こんな人にはもう二度と出会えないと思った。




私だけのクラフティーボーイ☆ 〜第一章〜




「え!?忍足君って一人暮らしなの?」
「あれ、知らなかったん?」


お昼休み。
いつもは同じクラスの向日君や滝君なんかと食べてるのに、今日は一人席に座ってのランチ。
その背中がなんともいえず気になって、気がついたら話しかけてた私。

「おいしそうなお弁当だね」

昼休みに話したことのない人に話しかけるとしたらこれが一番妥当じゃない?
少し(いやだいぶ)白々しいけどこの際しょうがない。
実は私、この機会を結構ねらってたんですよ。クラフティーにね!

でも私はまだ気付かなかったんだ。最大のミスをしてることを。



こいつの弁当・・・・・全然うまそうじゃねえ!!

彼の机の上にのってたのは三角になれきれてない、いびつな形をしたおにぎりが三つ・・・。
何か混ぜてあるわけでもなく、ましてや海苔も巻いてない。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」


「・・・食う?」
「え?」
「秋間、腹減っとるんちゃうん?」


いや、全然減ってないっす!って全力で否定したかった。
でもそのとき私は好奇心に勝てなかったんだ・・・。
だって次に彼がいったのは・・・・

「これ俺が握ってん。」



「・・・・・一個もらおうかな」
「ええよ、はい」


三つしかないのにその中の一個あげちゃうなんて!
そんなにひもじそうにみえたのかな。
うん、そのうまそうな弁当よこせって言ってるみたいだったよな。
しかしでかいよ、これ。
せめて中にはなんか入ってるだろう。
いや、期待しちゃいけないのかな。
でもこんなに大きいんだもんね。中まで真っ白ってことはないよね。

うん。なんも入ってない。

「自分で作ってるなんてえらいね〜。なんか忍足君って期待裏切らないよね」
「そうか?まあ、昼飯は自分で作らな、買わなあかんからな」
「あ、お母さん働いてるとか?」
「ちゃうよ、一人暮らしやから」
「え!?忍足君って一人暮らしだったの?」
「あれ、知らなかったん?」
「知らんかったわ〜」
「中学上がるとき太郎にスカウトされてん。」
「あ、テニス?」
「そうやで、俺これでも“氷帝の天才”やねん」
「へ〜。初耳だァ」
「うっそ!結構有名やと思ったんやけど」
「自称とかじゃなくて?」
「自分失礼やな〜。あの跡部様が名付け親やねん」
「マジで!?じゃあほんとなんだあ」
「せやねん。今度部活見にきいや。がっくんとかめっさおもろいで」
「向日君?」
「俺、猿回し師やねん」
「もう、忍足君いってることわからないよ!」

私はおなか抱えて涙が出るほど笑った。
面白いやつなんだろうなとはジャージの事実を知ってから思ってたけど、本当におもろいよこの子!



でも、やっぱり私は彼の全てをこれから少しずつ知るしかないらしい。
彼は私の理解の範囲を大幅に超えた大物だ。




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