『勇者』 作・武堆 仁
ぐわーーー。
どうしたらいいんだ!!!
俺は今、究極の選択を迫られていた。
俺はカオス!
伝説の魔王デーモンが復活し支配するこの世界(よくある話だと思う)で、ふとしたことから魔王を倒すことになって、いつの間にやら伝説の剣を手に入れて、人様からは伝説の勇者と言われるようになっていた。
しかーし!
勇者と言えどもやはり、人間。
決して不死身ではない、斬られれば痛いし赤い血だって流れる(人間だから当たり前)のだ。
それに、人間誰しも欲があって当たり前なのだ。
そう、所詮現実は。
『富と名声、金と権力!』。
ずばり、この四つであろう。
T
魔王を倒す旅に出ていったいどれくらいの月日がたったのだろうか?
今、思い返すとあっという間の出来事だった。
しっかりとした鎧を着込み、伝説の剣を装備し、数々の苦難を乗り越え、今、やっと魔王の本拠地、魔城へとたどり着いた。
ふー、これで、長かった旅も終わるんだなぁ。
そう思いながら、三階建ての魔城を見つめていた。
さて、この城をどうやって、攻略しようか?
正面から正々堂々乗り込むか?
いや、そんな事をしてもどうせ無駄死にであろう、どんな城でも正面にはたくさんの警備がしてあるはずだ。
やはり、ここはいつものように裏口から………
うん、裏口から討ち入りにはいって、寝込みを襲うことにしよう、相手は魔王なのだ、たとえ伝説の剣を持っているとはいっても、生身の人間が勝てるはずが無い。
少々卑怯かもしれないが、王様達には苦戦の末になんとか勝つことができました。
なぁんて、答えておけば問題無いわけだし………
U
そして、いつものように裏口から忍び込もうとしたときだった。
薄暗い中で、誰かとぶつかるのがわかった。
こっこれはまずい、見つかってしまったか?
そう思って、相手を見た瞬間、心臓が飛び出すかと思った。
俺のぶつかった相手は、なにを隠そう、この城の主、魔王その人だったのだった。
あー、こんなところで魔王にあってしまうなんて、俺はなんてついていないんだーーー。
「お前が勇者か?」
魔王はドスの聞いた声で俺に向かってしゃべってくる。
俺は勇者じゃない、って言っても信じてくれないだろうなぁ、魔城の近くをうろつく人間なんて勇者以外に考えられないし………
「そうだ」
もー、俺の馬鹿馬鹿、正直に言ったら殺されるじゃねぇかぁーーー。
「そうか、お前が勇者か………」
もー、絶対絶命だーーー。
だれか、助けてクレーーー。
大きな声じゃいえねぁけど俺ほんとはむちゃくちゃ弱いんだよーーー。
えっ、ならどうして勇者なんだって?
今まではいつも卑怯な手をつかって勝ってきたんだよ、よく言うじゃないか『勝てば官軍』。
しかし、この状況ではどうすることもできない。
はー、短い人生だった………
泣いて謝っても許してくれないだろーなぁ………
「見逃してくれーーー。」
と魔王。
何かへんだぞ、よく見るとこの魔王、背中に風呂敷なんか抱えて、まるで夜逃げでもするような格好をしているが???
「たのむ、見逃してくれ。」
と魔王。
うーん、よく見るとこの魔王、ひよわそうだなぁ。
もしかして、魔王って実は弱いのでは?
「くー、勇者に倒される前にずらかろーと思っていたのにーーー。」
と魔王。
やはり、この魔王、夜逃げの最中だったのか。
「こうなっては仕方が無い。
勇者よ、ワシと取引をしないか?」
おっ、これはどう言う意味だ?
「ワシと手を、組まんか?
そしたら、お前に世界の3分の2をやろう。」
なんと、世界の3分の2が俺のものに?
「本当だろうなぁ。」
ちょっとうたがう。
「もっ、もちろんだとも命あっての世界だからなぁ。」
V
ぐわーーー。
どうしたらいいんだ!!!
俺は今、究極の選択を迫られていた。
今、この場で、魔王を倒すのは簡単だろう。
しかし、ここで手を組めば世界の3分の2が俺のもの………
魔王を倒したら、王様に誉められて、お金持ちになれるし、もしかしたら将軍なんかにしてくれるかもしれない。
でも、魔王と手を組んだら世界はほぼ俺のものになる、しかし王様はキッと怒るだろーなぁ………
まてよ、よく考えると世界の3分の2を手に入れたら俺は王様より偉くなるんだぁ。
と、いうことは、魔王と手を組んだほうが得!
W
そして、勇者は、世界の3分の2を手に入れ幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし?