アムネスティ・レポート 世界の人権 2003(中国)
中華人民共和国 PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA

首都:北京
人口:12億8500万人
公用語:中国語(北京語)
国家元首:国家主席江沢民
政府首班:首相朱鎔基
死刑制度:存続
国際刑事裁判所:未署名

深刻な人権侵害が続いており、状況がさらに悪化した面もある。表現、結社、信仰の自由に関する権利を平和的に行使したことにより、引き続き数万人が恣意的に拘禁されまた投獄された。拘禁刑判決を受けた者もいたが、多くは起訴も裁判もなしに行政拘禁されている。2001年4月に始まった犯罪撲滅キャンペーン「厳打」は1年間延長されることとなった。入手できた暫定的な統計によると、この取り締まりの結果不公正な裁判によって少なくとも1921人が死刑判決を受け、1060人が処刑された。拷問・虐待は依然として蔓延しており、「厳打」のため増加していると見られる。この犯罪取り締まりは、新疆ウイグル自治区の「民族分離主義者」、「テロリスト」、「宗教的過激派」として非難された人びとや法輪功修行者などにも及んでいる。またインターネットの利用を取り締まる法律も導入された。労働争議が増加して、しばしば過剰な力の行使や恣意的拘禁を受けた。新疆ウイグル自治区では、主にイスラム教徒の少数民族ウイグル族の文化的・宗教的権利に対する規制が強まっている。
チベットでは、7人の良心の囚人が刑期満了前に釈放されたが、表現や信仰の自由は厳しく制限されたままである。

<目次>
1.背景
2.労働者の権利と社会不安
3.宗教団体に対する弾圧
4.政治活動家、人権擁護活動家、インターネット利用者
5.拷問・虐待
6.行政拘禁、不公正な裁判、法の支配
7.死刑
8.難民と難民としての保護を求める人びと
9.新疆ウイグル自治区
10.チベット自治区とその他のチベット地域
11.香港特別行政区
12.マカオ特別行政区
13.アムネスティ報告書

背 景
反体制派と疑われた人びとに対する政治的取り締まりのため、法の支配と司法機関を強化する対策が妨げられている。愛国主義や国家安全、社会安定などの主張により、周辺地域の民族的・宗教的少数派や中国全土における非公式な宗教団体などに対する締め付けが正当化された。
犯罪撲滅キャンペーン「厳打」の結果、しばしば正式な手続きなく死刑や過酷な拘禁刑を科し、犯罪被疑者から自白を引き出すために拷問・虐待を行なう状況が続いている。
11月、第16回共産党大会(CCP)で、胡錦濤が江沢民の後継者として党総書記に選出された。胡総書記は2003年3月に国家主席として就任する予定である。「厳打」キャンペーンは4月に1年間延長され、党大会準備期間中に一層強化された。
8月、中国は「最悪の形態にある児童労働の即時廃止に関する国際労働機関(ILO)条約第182号」に署名した。同時に政府は、2002年12月1日以降の児童労働を禁止する指令を発布した。
2001年12月末に採択された刑法の「反テロリスト」改正案は、死刑の適用範囲を拡大し、「テロリスト」組織とその活動を曖昧に定義するものであり、表現や結社の自由への正当な権利を抑圧するために利用される懸念がある。
これまでの慣行とは異なり、国連人権委員会加盟国は中国の人権状況についての決議を提案しなかった。8月、国連人権高等弁務官メアリー・ロビンソンは中国を訪問し、少数民族の弾圧、不公正な裁判で投獄された政治囚および死刑など様ざまな問題について当局と討議した。

労働者の権利と社会不安
労働争議が大幅に増加し続けている。不満の原因としては、低賃金、経営陣の腐敗、大量解雇、工場における劣悪な労働環境と抑圧的な労働慣習などである。
多くの抗議に対して警察は過剰な力を行使し、死傷者も出た。抗議をした人びとが拘禁されたり、嫌がらせを受けたり、また長期の拘禁刑を科されたりした。抗議をした人の弁護士や抗議行動を報道したジャーナリストが脅迫を受け、あるいは逮捕された。
2001年10月に導入された労働組合法改正により改善された点もあるが、労働者の権利を制限した点もある。改正法は、依然として労働者の結社や表現の自由を厳しく制限し、独立系の労働組合を違法としている。
地方でも、腐敗や過重な課税などに対する抗議が続いている。抗議者は逮捕され、長期の拘禁刑判決を言い渡された者もいる。

宗教団体に対する弾圧
気功集団や未公認のキリスト教など非公式の精神的・宗教的団体のメンバーが引き続き恣意的に拘禁され、また拷問・虐待を受けた。
「邪教組織」として1999年7月に禁止された法輪功に対する弾圧は、法輪功修行者がケーブルテレビや衛星テレビを傍受して法輪功支持のメッセージを放送してからとくに強化された。
法輪功修行者数万人が引き続き拘禁されており、多くは信仰を放棄しない限り拷問・虐待を受ける恐れがある。拘禁中の法輪功修行者の死者は、2002年末までに約500人に達したといわれる。彼らの大多数は「労働矯正収容所」に拘禁されているが、刑務所や精神病院に拘禁されている人びともいる。法輪功による抗議のため告発された人びとは、明らかに不公正な裁判で拘禁刑判決を受けた。
非公式のキリスト教団体の信者も逮捕され、なかには長期の拘禁刑を受けた者もいた。警察拘禁中に拷問・虐待を受けたという報告もあった。

政治活動家、人権擁護活動家、インターネット利用者
政治活動家、人権擁護活動家、インターネット利用者が、表現や結社の自由を平和的に行使したために逮捕、拘禁された。多くは「国家機密」や「国家転覆」に関する罪という反体制派への抑圧に広く用いられる定義のあいまいな容疑により拘禁された。「政治的な配慮を要する」情報をインターネットで流したため長期の拘禁刑に服している者もいる。
2001年1月に導入された法律により、インターネットを通じて海外の団体や個人に「国家機密」を漏えいし「とくに深刻な被害」を与えた者には死刑が適用されることになった。2002年1月、情報産業部は、インターネットプロバイダーにインターネットの使用状況を一層綿密に監視するよう求める新たな規制を発表した。11月、文化部が導入した新しい法律でインターネット接続とインターネットカフェの経営が制限された。
12月、古参の反体制派、徐文立が、刑期を9年残して釈放され、米国へ追放された。徐文立は、「中国民主党」を創設したため、1998年、「転覆」の罪名で懲役13年の判決を受けていた。彼は、刑務所内でわずらったB型肝炎のため、健康状態が悪化しており、公けには、医療のための仮釈放ということになっている。

拷問・虐待
拷問・虐待は依然として蔓延しており、多くの国家施設だけでなく職場や家庭でも報告されている。これらの被害者には、刑事囚・政治囚の被拘禁者、抗議活動に居合わせた者、出稼ぎ労働者、浮浪者、売春婦と疑われた女性なども含まれていた。
一般的な拷問方法としては、蹴る、殴る、電気ショックを与える、両手で吊りさげる、苦痛を伴う姿勢で拘束具を付ける、眠らせない、食事を与えないなどであった。
6月、公安部高官、祝春林は、自白を引き出すための拷問には問題があるとし、警察の厳格な規律と虐待に関する調査が必要であると認めた。

行政拘禁、不公正な裁判、法の支配
抑圧的であいまいな規定からなる刑法、行政拘禁の適用、権威のない司法、権力を乱用した役人に対する免責など、これらの複合的要因が、引き続き広範な人権侵害を引き起こしている。
近年、2種類の行政拘禁の行使が急増した。出稼ぎ労働者や浮浪者、浮浪児を含む100万人以上の人びとが「収容送還」と呼ばれている行政拘禁制度により起訴なしに拘禁されている。
最新の公式統計では、2001年初頭に約31万人が「労働矯正収容所」で起訴も裁判もなしに行政拘禁されていた。この数値は、政府が法輪功修行者に対する弾圧と犯罪撲滅キャンペーン「厳打」を実施した結果、2002年に大幅に増加したと思われる。
政治犯罪や刑事犯罪で告発されている人びとは、依然として正当な手続を認められていない。評決や判決が裁判前に当局によって決められていたり、控訴尋問が通常形式的なものにすぎないなど、政治犯罪についての裁判は公正な裁判の国際基準にはほど遠い。「国家機密」に関連する罪で起訴された人びとの法的権利は制限され、その裁判も非公開である。「厳打」キャンペーンの結果、「自白」を引き出し裁判手続きを省くための拷問が増加した。
古参の人権活動家、王万星(オウバンセイ)は、1999年の3カ月間をのぞき、10年間、北京の安康精神病院に拘禁されたままであるが、精神病にはかかっていないと伝えられる。2002年のなかば、彼は、より厳重な病棟に移されたという。そこの管理は以前より厳しく、外界とのすべての接触が確認されていない。

死 刑
政治的介入により死刑が引き続き広範囲かつ恣意的にまた頻繁に判決されている。「厳打」キャンペーンが開始されてから死刑執行の増加が見られるようになった。以前は拘禁刑が下されていた犯罪に対しても死刑を適用する傾向がある。死刑判決は2002年を通して増加したが、とくに11月の中国共産党大会への準備期間中に多く見られた。
薬物犯罪や暴力犯罪だけでなく、脱税や売春あっ旋などの罪により処刑された人もいる。限られた資料によると、2002年末までにアムネスティは1921人の死刑判決と1060人の処刑を記録したが、実数はこれをはるかに上回ると思われる。
執行は銃殺や薬物注射によるもので、判決後数時間以内に実施されることもあった。拷問による自白に基づいた誤審が前年までに数件発覚したという報告もあった。6月、国連国際麻薬撲滅デーの日に麻薬関連の犯罪により中国全土で少なくとも150人が処刑された。

難民と難民としての保護を求める人びと
2002年を通して、中国東北地方で北朝鮮からの難民申請者数百人から数千人が逮捕され強制送還された。このため多くの人びとが正当な難民申請の証拠を持っていたにもかかわらず、難民申請手続きを取ることができなかった。これは中国も加盟国である1951年の国連難民条約の原則に違反している。
この1年に数十人の北朝鮮人が難民申請を求め、窮状を訴えるために中国の数カ所の外国領事館などへ駈け込んだ。これに対し中国当局は、とくに北朝鮮と国境を接する地域で北朝鮮人への弾圧を強化し、迫害の恐れがある本国へ強制送還した。弾圧は外国の援助組織や宗教団体など北朝鮮人を支援したと疑われた人びとや朝鮮族中国国民にも及び、彼らの多くは尋問のため拘禁された。

新疆ウイグル自治区
この地域では、拷問、恣意的拘禁、不公正な政治裁判などの深刻な人権侵害が続いている。当局は、引き続き2001年9月11日に米国で起きた「テロ」攻撃をウイグル人への抑圧を正当化する口実としている。とくに米国と国連が「東トルキスタン・イスラム運動」を「テロ組織」であると指定してから、抑圧が顕著になった。また犯罪撲滅キャンペーン「厳打」との関連で抑圧が強化され、2001年12月に新たな「反テロリズム条項」が導入された。
「民族分離主義者、テロリスト、宗教的過激派」というレッテルを貼られた反体制派の被疑者に対して、信教の自由の制限、モスクの閉鎖、および学者や報道機関と芸術分野における中心的人物、イスラム教聖職者に対する強制的な「政治再教育キャンペーン」などの弾圧が行なわれた。「分離主義者」や「テロリスト」と疑われた人びとの逮捕が続いている。このなかには長期の拘禁刑を下された者や、処刑された者もいる。良心の囚人を含む数千人の政治犯が拘禁されたままである。
ウイグル史の研究のため11年の刑を言い渡されたウイグル族の良心の囚人、トフティ・トゥニヤスは、依然、服役中である。日本の大学院生である彼は、学位論文を書くための調査で新疆ウイグル自治区に一時帰国中の1998年2月に逮捕された。彼は、「分離主義煽動」と「国家機密不法入手」で起訴された。1999年3月有罪を言い渡され、2000年2月、控訴審において有罪と刑期が確定した。

チベット自治区とその他のチベット地域
ガワン・チョフェル、ジグメ・サンポ、ガワン・サンドルを含む7人の良心の囚人が釈放され、中国当局と亡命チベット政府代表者との会見が行なわれるなど、チベットの反体制派に対する当局の姿勢に変化のきざしがみられた。しかし、表現・信教・結社の自由は依然として厳しく制限されている。僧院や尼僧院が破壊され、僧侶や尼僧が追放された。12月には、近年で初めて、政治犯罪容疑によりチベット人に対する死刑判決が下された。僧侶や尼僧など180人以上が依然として基本的人権を侵害されたまま拘禁されており、恣意的拘禁や不公正な裁判も続いている。被拘禁者の拷問・虐待が報告されており、被拘禁者の多くは刑務所の過酷な状況のなかで健康を害している。
12月、チベットの高名な宗教的指導者テンジン・デレク・リンポチェが、「分離主義を扇動」し「爆破事件を引き起こした」容疑で2年の執行猶予付き死刑判決を受けた。彼の従者ロプサン・トントゥプは、上記に加え「銃・弾薬の不法所持」でも有罪とされ死刑判決を受けた。彼らは4月の逮捕以降8カ月ものあいだ、隔離拘禁されたといわれている。この裁判は不公正であり、テンジン・デレク・リンポチェはこれまでの宗教的または地域的活動のために、不正に起訴されたのではないかという重大な懸念がある。

香港特別行政区
2002年に採択された「反テロリスト条例」により人権が制限される恐れがある。政府は、国家反逆、分離独立、国家反乱および国家転覆などの行為を禁止する香港独自の法律制定を認めた基本法23条に基づき、提案された条例に関する諮問文書を発表した。この提案は、表現や結社の自由および非政府組織(NGO)や報道機関の正当な活動の規制にまで利用される可能性があることが懸念されている。
警察が経済問題や居住の権利に関する抗議に対し過剰な力を行使したという報告があった。3人の有力な活動家が逮捕され、これまで適用されたことのない改正された「公安条例」に基づいて違法な集会を組織した罪により起訴された。
11月、さらに2人の著名な活動家が3人の逮捕に抗議して5月にデモを行なったために同じ罪状で逮捕、起訴された。
香港では認可された団体である法輪功修行者が、平和的なデモのために逮捕され、警察から虐待されたと申し立てた。8月、法輪功修行者16人が3月のデモ行動の際に妨害行為を行なった容疑で有罪判決を受けた。この裁判は政治的な動機に基づくものであるという申し立てがあった。

マカオ特別行政区
警察拘禁中の殴打や拷問が引き続き報告されている。少なくとも1人の被拘禁者が疑わしい状況で死亡した。警察が労働争議の際に過剰な力を行使したとの報告があった。警察の暴力の申し立てに関する調査は進展が遅く、不十分なものである。報告によると、マカオで認可されてはいないが禁止されてもいない法輪功の修行者が警察から嫌がらせを受け、外国人の修行者はマカオへの入国を拒否されている。

アムネスティ報告書
People's Republic of China: Call for accountability for Tibetan deaths in custody in Drapchi Prison (ASA 17/009/2002)
People's Republic of China: China's anti-terrorism legislation and repression in the Xinjiang Uighur Autonomous Region (ASA 17/010/2002)
People's Republic of China: Labour unrest and the suppression of rights to freedom of association and expression (ASA 17/015/2002)
People's Republic of China: Human rights violations and the crackdown on dissent continue (ASA 17/047/2002)
People's Republic of China: Establishing the rule of law and respect for human rights − the need for institutional and legal reforms (ASA 17/052/2002)
People's Republic of China: State control of the Internet in China (ASA 17/007/2002)
Hong Kong: Article 23 Legislation−the potential for abuse (ASA 19/004/2002)
Hong Kong: Police must exercise restraint in handling protesters (ASA 19/001/2002)

※以上は、下で紹介する『アムネスティ・レポート 世界の人権 2003』(編訳:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本)の中国に関する国別報告を、アムネスティ日本の許可を得て転載したものである。

アムネスティ・レポート 世界の人権 2003

▽「アムネスティ・レポート 世界の人権」シリーズは、世界中のメディア、研究者、NGOが参照する、定評あるアムネスティの年次報告書 Amnesty Report の翻訳版。毎年約150カ国の人権状況について、詳細に網羅した日本で唯一・必須の資料。新シリーズ第3弾です。
▽2003年版英文報告書をもとに、2002年中の世界の状況を報告。イラク戦争へと突きすすんだなか、無視された人権侵害までも記録されています。
▽アムネスティ日本編訳 A4並製/285頁/AI Index: POL 10/003/2003/2003.10.10(定価:3,150円)

お問合せ先:
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