「み〜ほ〜!!またうまく話せなかったよぉ。」
「あ〜あ、またどうせ乙女モードにはいちゃったんでしょ。」
「ひど〜い美穂!!そんなんじゃないもん。」


美穂はなぜか恋愛相談されることが多い。
そんなに恋愛経験豊富ってわけじゃないんだけどなぁ。

「まぁさぁ、きっと向こうだっって緊張してるはずだしさ、一緒だと思って話してみなよ。」
「そっかぁ。ありがとね、美穂」


なんでこんなアドバイスしてるんだろう・・・
そう、実は美穂は恋愛モードに突入するとかなりしゃべれないのです!
家では妹とピンクレディー踊りまくったりしてるのになぁ・・・
教室でだってGLAY歌いまくれるし。


どうしてなんだぁ〜〜〜〜〜〜!!






君に笑顔を





夕暮れの道、いつも通る道も冬のあまりの寒さに違って見えた。
こうやって三原君と一緒に帰るのも、もう約束事みたいになってた。
みんなと話してると、三原君がいつも
「さぁ、僕とともに帰れる時間がやってきたよ!!」
教室の扉を嬉しそうに開けて迎えに来る。
付き合って一ヶ月。すごい変な人だけど、今のとこ不満はない。
っていうかこう・・・肩のラインが綺麗なんだよねぇ。
あぁ〜いけないいけない。これじゃ美穂が怪しい人みたいだよ。
問題といえば・・・まだ下の名前で呼べない美穂のほうだよ。

「美穂??この僕の話を聞いているかい?」
「うん。」
「そうかい?ほんとにあの葉に輝く朝露は美しかったのだよ。
僕の美しさと君の可愛らしさには、もちろん及ばないとは分かっていたけれどね。」
「そうだったんだぁ・・・」

うわっ!またやっちゃったよ。
いつもみんなと話すみたいに話せないのは美穂なんだよね。
三原君はいつもさりげなく送ってくれる。
長く伸びた髪が、夕日に光って一層輝いていた。
学校一の有名人と付き合っているなんて、美穂もやるもんだよな。
僕は天才だっ!とかいいながら、デートはいつも誘ってくれてる。
というより、連れてかれる??連行?拉致?
そんなとこもかわいくて許しちゃうんだけどね。
じゃあここはひとつ!美穂からさそってみるかなぁ?
よしっ!気合入れていくぞ!


「三原君!!12月24日、どっかいこうよ!」
「美穂、僕はその日は忙しいんだ。なにせ、この冬という季節はどうにも僕の創作意欲を刺激する美しい季節だからね。」
「はっ!?」
「なんということだ。もうここは君の家の前ではないか!それじゃあ今日もいい夢をみておやすみ、僕のミューズよ!!」

そして彼はいつものように華麗に去っていった・・・
ってちょっと待てぇい!三原色!
信じらんない!いっつも人を連れまわすくせに!!

クリスマスは忙しいなんてどういうことだぁ!!




「あっはははははははは」

金子家に笑いが響いた。
「カメちゃん!そこは笑うところじゃありません!」
妹の「カメちゃん」が美穂の話を聞いて大笑いしたのだった。
美穂の家には家庭内のあだ名が存在する。
「おねぇちゃんさぁ、なんでクリスマスだっていうのにそんな顔してるのかと思ったら・・・可哀そうに。」
「美穂は可哀そうじゃないもん!いい?今日はプレステ大会だよ、カメちゃん!」
「お姉ちゃん・・・ごめん今日デートなの。はっ!やっばい遅刻する〜!」

美穂の目の前で手のひらをひらひらさせてカメちゃんは去っていった。
美穂ほどクリスマスがすきなひとなんていないのに、今年はパパの浮かれ具合も人事に見えるよ。
凝りまくってるツリーのオーナメントも悲しくみえるよ。
うわっ!ほんと暗いし!こんなのは美穂じゃないっ!!





彼氏いるのに・・・なんっにも起こらずにイヴが終わるよ。
・・・・・・・・・・・・・・ありえないっっっっっ!
プレゼントとかないわけ?せめて一緒に過ごすとか。







時計の針が夜中の十二時を回った途端、鳴らなかった携帯が鳴った。
「もしもし?美穂かい?」
まさしくそれは、三原色だった。
「何考えてんの?いま何時だと思ってるの?」
うまく話せないなんて悩んでいた日のことが遠い昔の話みたいに、美穂は怒りをぶちまけた。
「何を怒っているんだい?そんなことよりいいから外を見てごらん。美しく清純な雪が君を包むと思うよ。」
そんなことよりって言葉が気になったけど、美穂は窓を開けて雪を見ることにした。雪って本当に好きなんだよね。
今年は美穂が金子家で一番乗りに見つけたかも。


窓を開けると、そこには三原君の笑顔があった。
雪の中、自信たっぷりに手を振ってる。

すごい・・・これじゃドラマの王道ひた走ってるよ。
感動すべきところで憎まれごとを思いながらも、足は自然と三原君のもとへ向かっていた。
「さぁ!イエスキリストの誕生をこの僕とともに祝おうではないか!」
「三原君。イヴは終わっちゃったんだけど。」
「何を言ってるんだい?生誕の日こそ祝うべきだよ」

もしかして、彼はイヴが恋人たちの日だということを知らないらしい。
あまりのとぼけっぷりに怒りなんて消えてしまった。


「さぁ、僕のミューズにプレゼントをあげよう。僕だけでももちろん充分なのだけれどね。」
大きな包みを渡された。包みどころじゃない。両手じゃないと持ちきれない。

包みを開いたとたん、美穂の顔には笑顔が浮かんだ。
「それでこそ君の最高に美しいものだよ!僕はどうしても君に笑ってほしかったんのさ。
この僕であっても1週間の費やしてしまったよ。」
「昨日も描いてたの?」
「そうだとも。」







「ありがとう、色」



初めて名前を口にした日は、きっとずっと忘れない。


色が描いたキャンパスには、
たくさんのスノードロップに囲まれて、笑顔で手を振る美穂がいた。