昨日ずーっと考えてたの。家に帰ってから、私は抜け殻みたいに時間に身を委ねてた。
「おはよう!!」
 ナツはいつも通り私に話しかけてきた。知らないふりをしていればいいのかなぁ。
「昨日は帰るの早かったね。」
 ちょっと意地悪く聞いてみたの。そしたらナツったらね。
「あぁ、うん。ちょっとね。」
 どうして言わないの?こーちゃんと帰りに買い物してたって。
 ねぇ、どうして言ってくれないの?隠さなきゃいけないことなの?
 私、知ってるよ。
 だってこーちゃん、私のこと見てビックリしてたもの。
 一緒にいたのは、ナツでしょ?

 窓の外は銀世界。本当にねゆきになっちゃったね。
 今日も一日中ぼーっとして過ごしてた。誰とどんなことを話したのか覚えてないの。
 ただね、いつもと違っていたこと。それは美奈とナツと三人でお話してないの。
 ナツと一緒にいるのは、なんだかつらいから。
 …だから、こーちゃんとも話してないの。
 今日の終わりのチャイムが鳴る。
 もう少しだけ、教室にいよう。
 昨日みたいに居合わせちゃったら、嫌だもんね。
「さっちゃん、帰らないの?」
 美奈が私の顔を覗き込む。
「うん。もう少し、ここにいる。」
 無理して笑っても、美奈にはわかっちゃうんだよね。
「どしたの?」
 なんでもないよって言う私。なんでもないなら教室に残る理由もないのに。
「元気出しな!!じゃーねー。」
 美奈が大きく手を振って帰っていくのを見届ける。
 この教室には今、一人だけ。やっぱり淋しいね。リュックを背負って、帰ろ。
 白い雪が積もってて、私が歩くと足跡が残るの。
 そんな「当たり前」のことが愛おしくて。

 こーちゃんの中に、私の「跡」はないですか?

 夏はね、よくこのおっきな木の下でお弁当を食べるの。
 美奈とナツと、木陰で話すのが好きなの。
 この木の下だけは雪が積もってないのね。
 ちょっとあそこから雪を持ってきた。素手で触ると、雪ってイタイね。
 キュッて軽く握って形を作って、私は赤い実を探す。
 ふたつ作ったから、実は4つ必要ね。
 あ、あった。この実ってなんていう名前だったかしら?
 お正月に活躍する…、忘れちゃった!
 小さな雪だんごみたいなものに赤い実を埋め込んで。
 ちょっと、眺めてた。
 すると急にね。
「何やってるの?」
 ビックリして立ち上がり振り向くと、こーちゃんがいた。
「雪うさぎ」
 私はぽそって呟いた。
 こーちゃんはちっちゃく笑った。
「さっちゃんと俺みたいだね。」
「え、どうして?」
「だって、そのうさぎ達、仲良さそうじゃん。」
 でも、私、仲の良い友達で終わるのは嫌だよ。
「探したんだよ。」
 私は首を傾げた。
「さっちゃんのこと、探してたんだよ。どこに行っちゃったのかと思ったよ。」
「どうして私を探すの?」
 こーちゃんはぶっきらぼうに紙袋を渡してくれた。
 この袋、昨日、こーちゃんとナツが入っていった雑貨屋さんのだ。
「あけてみな」
 促されて開けると白い手袋が入ってた。
「これ、どうしたの?」
「昨日、コーヒー牛乳引っ掛けちゃったからさ、お詫びに。」
 じーっとこーちゃんの顔を見てみた。
「ナツに選んでもらったんだ。俺、そういうのよく分かんないから。」
 ちょっと泣きそうな顔をしてこーちゃんを見てみた。
「え?なに?」
「こーちゃんってナツと付き合ってるの?」
 うつむかないで。答えてよ。違うって、答えて。
「あれ、やっぱり、さっちゃんと美奈だったんだね。」
 昨日見かけたよって答えるしかなくて。
「ナツが、さっちゃんと美奈には言うなって。」
 遠回しに言わないで。はっきり言ってよ。
「こーちゃんはナツと付き合ってるんでしょ?」
 涙があふれそうなこの目でも、こーちゃんがうなずくのがわかった。
 でも、ここで泣いちゃいけないよね?
「いいんじゃない?お似合いじゃん!」
 心にもないことを言うのが、こんなに簡単なことだとは思わなかった。
 こーちゃんはなにも言わなかった。
「この雪うさぎ、こーちゃんとナツだったんだね。」
 空を見上げるとそこは灰色の世界。
 灰色の世界から白い雪が舞い降りて、私の心を黒くする。
「こーちゃん、帰ろうよ。」
 どうして私はあんなことを言ったの?
 お似合いだなんて、全然思ってないのに。
 私も、こーちゃんが好きなのに…。
 どうして気付いてくれないの?
「そうだね。帰ろうか。」
 その低い声が好きなの。その後ろ姿が好きなの。
 どうして、私には好きだって言わせてくれないの?
「寒いでしょ、はい。これ。」
 鞄から取り出してストロー差してくれた。
「ホットコーヒー牛乳だよ。」
 受け取って、ゴクンってすると、ちょっと冷め気味。
 ずっと我慢していくの。
 私はこーちゃんとナツが仲良くしていても嫉妬しないで笑っていなきゃいけないの。
 こーちゃんが近くにいないと、さみしいから。
 会えないのだけは、いやだから。
 私の恋って、このコーヒー牛乳なのかな。
 ちょっとさめてて、ふんわりあまくって、でもほんとはにがい、コーヒー牛乳。

 ==end==

Thank you for taking time to read this story!!
See you next time.