遺伝子治療
現在、最先端の医療は遺伝子が深く関わってきている。遺伝子とは、私たちを作っている情報がはいっているもので、これによって私たちがある病気になるかどうか、はげるかどうかなどなど様々なことがきまってしまうのです。ですから、これを操作すれば、今まで難病とされてきた病気もなおすことができるかもしれないというものです。ただ、これには、利点だけでなく欠点や問題もざまざまあるのです。それについて口頭発表したものです。
前述
今、人々は情報社会の中に生きています。人々のまわりには情報があふれています。TV、新聞などのマスメディア、友達との会話。そして、我々人間も、実は遺伝子という「情報」によって体が作られ、生命活動をしているのです。それにしても不思議なのは、これだけ様々な情報が飛び交っているにも関わらず、我々が、自分自身の情報についてほとんど知らないということです。その遺伝子という情報が今、だんだんに解釈されてきています。そして、遺伝子の解釈が進んでいくことによって、今まで治らないといわれていた難病、例えばエイズや癌などが、治り得るということが分かってきました。遺伝子治療は大変に役立ちますが、やはり問題点もあります。これから遺伝子治療について少しずつ述べて行こうと思います。
0〜遺伝子とは?〜
そもそも遺伝子とはなんなのでしょうか。すべての生物は、細胞と呼ばれる目に見えない小さな粒からできています。この細胞は、図のようになっています。細胞は、ちょうどビニール袋の中に水をいれたのと同じように、膜の中に水のようなものが入っています。その中に核が浮かんでいるのですが、この核の中にある染色体の中に遺伝子が入っています。この遺伝子は、細胞を作るためのタンパク質の設計図です。つまり生命の設計図とも言えるでしょう。細胞内ではこの遺伝子の情報に基づいて、アミノ酸といわれる物質が生成され、さらにアミノ酸がつながってたんぱく質などの物質が生成されます。また、ある条件が満たされると、紙をコピーするのと同じように、細胞は遺伝子の情報をコピーして分裂し増殖していきます。
1〜遺伝子治療って何?〜理論・方法etc.〜
ヒトには、約10万もの遺伝子があるといわれているので、言いかえると,ヒトには10万種の蛋白質があるということになります。その10万にも及ぶ遺伝子のセットを科学者はゲノムと呼んでいます。世界各国の科学者がこのヒトゲノムの解読を進めています。ヒトゲノムを解読することによって、その患者に見合った薬を作ったり、臓器を複製したりすることができると考えられています。遺伝子には、人の生存に不可欠な部分と、個人個人のオリジナルな部分とがあります。もし、生存に不可欠な部分に異常があれば、遺伝子や体の働きが損なわれて、その人は病気になるか死んでしまいます。このように、遺伝子に異常が見つかった場合、遺伝子治療が施されます。ただ、ここで一つ重要なことは、害を与えるのは、遺伝子ではなくて、異常な遺伝子によって作られたタンパク質であるということです。
遺伝子治療には、いくつかの方法があります。一つは、異常な遺伝子そのものを直接治療する方法です。これは、直接治療と言っても、人の手で異常な遺伝子を治療するのではなく、治療用遺伝子を働かせて治療するというものです。この治療用遺伝子を運ぶのに、ベクターと呼ばれる病原性をなくしたウィルスを使います。細胞がこのウィルスに感染することによって、治療用遺伝子が細胞内に送りこまれるのです。免疫不全症などの病気は、正常な遺伝子をこのベクターに運ばせて新たに加えることによって治療できます。この方法は、簡単で、一番早く実用化が進んでいますが、これはいくつかの条件がそろっていないとできません。ほかにも、遺伝子の働きを調べて、異常遺伝子を特定することでその働きを止めてしまうという方法があります。例えば、その異常遺伝子によるタンパク質の生成を防ぐ方法です。
遺伝子は本来2つの鎖がはしご状に結ばれて、一本のらせん状にねじれた構造になっています。これが、たんぱく質を作るときは、チャックをさげるようにして2本の鎖に別れます。相手を失ったこの鎖に、RNAと呼ばれるものが結合して、アミノ酸を作る設計図を読み出しすぐに分離します。このRNAが読み取った情報は、リボゾームとよばれるアミノ酸生成工場に伝達されます。この作業を転写と呼んでいます。つまり、異常な遺伝子の別れた鎖にRNAが結合してしまうと、そのまま情報が転写されて、異常なアミノ酸ができ、そのアミノ酸が集まって異常なたんぱく質ができてしまうことになります。この治療法は、人工的に作ったRNAを、この対を失った異常遺伝子と結合させることによって、異常な情報の転写を防ぎ、有毒なたんぱく質の生成を防ぐというものです。
なお、遺伝子の異常な部分を切り取ってしまうという方法もありますが、望みの場所だけ自在に切れるわけではないので、治療への応用はかなり困難です。
2〜遺伝子治療の例〜ニュートンの〜
3〜遺伝子治療の問題点〜
今のところ遺伝子治療のメリットを越えるような副作用はないと考えられていますが、わずかながら副作用が生じることがあります。例えば、ベクターがウィルスの病原性をふたたび表すことがあることです。
前述の通り、ベクターには病原性をなくしたウィルスを使用します。このウイルスから病原性を奪う際に、奪いのがした場合などに本来の病原性を持ったウィルスのままとなってしまいます。なので、病原性が弱い上に抗生物質(薬)の影響を受けやすいウイルスや、特に最近では人工のベクターが使われるようになってきています。
また、治療用遺伝子が目的以外の細胞に導入されてしまう場合があります。最悪の場合、細胞・器官が機能を失って癌化する可能性があります。しかし、これは可能性はあるものの実際起こるとは少ないと考えられています。それは、まず治療用遺伝子は正常な遺伝子であるためです。また、各細胞はそれぞれ必要なものだけを受け入れるので、治療用遺伝子を必要としない細胞では、治療用遺伝子は働きません。それに、治療用遺伝子を、ある抗生物質の影響を受けやすくしておいて、ベクターに入れ、問題が生じた時は、そのある抗生物質を使って治療用遺伝子を死滅させることもできます。
倫理的・社会的な問題もあります。遺伝子治療では生命の根幹を操作するため、今まで以上に難しい倫理的問題が生じます。例えば、「遺伝子は「生命の有り様」を決めている。遺伝子の操作は、「生命の有り様」を人間が変えることになるが、果たして許されるのか?」という問題があります。特に宗教的な観点からは、「神がお作りになった人間の神聖的領域を侵す」ということで、問題となっています。また、ヒトゲノムの解読競争にも問題があります。世界中でできるだけ早くヒトゲノムの解読をしようと競争が起こっています。というのも、遺伝子の情報があれば、その人にあった薬を作ることができるので、解読に成功した会社・企業・国は、特許を取り、多大な収入を得ることができるからです。しかし、そのような商売上の目的で遺伝子を利用するのは間違いではないでしょうか?解読された遺伝子の情報は、やはり人類で平等に分かち合い、利用していくべきではないでしょうか?
4〜遺伝子治療のこれから〜
遺伝子治療の研究はまだ始まったばかりで、今はまだ、先ほど述べたような問題を解決しきれていないので、これからそのような問題を少しずつ解決していかなければなりません。また、遺伝子治療という、まだあまり一般化されていない治療法を使うのは、やはり患者やその家族にとっても安心できません。しかし、家族に遺伝する病気があるかどうかを調べたり、本人の細胞を家族の細胞と比較し、異常な部分を特定したりする時にはやはり、患者の家族の協力が必要です。遺伝子治療が普及するためには、遺伝子治療が家族に受け入れられることが必要なのです。
遺伝子の異常は、誰でもいくつかは持っているといわれています。遺伝子の異常・疾患は特別なことではなく、遺伝子は両親から自然の摂理に従い受け継ぐものであって、自分では選びとることはできません。進化過程で起きている遺伝子の自然な組み替えの結果たまたま不都合が起きてしまったと考えることもできます。だから決して遺伝子治療を受ける患者やその家族を差別しないことが必要だと思います。
参考資料
