でもないですよね?いいんですか、博士の判断で勝手に『傑作秘密兵器』を繰り出しても」

 ブラッド主任は、ジト目でマッドライフ犬柳田博士の方を見ている。

「いいんじゃよ。気にすることはない。何しろ、わが研究所に政府から与えられている裁量権は、ほとんどフリーハンドに近いものじゃ。犯罪行為を働くのでもない限りな」

「戦争に勝手に介入するのは、犯罪行為と言えるんじゃないですかね。少なくとも、軍人じゃないものが戦うのは、国際法違反でしょ。博士は、いつから軍人になったんですか」

「何じゃ、知らんのか。一応、ワシにもちゃちゃちゃ国軍技術少将の階級は、与えられておるんじゃぞ。ブラッド君、君も技術少佐の位に居る。さては、あまり真面目に給与明細を見ておらんな?」

 これにはブラッド主任もびっくりだ。いつの間にか、技術士官とはいえ、軍の一員に組み込まれているとは知らなかったからである。

「何ですか、それ?何時の間に、そんなことになっているんですよ!」

「今更そんなことを言っても駄目じゃぞい。もう遅いよ〜ん」

 マッドライフ犬柳田博士は、ニタニタと笑っている。ブラッド主任としては、ため息をつくしかない。
(第82回終了)




「で、出撃はどうするんですか。やっぱり、いつもの『空野田M−99』を使いますか?」

「当然じゃ。ところで、修理は済んでいるな?」

<  以双‖戦艦「不舌鳥」が茶本日島にやってきた時の戦いによって‖マッドライフ犬柳田博士専用機「空野田M−99」は、かなりの損傷を受けてしまっている。味方の戦闘機が勘違いして、機銃掃射を加えてきた為に、「マッドライフ砲」が暴発してしまったからだ。

「はい、一応済んでいますけど、もう『マッドライフ砲』は使えませんよ。半壊してしまっていますから。そこまで修理するのにはかなり時間がかかりますので、取り敢えずは砲座を外しています。このあと、ゆっくり修理するんですね」

むひょひょひょひょひょひょ〜、別に構わんよ。『メカジラコ』に『拡散マッドライフ砲』を組み込んだからのぉ。な〜に、それで十分じゃ」

 マッドライフ犬柳田博士は楽しそうである。

「よし、それでは出撃じゃ!皆の衆、『空野田M−99』に乗り込むんじゃ!」

 有無を言わさず出撃を決める博士に、反論するものはいない。ブラッド主任も「処置無し」という顔をしている。



「ふふふふふ、どこから撃ったか解らずに、困惑しているようですね。上手く行きました」

 酉京市内の司令部で、里在三将軍は笑みを浮かべている。上空に飛来した爆撃機隊は、目標の榴弾砲陣地を発見できず、いつまでも爆弾を落とせずにウロウロと旋回を続けている。困惑している様子は手に取るようだった。

「結構陣地構築は大変でしたけど、建物の中に砲を隠蔽できるようにしておいて、正解でした。さすがの奴らも、どこから撃ったかは解らないでしょう」

 可口可楽大佐も嬉しそうな顔をしている。酉京市内の榴弾砲陣地は、分散させている上に、砲台は短時間でビルの中に引き込めるように細工がしてある。敵機がやってきた時には、ビルに収納してしまえば、砲台がどこにあるか解るものではない。しかし、砲の出し入れは、人力が基本となっているので、現場の兵士の苦労は並大抵のものではない。

「これで、敵も歩兵を出してくるしかないでしょうから、建物に籠もって応戦する、こちらの得意の戦いに引きずり込める訳です。戦況は有利になってきた、と言ってもいいでしょう」

 里将軍は、自信満々といった顔をしている。歩兵戦なら負けない、ということが将軍の矜持だった。
(第83回終了)




インチキ里在三、あ奴をのさばらせたまま、このまま手をこまねいている訳にも行きませんネ」

 しばらくして、急降下爆撃隊は帰って行ってしまった。さすがに、爆弾を落とす訳にもいかないので、着艦する前に海に捨ててからである。爆弾を抱えたままの着艦では、あまりに危険なので勿体なかろうが何だろうが、捨ててからでないと着艦することはできないのだ。飛行甲板は海の状態にもよるが、常に波に揺られて動揺しているので、爆弾のような重量物を抱えて降りるのはただでさえ危険だし、着艦にしくじった場合は抱えている爆弾が爆発する可能性が高いので、パイロットと機体を粉砕するだけでなく、甲板そのものも破壊してしまう。ちゃちゃちゃ海軍の規定でも、パイロットの技量がかなり高かったとしても、それは許可されていない。え、何で同じく爆弾抱えているのに、発艦は大丈夫なのかって?車を車庫から出すのは、車庫入れに比べれば簡単でしょ。まあ、いい加減かつテキトーな説明ですが、そんなもんだと思って下さい。

「で、どうしますか?次の手段は。このままでは攻め掛かるのは難しいですよ」

 ようやく、ルドルフ将軍のもとには、戦車隊だけでなく砲兵や歩兵、工兵なども揃っていたが、榴弾砲の脅威が取り除けないのでは、迂闊に攻め掛かる訳にもいかない。損害を覚悟で戦車で強引に突破したところで、戦車だけで市内に入ってしまっては、あまりに危険である。歩兵を戦車に乗せて援護したところで、市内に突入する前にそこら中で榴弾砲が炸裂した場合、歩兵が死傷してしまって戦えなくなるので論外だ。装甲車を使うとしても、これは戦車に比べて防御力が弱いので、敵の威力の小さい対戦車砲でも叩きのめされる可能性が高い。このままでは、手詰まりである。

煙幕を展開しましょう。敵の視界を奪い、その隙に歩兵を浸透させるのです」

 ルドルフ将軍は決断を下した。取り敢えず、煙幕を展開すれば、敵の榴弾砲の脅威は薄くなる。観測できない地点に、砲弾を撃ち込んだところで無意味だから、撃ってくることはないだろう。

 将軍の命令は直ぐに実行され、酉京市前面を白い煙幕が覆うようになる。



「毒ガスだ!」

 酉京市内の建物の中にある防御陣地に籠もっていた、なしあ少佐は叫んだ。少佐は海兵隊所属で、以前「チーズ奪取作戦」の時には戦艦「百舌鳥」に乗り込み、茶本日島に上陸しチーズを奪う任務に従事していたが、今度は里将軍の指揮下に配置され、酉京市防衛軍の一翼を担っている。敵軍の一部が前進して来て、白煙が上がったのを見たところで、なしあ少佐は毒ガスと決め付けた。

「少佐、本当に毒ガスでしょうか?煙が立ち上って行くのであれば、これは毒ガスではなく煙幕なのでは、と思うのですが」

 トリツキー主義を標榜している、そよ風伍長が疑念を呈する。さすがに、「科学的鳥産主義」を信条にしているだけあって、煙が立ち上っただけで「毒ガス」と即断することは、いかがなものかと思ったようだ。
(第84回終了)




「伍長、何を言っているのですか。悪辣なちゃちゃちゃ国軍がやってくることですから、毒ガスに決まっています。疑う余地など、どこにもありません。こちらも、それなりの対処をしなければ」

「ところで、どう対処するつもりなのですか」

「決まっているじゃないですか。こちらも当然、サリン弾を使用するのですよ。目には目を、歯には歯を、毒ガスには毒ガスで応戦すべきです」

「ちょ、ちょっと待って下さい。いくら何でも、サリンはやり過ぎなのでは?あまりに危険ですよ」

交番に解毒剤を常備しておけば大丈夫です。それで、味方に被害は出ませんから」

 なしあ少佐は、どうやら「サリン」というものが、どういう代物なのか解っていないようだ。「即効性の神経ガス」というものが、どういう効果があるのか知らないで、使用すると言っているのだから、恐るべきことと言ってもいいだろう。

「あのぉ、サリンってのはそんなもんではないんですけど・・・・交番にヨタヨタと歩いていって、『お巡りさぁん、解毒剤くださいっ!』ってのは、無理ではないかと」

「サリンを喰らっても解毒剤で大丈夫だの大丈夫でないのという話は、コンテクストとしてはあまり意味がないものです。そのようなことを言ったところで、文の一部を取り出して難癖を付けているだけですし、以前言ったことには責任は持てという方が無理というものです。ということで、サリン弾をすぐに使用するように」

 理由にも何にもなっていないが、なしあ少佐は有無を言わさずサリンの使用を命令した。



「それでは、歩兵部隊に浸透作戦を開始するよう、命令してクダさい。戦車隊は、何かあった場合は援護するように」

 ルドルフ将軍は、煙幕が効果をあげたことを見届けると、歩兵の浸透を始めるように命じた。これで、敵の防御ラインを崩し、酉京市占領を成功させるつもりだ。

 歩兵が展開し、前進を開始したところで、思わぬ事態が発生する。敵が迫撃砲弾を数発撃ち込んだところの、周囲にいる兵士がバタバタと倒れ始めたからだ。
(第85回終了)




「なっ・・・・・・!」

 その光景を双眼鏡に捉えたルドルフ将軍は絶句し、青ざめる。そして、慌てて命令を下した。

「歩兵部隊は、大至急退却して下さい!敵は毒ガスを使用しました!!畜生、これはサリンに強いと思い込んでいる、キチガイの仕業ですネ」

 将軍の命令は、可及的速やかに実行された。浸透を始めた歩兵は、対毒ガス装備まではしていなかったので、それも当然である。仮に、ガスマスクがあったところで、この場合はほとんど意味がない。「即効性の神経ガス」というものは、皮膚についただけでバタバタと死ぬことになる代物だからだ。現に、やられてしまっている兵隊も出ているのである。



 サリン弾は、ルドルフ将軍の部隊に被害を与えただけではなかった。酉京市に接近し、浸透しようとしていたところに、盲撃ちしてきた訳であるから、当然の如く酉京市内にもサリンが流れて来ている。

 酉京市の境目近くに詰めていた兵士が、何が起こったか分からないうちにバタバタと倒れ、次から次へと死んで行った。あまり考えもせずに安易に毒ガスを使うと、こんなものである。

「くそ、やっぱりちゃちゃちゃ国の皆さんは卑劣ですね。毒ガスを平然と使用するとは!」

 なしあ少佐には、自分のサリン弾攻撃がそういう事態を引き起こした、という自覚はないようだ。

「取り敢えず、市境付近からは撤退です。敵の毒ガスの効果が薄れるまで、兵力を温存させねば」

 あくまで「毒ガスは敵の攻撃の為」と言い張るなしあ少佐であるが、戦場に毒ガスが充満している以上、戦闘の継続は不可能である。兵力を撤退させる、という判断は妥当なものだ。なしあ少佐は、「敵は毒ガスを使用、対抗措置として、こちらもサリンを使用した。現在、市境付近には毒ガスが充満しており、戦闘継続は不可能」との報告を、里将軍の司令部に入れた。一応、海兵隊は陸軍とは違う組織ではあるが、今回は海兵隊も里将軍の指揮下に入っているからである。
(第86回終了)




「毒ガス?!」

 里在三将軍は、前線の海兵隊からの報告に目を剥いた。まさか、いかにちゃちゃちゃ国軍が侵略的(里将軍の主観では)だとしても、そんな非人道的兵器を使うとまでは思っていなかったからだ。

「とんでもない話ですな。侵略軍が毒ガスを使用するなど。これは、ちゃちゃちゃ国の非人道的行為として、世界中に宣伝しなければ!!」

 可口可楽大佐が、憤りを露わにする。

「とにかく、兵を一時的にでも退却させねば。周辺の部隊への連絡は済んでいますね?」

 里将軍が念を押すが、それはすでになされていることであり、サリンが放出された市境付近には、現在両軍ともに一兵もいない状況だ。

「はい、それは問題ありません。さすがに、しばらくは戦闘不能でしょう。毒ガスが拡散して、濃度が低くなるまでは」

 里将軍は無言で頷くと、次の手を考え始めた。



 酉国に向かって帰投中の戦艦「家鴨」に、突然鳥酉艦隊司令部から入電があったのは、この頃である。司令長官米鉢次帥発の命令電の写しを読んで、艦長の図茂大佐は帽子を床に叩き付けた。

「か、艦長、どうしたんですか?」

 傍らの航海長、街番五中佐が驚いたように声を上げた。

「こんな莫迦な命令を、素直に『はいそうですか』と聞いていられるか。『家鴨』は暦新島に戻って、上陸作戦中の敵を排除しろだとさ。航空兵力の援護は全くなしのままでだぜ。何で鳥酉艦隊司令部の阿呆どもは、戦艦を敵中に突っ込ませることばかり考えるんだ?」

 この前の、「チーズ奪取作戦」の時もそうだった。とにかく、鳥酉艦隊司令部ときたら、敵に向かって突っ込めという命令ばかりを出すのである。しかし、今回は前よりよほど状況が悪い。「百舌鳥」で茶本日島に突っ込んだ時は、それでもまだ「百舌鳥」の乗組員の練度はそれなりにあった。しかし、今回は竣工したばかりの「家鴨」であるから、新兵が多く訓練期間もあまり取れなかったのである。「チーズ奪取作戦」の時は、幸運にもチーズを奪って帰ってくることには成功したが、今度は暦新島に以前以上の規模で大挙押し寄せている敵に、以前よりレベルの低い、たった一隻であたらなければならないのだ。図茂艦長でなくても、無茶な命令だと思うところだろう。
(第87回終了)




「では、鳥酉艦隊司令部に意見具申しますか?」

 街番五中佐が訊ねるが、図茂艦長は首を振った。

「無駄だ。米鉢やら田岡やら、田町やらの、極めつけのイカレポンチどもが、おれの言うことなんか聞くものか。労力の無駄に決まっているから、そんなことはしなくていい」

 図茂艦長は断言すると、街番五中佐に180度回頭を命じた。「家鴨」はぐるっと一回りし、暦新島に引き返し始める。



「毒ガスが拡散したところで、直ぐに兵員を再配置しても、敵の攻撃開始までに迎撃の準備が間に合わないでしょう。むしろ、市境部の陣地は放棄し、市内に敵を引きずり込んで戦うべきです」

 里在三将軍は、方針を決めると、市内への兵員の再配置を命じた。こうなった以上、文字通りの市街戦に敵を引きずり込むしかない。

「しかし、酉京市内に敵を引きずり込むのはいいとして、戦車に突入されて歩兵と連携された上でいいように暴れられては、不利になると思われますが。大通りの要所要所に、対戦車地雷を更に埋設し、瓦礫などで障害物を構築して、敵戦車の行動を阻むべきです」

 可口可楽大佐の提案に、里将軍は頷いた。

「それでよろしいでしょう。何と言っても、対戦車砲が通用しませんからね。重砲の一斉射撃なら効果はあるようですが・・・」

「ところで、対戦車砲が通用しないのなら、高射砲は活用できないでしょうか?」

 高射砲は、何千メートルも上空の敵機目がけて、重力に逆らって真っ直ぐに砲弾を飛ばす必要がある。よって、その砲を対戦車用に転用すれば、かなり効果がある場合が多いのだ。しかし、あくまで対戦車用に使用できる徹甲弾があってこそ、ではあるのだが。

「むむむ、一応使えるとは思うのですが、あまり徹甲弾の備蓄がないんですよね。それに、砲自体の数も少ないですし・・・・」

 里将軍としても、高射砲の活用を考えなかった訳ではない。しかし、砲の数が十分確保できるならともかく、そうでない現状では、効果が薄いと判断していたのである。
(第88回終了)




「少数でもいいのです。直線路の長い、メインストリートの九官鳥街路に、相互支援できるように、最低限の二門でいいですから、配備願えないでしょうか。それで、かなり効果があると思われますので。街路上で敵戦車を撃破してしまえば、今度はそれが障害物になりますし」

 可口可楽大佐の提案を聞き、里将軍は即決した。

「なるほど。それはなかなか上手い方法ですね。よろしい、それで行きましょう。二門なら、直ぐに準備できるでしょうから」

 里将軍は電話を取ると、高射砲部隊に繋いで、指揮下の砲2門を九官鳥街路に配置し、対戦車戦闘に備えるように命令する。たかが2門と莫迦にするなかれ。メインストリートとは雖も、所詮は都市の話である。装甲車輌が自由に行動できる程広くはない。しかも、酉国の場合は、自動車の普及率もそれほど高いとは言えず、道路拡張などまだまだ先の話、歩行者優先が通常という状況だ。そこに、射程の長い高射砲を対戦車用に配備し、敵戦車の射程外から一方的に撃破することができれば、これは勝負にならないのである。また、撃破された戦車が道を塞ぐので、敵の進撃に対する妨害となる効果もあった。何しろ、戦車というのは装甲板の塊で、重量がある。そんな代物を、しかも壊れてしまっているものを、敵の妨害を受けながらでも排除しないと、進撃路が確保できなくなる。困難極まりない作業としか言いようがない。



「そろそろ、毒ガスも拡散したようですネ。よろしい、市内への突入を開始してクダサイ」

 ルドルフ将軍が命令し、工兵を先頭に、歩兵部隊が先ず浸透を開始する。市境付近からは防衛軍はすでに撤退しており、無人と化しているので、市内への突入は容易に行える。しかし、敵が仕掛けた対人・対戦車地雷がまだ残っているので、工兵がそれを排除しながら進撃路を啓開しなければならないので、時間はそれなりにかかる。

 ようやくのことで、進撃路が確保されると、先ずは歩兵が市内に突入し、建物の陰に隠れながら、じりじりと占領地域を増やして行く。もちろん、酉国側もこれを傍観していた訳ではない。同じように歩兵部隊を繰り出したので、両軍が出会った場所が即戦場と化してゆく。各所で銃撃戦が展開され、手榴弾の投げ合いも行われるようになった。
(第89回終了)




「装甲部隊を突入させてクダサイ。なお、歩兵は装甲部隊の援護を行うように」

 ルドルフ将軍は、頃合いを見計らって、戦車と装甲車に市内への突入を命じた。歩兵と連携するのは、この場合は当然の戦術であった。前も示した通り、戦車や装甲車というものは、装甲板で囲まれているものなので、車内からはとにかく視界が狭い。気が付かない内に、歩兵に死角から接近され、ハッチを開けられて車内に手榴弾を投げ込まれたりしたら、目も当てられなくなる。遮蔽物の多い市街戦となれば、尚更のことであった。

 将軍の命令で、装甲部隊はエンジンを掛け、車列を連ねて市内への突入を開始した。「プロパ・ブンヤ連隊」連隊長、コキチシュタイン大佐のパンテル戦車も、移動を開始する。

「いぐどぉー!今度こそ、酉京市内に突入だぁ!!」

 大佐は気勢を上げた。今度は、敵は榴弾砲を使用してこない。どうやら、市内に引き込んでの戦いに変更するようだ。

「プロパ・ブンヤ」連隊のパンテル戦車を先頭に、「ルドルフ・ナンバーSS装甲擲弾兵師団」の戦車隊が、続々と酉京市内に突入して行く。それに、装甲歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車が続行し、戦車を援護している。



「敵戦車部隊、酉京市内に突入!」

 敵侵入の報せは、恐ろしく迅速に、里将軍のもとに届いた。

「解りました。各拠点は、それぞれの判断で応戦するように」

 将軍はそれだけを命令すると、続報を待つ。たちまち、戦果と損害の報告が、続々と入り始めた。

「敵戦車一両、地雷により行動不能!」

「A32拠点、敵戦車砲の命中により全滅!」

「火炎瓶攻撃により、敵装甲車二両炎上!」

「降車した敵歩兵と銃撃戦を展開中!」


 それらの報告を総合し、オペレーターが作戦地図に敵味方の状況を記入して行く。こうすることによって、総司令官が現場にいなくても、戦況判断できるようにしているのだ。
(第90回終了)











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