夏
夏が来ている。
二度と迎えられないと
分かっていた季節。
それでも
奇跡は起きた。
起こらないと
分かっていたはずの奇跡。
うれしかった。
そして、
温かかった・・・。
あの人と、
祐一さんと
迎えることが
出来たから・・・。
祐一「なぁ、栞。」
栞「なんですか、祐一さん。」
祐一「これから、隣町に行かないか?」
栞「どうしたんですか、突然。」
祐一「まあ、色々とな。」
栞「そうですか・・・。」
だから、
祐一さんは、
大切な人です。
意地悪で、
照れ屋で、
優しくて、
強い人。
祐一「栞、何してるんだ。乗り遅れるぞ。」
栞「は、はい。」
そして景色は流れていく。
時間が先に進むように。
季節が巡りまわるように。
祐一「大丈夫か?」
栞「大丈夫かって、こんな所を登るんですか?」
山を登る。
空に向かって
歩いていくかの様に。
一度は行きかけた、
あの遠い空の上。
栞「わぁ、すごいですね。」
祐一「だろ、ここの祭りはおすすめなんだ。」
栞「わなげ、やってもいいですか?」
祐一「出来るのか?」
栞「う〜、そんな事言う人嫌いです。」
祐一「あはは、悪い悪い。」
栞「笑わないで下さい。」
あの人が笑っている。
私も笑っている。
これが幸せ。
手に入れることの出来た幸せ。
栞「見返してあげますからね。」
祐一「楽しみにしてるぞ。」
栞「えぃ!」
祐一「おぉ〜。」
栞「・・・」
祐一「・・・すごいな。」
栞「そんな事言う人、嫌いですよ。」
祐一「だって、全部後ろに飛んでいくんだものな。」
いつかは終わりを
告げるかも知れない
この瞬間。
でも・・・。
栞「う〜。」
祐一「すねるなって。ほら、アイス買ってやるよ。」
栞「それなら今回だけは許してあげます。」
今を生きていく。
出来ることを、
今出来ることを、
私はするだけ。
祐一「どれにするんだ?」
栞「そうですね・・・、やっぱりバニラですね。」
祐一「栞はバニラ好きだな。」
栞「はい。」
私に出来ること。
それは、
祐一さんと、
おねえちゃんと、
楽しい時間を、
作っていく・・・。
祐一「焼きそば食べないか?」
栞「あ、いいですね。」
祐一「じゃ、買ってくるから、栞はここで待ってろ。」
栞「いやです。私も一緒に行きます。」
祐一「そうか、じゃ行こうか。」
栞「はい。」
もしかしたら、
祐一さんに出会えたのが
奇跡だったのかもしれません。
祐一「すいません、法術焼きそばふたつ。」
往人「おう。」
栞「楽しみですね。」
祐一「ところで、食べられるのか?」
栞「辛くなければ大丈夫です。」
往人「じゃ、甘口にしてやろうか?」
祐一「あるのか?」
往人「法術に不可能はない。」
観鈴「往人さんの法術は物を動かすだけなのにね。」
往人「こら、観鈴。営業妨害だ。」
観鈴「がお。」
往人「お仕置きだな。」
祐一「余計なことかも知れんが・・・」
往人「なんだ?」
栞「そば、焦げてますよ。」
観鈴「にはは。」
往人「くっ。」
楽しい笑い声が、
全てを物語っている。
この夏の出来事、
このお祭りの出来事を。
往人「お待ちどう。」
観鈴「これ、一緒に飲む?」
往人「それはやめとけ。」
観鈴「そうだね。」
祐一「行こうか、栞。」
栞「そうですね、どこで食べます?」
祐一「そうだな、あそこのベンチで食うか。」
栞「いいですね。」
楽しい時間を
暖かい場所を
明るい未来を・・・。
色々な世界を
与えてくれた人。
私に全てを
与えてくれた人。
祐一「なぁ栞。」
栞「なんですか、祐一さん。」
祐一「いつまでも、こうしていたいな。」
栞「祐一さん・・・。」
もう二度と、
味わえないものばかりだった。
祐一さんに出会うまでは。
だから、
いつまでも、
どこまでも、
祐一さんと共に、
歩いていけますように・・・。
END