手法3 対比・帰納法
未知の知識を理解しようとするとき、それを既知の知識と比較・検討し(対比)、それを取り巻く共通の考え方を抽出する(帰納)方法。これにより、未知の知識と既知の知識が頭の中でつながり、人はそれを「理解した」と思うことができる。
たとえば内積を考えてみよう。なぜあのような演算を考えるのだろうか、と思った人は決して少なくないはずだ。
実数という概念は既知のものであるが、その実数がベクトルということがよく言われる。ならば実数の概念で内積に相当するものは何だろう?と考える。ところで、実数に対してはいわゆる「掛け算」が定義されている。その「掛け算」と「内積」を比較してみよう。
数直線上の点と原点を結ぶとき(ベクトルになる)、任意の二つのベクトルがなす角度は0°か180°のみだ(数直線の図をかいてみてほしい)。
つまり、内積の式:↑a・↑b=|↑a|*|↑b|cosαで、α=0°、もしくはα=180°に限られていることになる。
1)α=0°になるということは、
掛け合わせた数が互いに正もしくは負である、ということ。
内積の式で、cosα=1を代入すれば、
↑a・↑b=|↑a|*|↑b|
これは実数の演算では、プラス×プラス=プラス。マイナス×マイナス=プラスという既知の知識に符号する。
2)α=180°になるということは、
掛け合わせた数の一方が正で一方が負である、ということ。内積の式で、cosα=−1を代入して、
↑a・↑b=−|↑a|*|↑b|
これは実数の演算では、プラス×マイナス=マイナスという既知の知識に符号する。
このように内積を実数の掛け算と比較してみると、 ←対比
内積の概念は実数の掛け算の概念を包含していることが分かる。
そしてこれにより内積に対する概念はもちろん、
実数の掛け算に対する理解がより深くなる。 ←帰納