『魔人』作・武堆 仁

          
 今までのことは夢だったのだろうか?
 魔人は?
 願いは?

 私の名前は高浜菜穂。
 彼氏イナイ歴十六年の高校生。自分でも恋をしてみたいな、なんて思ってはいるのだが。私は何の取り柄のないし、みんなが振り向くほどの美人でもない。不器用でおっちょこちょいな自分がいやだ。
 でも、私だって、最近、気になる人ぐらいいるんだよ、同じクラスの徹君って言って、すっごくかっこ良い、そんな彼に愛されたのならどんなに幸せか…。
 けど到底、私なんかを愛することなんて………。
 そんなふうに思っていた私はとんでもないものを拾ってしまった。

 その日は、朝から雨で、そらはどんよりとして、室内はジメジメ。おまけに、帰ってきた英語のテストは破滅的な点数………。
 ほんと、さんざんな一日だ。
 放課後のひとけの消えた教室に一人。
 英語の反省ノートも書き終わったし、そろそろ、帰ろうかな?
 そう、思ったとき、ふと、どこからか何か聞こえる声。
「おっ、おーい、誰か助けてくれへんかぁ。」
 妙な関西弁(?)がどこからともなく聞こえてくるような気がした。
 気のせいかなぁ。とか、思いながらあたりを見回すが私以外に人の気配はなく、教室には誰もいない。
 やはり気のせいかなぁ。しかし、確かに、聞こえたような気がしたけれど………
 そう思いながら、耳を澄ますと…
「おーい、誰かおらへんのかぁ?」
 やはり、どこからか妙な関西弁が聞こえてくる。
 それは、どうやらゴミ箱の中から聞こえてくるようだった。
 まっまさか、関西人がゴミ箱に捨てられた???
 そう、思って(普通そうは思わないと思うけれど…)
ゴミ箱に駆け寄ると。
 そして、ゴミ箱を少し調べてみると中からカレー屋さんなどでおめにかかるルーを入れる容器が出てきた、ゴミを漁っている自分を誰かが見ていないかと周囲を見渡すが誰もいないことが確認できほっとする。
 放課後にゴミ箱を漁る女などと、噂されてはたまったもんじゃない。
 しかし、なぜ、こんなところにこんなものが?
 そして、次の瞬間!!!
 ドッカーン!!!
「………???」
 驚きのあまり声はでらず、頭の中をハテナマークがぐるぐる回る。
 今、私は自分に起きている現実を夢かと疑った。
 容器の中からはいかにも怪しいヘンテコナ人(?)が出てきた。
「よぉ、お前はんがわいを魔法のランプから出してくれたんやな。」
 こっこの人いったい誰?
「あなた誰?」
「なんでなぁん。
 あんた、わいがなにかとも知らずにたすけたんかぁ?」
別に助けたわけでもないのだけれど………
「いやー、わいはランプの魔人や。」
 ???
 ランプの魔人???
「昔話で聞いたことぐらいあるやろ」
 確かにカレーの容器ではなく、魔法のランプにも見えるが………なんとも安っぽい。
「最近は、ほんとにワイのことをみんな知らないで呼び出すネンナ」
「ほっ、本当に本物の魔人!!!」
 うーっむ、これはっびっくり。
「お決まりやけど、あんたの願い事を三つかなえてやりましょう、でんがな、それでは・3・2・1・Q。」
 私にもついにこんなとてつもない大チャンスがめっぐってきのね。
「私、徹君の『アイ』がほしいわ。」
 言ってしまった、自分が恥ずかしい。
「よし、その願い、ワイが実現しちゃりましょう。」
 そして魔人ほ付け加えた。
「やっぱり、多いほうが良いでっしゃろ?」
「多いほうが良いに決まってるじゃない。」
 次の瞬間、私の願いは意外な形でかなえられた。
 なんと目の前に現れたのは、二つの目。
 『E・Y・E』………アイ………。

 私は慌てて、魔人にコウギする。
「目の『アイ』なんかじゃなくて、私の言ってるのはハートなの、彼の心がほしいの!」
 私は、しまったと思った、しかしすでに遅い。
 そのときには予想通り魔人は彼の心臓を持ってきた。
「なんでなん。
 こんな無駄なことに願い事を二つも使うなんて変わったお人やなぁ。」
 なんかむかつくー。(どちゅ)
「あっそんなに怒らんでよー、最後のひとつはちゃんとまともな願いをかなえてあげるさかい。」
 まぁ、いいわ、もともと、私の願いはただひとつ〜
 徹君に愛されること!
「そう、そう、意地悪した、代わりにいいこと教えてあげようでんがな。
 耳寄りな情報でっせ。
 え、これを聞くと願い事のうちに入らんかって?
 そんな事ありまへーん、これはサービスですから。
 あのですねぇ、ここには、彼の目と心臓があります、彼を死なせなくなかったら最後の願いはこの二つを彼の体に戻すというのが良いのでは………
 すごい、いい情報聞いたでっしゃろ。」
 そんな…。
 そしたら、私の願いはどうなるの…
「しかたないわ、最後の願いは、………」



  ………そして………

 私は、保健室のベッドで目を覚ました。
 どうやら教室に倒れていたらしい。
 今までのことは夢だったのだろうか?
 魔人は?
 願いは?
 いったい、どうなったのだろう?

 結局私の日常に何ら変わりはなかった。
 次の日も、またその次の日も、いつもと変わらない日常。
 あの出来事は夢だったのかしら?
 でも、もしあれが夢じゃなくて本当におこっていて、魔人も実在していたら…
 もう一度だけ魔人にあって、今度こそ、願いをかなえてくれたらいいなと思う。