それは原因であり結果である。
それは時として最大の強みであり、最大の弱みである。
それは脆弱で強固な殻の中身、
それは舞い散る桜のように、
生まれては消え、また生まれる。
四月三日
朝のいつもの通学路。
いつものように隣を自転車通学の奴らが横に並んで走っていく。
幸か不幸か、寂れたこの街には交通量があまりないから道路に横一列にならぼうが、
道路の真ん中で寝転がろうがたいした事ではない。
自転車通学者にとっては、だ。
歩いて学校に行ってる奴には危なくてしょうがない自転車通学者。
お互いが少しでも無理をすれば、すぐに喧嘩が起きる。
今のように…
「おめーらどこ見て歩いてんだ、あ?」
校則で一応禁止されているバイクに乗った奴が俺に因縁をつけてきた。
なんでも、俺の肩が後ろから走ってきた奴らにぶつかったらしい。
…俺悪いのか?これ。
「聞いてんのかよ!!」
リーダーっぽい奴が胸倉をつかんできた、脱色した髪から異臭を漂わせる。
耳にはピアス、首にネックレス。だらしなく着ている学生服。
典型的、古典的という言葉がしっかりあう奴等だと思った。
壁を背にした俺たちを取り囲むようにしている奴等をさらに離れて取り巻く生徒達。
関わろうとせずに遠巻きにみているだけ、それが命の瀬戸際の者であってもそうして るのだろう。
「…や、ごめ」
咲奈が学校に遅れてしまう、初めての授業なのに。
部活だか後輩をシメに来たのかはしらないが、こんな先輩達のせいで遅れる必要は無 い。
「……お兄ちゃん」
背中で咲奈の不安そうな声を受けながら、相手を見返す。
こんな状況になると思い出してしまう。
咲奈としりあう前の自分の事を。
「な、なんだよ…」
胸倉をつかむ奴が、怯えたように俺から手を離して後ずさりする。
「…や、まー、お互いに気をつけましょう」
ずいっと右手を出して、無理矢理相手と握手する。
「ほら、行くぞ。咲奈」
いまだにかたかた震えている周囲にいる生徒達の間を、咲奈の手をとって進む。
……嫌な朝だ。
「それじゃあ、いってきます」
少し前を歩いていた咲奈がくるっと振り返って笑う。
「おー、いってこい。必要だったら携帯に、な」
「うん!!」
校門で咲奈と別れる。
さっきの一件でだいぶ浮いてしまったが、仕方が無い。
ポケットに手を突っ込むと、くしゃっという音とともに手紙の存在を思い出した。
それは一昨日の朝刊の広告として挟まれていた新しく作られたテーマパークの招待券 をペアで五十組に当たるというもの。豪勢にアトラクションフリーパスも一緒らし い。
あたるとは思っちゃいないが、なんとなく、出してみることにしたのだ。
当たれば咲奈にあげて友達とでも使ってもらえば招待券も迷い無く昇天するだろう。
野郎が連れ立っていくようなところではないからだ。
首に下げていたイヤホンをつけて、ウォークマンのスイッチを入れる。
『…あの人 第二ボタンに誓った夢 君に…』
「魔法をかけて…」
小さく口ずさみながら学生のいなくなった通学路を1人歩く。
「…重ねて 明日会えれば言えるかな 二人の距離は変わるかな…」
今朝のあいつはなんだったんだよ、畜生。
へろへろしてるかと思えば…
「?お前なに震えてんだよ」
「震えてなんかいねえよ!!」
嘘だ、怖くて怖くて震えが止まらない。
あいつの目を覗き込んだ瞬間に無理やり流れ込んでくるような闇。
なにかとんでもないことを平然とやってのけてきたような奴の目だ。
なにかとんでもないことを…
震えはまだ止まりそうもなく、他のやつらは怪しいものを見るような目で俺を見る。
…俺にはそんなものを気にする余裕は無かったが…
どんぶりにご飯を多めによそってハンバーグと目玉焼き、レタスとプチトマトをのせ る。
一昨日の料理番組でみた大盛り料理の俺が食べたかったものを今日の昼ご飯にしてみ る。
火の通り具合を確認するためにハンバーグを切り刻んでしまったので、見てくれは悪 い。
「……やはりメイドさんが必要なのか…?」
ネコミミや実は戦闘用アンドロイド、目からビームなど妄想と紙一重(むしろ妄想だ ろう)の想像は尽きる事はなかった。そろそろ咲奈も帰ってくるだろう。たいした事 は無かったはずだ。
冷蔵庫から大根を、食器棚からおろしがねをもってきてさっきかけたDVDを見ながら すりおろす。
皮はある程度剥いてあったから感触が変わったら止めればいい。
画面では紫色の巨人と手が紙のような化け物が争っている。
なかなかスプラッタな光景だった。
続く
ちりばめたネタに気づいた人。
咲奈「ヲタクです」