『天使』 作・武堆 仁


 そんなの、
 絶対にいやだぁーーー。
 神様の意地悪!!!


 俺は天使ミカエル。
 ほら、その証拠に頭の上には大きなわっか、背中にはまっ白な羽があるだろう!
 天界に住んでいて神様の仕事を手伝っているんだ。
 どんな仕事かって?
 うーん?
 まぁ、簡単には言えないけど、人間にはできないことをやってるんだよ。
 今日は神様に呼ばれているんだ………。


「神様、何か誤用でしょうか?」
 目の前にいる、威厳ある長ーい髭と見事に禿げ上がった頭がみょーにミスマッチなご老人がなんとなんと神様なのである。
「おー、ミカエルよ、よく参った。」
 うーん、実にえらそうだ。
「ミカエルよ、お前に、ちょっと頼みたいことがあるのじゃ、下界に行って、ある大切な物を探してきてほしいのじゃ………。」
「えー、なんで下界なんかに行かなきゃ行けないんですか?」
 そう、天使が下界に行く、それはどんな天使でも嫌がることなのだ。
 だって、下界の空気は悪いし、水はおいしくないし。
 なんてったって、あちこちで戦争なんかやってるからあぶなっくて仕方が無い。
 だからたいてい何か大きな失敗をした天使とかが一種の罰として下界に行くことになっているんだ。
「あー、神様、私が何かやりましたか?」
 神様は、満面の笑みを浮かべたまま何も言わない。
「あっ、きっと間違えて雪を降らしたことを怒っているのですか?
 それとも、下界の街中に誤って雷を落としたことなのですか?
 もしかして、雲の上で焼き芋して火事になりかけたこと………?」
 うーん、よく考えると、俺ってとんでもない失敗をやってるんだなぁ。
「いーや、ワシはそんなことでは怒っておらんよ。」
 神様は、満面の笑みを顔に浮かべながら答えた。
 しかし、その笑みの奥からは、どこと無く怒りの面影が見えてくる。
「それでは、神様の大切にしている、天界の杖を下界に落としたことですか?」
 その瞬間、神様の体から出される殺気。
「そんな、ことはどーでもいいんじゃよ。」
 口ではそう言ってはいるが顔は怒りで引きつっている。
「ただ、ワシなミカエル君、キミに下界へ行って、天界の杖を探してきてほしいんじゃよ。」
 あっ、やっぱり杖を下界に落としたことを怒っているんだ。
 でも、あんな古臭い杖の一本や二本ぐらいでどうして下界なんかにいかなくては………。
 俺が明らかに不満を顔に表すと神様は平然な顔でこう言い放った。
「ミカエルよ、そんなに下界行くのがいやか?」
 あたりまえじゃないか、だれが好き好んで下界なんかに行きたがると思っているんだ。
「そんなに、行きたくなにのか?
 それじゃあ仕方ないなぁ。
 下界に杖を探しに行くのは、他の天使に行ってもらうことにしよう。
 その代わりお前には天の川の土木工事に行ってもらうことになるがな。」
 ひ、ひどすぎるーーー。
 天の川の土木工事と言えば天使たちの噂では死ぬまで過酷な重労働を休むことなくさせられる地獄よりひどいと言われているところだ。
 そんなの、絶対にいやだぁーーー。
 神様の意地悪!!!
 天の川に行くぐらいなら下界の方がまだマシだ………。
「神様、どうか、天の川の土木工事だけはご勘弁を。
 ひっしにお願いした。
「それじゃあ、下界で杖を探してくれるのじゃな?」
 そう言った神様に俺はただ泣きながら首を縦に振るしかなかった。
 すると神様は次の瞬間満足そうに俺を下界に突き落とした。
 下界へと落ちていく中、もう、二度と天界には戻ってこれないと思った。
 本物杖は、焼き芋を作るときに使って燃やしてしまった………、それをごまかすために下界に良く似た偽物をわざと落としたのだから………。

 そして………

 地獄に亡命した俺は悪魔に再就職して働いているのだった。