Chapter1 白薔薇の騎士とArcRielのMachinaFrame
1
「どうだ・・・様子は?」
騎士風の鎧を纏った青髪の剣士が今しかた偵察より戻ってきた軽装の男に話し掛けた。
「絶望的だな・・・こりゃ。入り口周辺に4人ほど、この調子じゃ中に何人いるかわかりゃしねぇ、
おまけに非常口とかがないときた。」
軽装の男は何故か猫の屍骸でも踏みつけたような厭な顔をした。
「んじゃ・・・、いつものアレをやりましょうかね?」
青髪の剣士の傍らの木にもたれ掛かっていた金髪の女剣士は何故か嬉しそうな顔をして何事かを提案した。
「またそれかよシェリル・・・、何人いるか分からない敵を全部潰すってのか?」
青髪の剣士は面倒事に巻き込まれたような顔で金髪の女剣士・・・シェリルに訊き返す。
「何いってんのさアシュレイ?あそこを突破しない限り工場中枢部の魔導陣は破壊できないじゃん。
だから、全滅させんの、分かった?」
青髪の剣士、アシュレイは心底厭そうな顔をしながらも、しぶしぶ了承する以外他なかった。
それは軽装の男、リドルやさっきから魔導書を読みふけっているプラチナブロンドの魔導師、クラリスも例外ではなかった。
「ま・・・それにせっかく来たんだからちょっとぐらい闘わないと意味がないしね」
シェリルはそういうと、心底楽しそうに帝国軍需工場の正面入り口目指して歩き出した。
何故俺はこんな狂信的戦闘マニアと組んでいるのだろう・・・・?
アシュレイはふと思ったがその理由は彼の心理層の何処にも発掘できなかった。
というか、そんなことを考えただけ思考時間が無駄である。
2
「瞬雷刃ッ!!」
シェリルは雷属性下級魔術”サンダーヴォルト”を剣技”魔神剣”に宿し、前方の機械兵器に放った。
雷の衝撃を受けた機械兵器は後方へ吹き飛び、爆砕する。
リドルは高く飛び上がり、別の機械兵器に向け上空からダガーの一撃を浴びせる。
クラリスも、風属性下級魔法”エアリアルファング”を発動した。
風の牙は複数の機械兵器を巻き込み、その低位魔導金属ミスリル製の装甲を切り刻む。
そしてアシュレイは光属性下級魔法”ライトレイ”の光弾を当て、機械兵器が怯んだ隙に”魔神剣”を放ち、両断する。
そう、彼らは工場内部で、向かい来る敵を全て潰しているのだ。
入り口の兵士達は、クラリスが唱えた下級法術”コールゴート”で深い眠りについている。
シェリルは、「全員潰そう!」などとほざいていたが、アシュレイら3人によって、全力で阻止された。
それでも、工場への侵入を気づかれたため、セキュリティである機械兵器を片っ端から破壊しているのだ。
そして、破壊しながら基地の中枢部にある基地の動力源である魔導陣を目指している。
「誰だよっ!こんな面倒な作戦立案した戦闘偏執狂はっ!」
接近し、機銃を掃射しようとしていた機械兵器を両断し、アシュレイが叫んだ。
が、当の戦闘偏執狂・・・シェリルは別に気にしたそぶりも見せず、雷属性低位魔法を紡ぐ。
そして「細かいことは気にするんじゃないよ」と言わんばかりに”サンダーレイン”を9時の方向より向かってきた機械兵器へ放つ。
雷の奔流は機械兵器を蹂躙し、爆砕する。
「おい、あっちが中枢部らしいぞ、バカやってないでさっさと来い!」
シェリルとアシュレイは、リドルが叫んだ方向へ、過去形となった機械兵器を蹴り飛ばしながら走っていった。
3
「いよいよだね・・・。じゃあさっさと潰しておきますか。」
シェリルは魔導陣を前にし、それを破壊すべく魔法を紡ぎ、剣に宿そうとしたその時・・・、天井が崩壊した。
崩壊した天井の残骸を浴びながらその姿を見せたのは、8メートルはあろうかという機動兵器・・・MFだった。
MF(マキナ・フレーム)、それは古代の遺跡などから発掘される人型の機械兵器である。
それらは何時、作られたか分からない。
が、発掘されたそれらを解析し、現代のMFや、機械兵器などが作られている。
所謂、ロストテクノロジーというやつだ。
「こいつは・・・大天使<アークリエル>級じゃねぇか!やつら・・・もう実践配備してやがったのか!」
MFの肩に刻まれた型式番号−LE-0820-Lagel−を発見したリドルが叫ぶ。
「大天使級だかなんだか知らないけど・・・、邪魔するんなら消えてもらうよ!」
シェリルは先ほど魔法を宿した剣を構え、MF・・・”ラグエル”へ斬りかかっていった。
アシュレイも、剣を構え、”魔神剣”を放つ。
ラグエルは、それを向かい撃つベく機銃を掃射する。
それを見てクラリスは低位法術”ガードゲイン”をシェリルに向けて放つ。
魔力によるコーティングを皮製の鎧に施すことで、その強度を飛躍的に上昇させる。
ミスリル以上の高度を持った軽装鎧は、その銃弾をはじき返し、シェリルは雷を纏った剣で、”雷破斬”を繰り出す。
それを何とか左肩で受け止めたラグエルは、残った右肩に装備されていたレーザーブレイドでの刺突を放つ。
なんとかシェリルはかわしたが、レーザーの刃は頬をかすり、そこから鮮血が滴る。
一方、アシュレイは剣を投擲した。それはラグエルの装甲を貫通し、駆動系の部分まで到達した。
しかし、その程度ではラグエルの戦闘に何ら支障をきたさない、
が、クラリスが紡いでいた”サンダーヴォルト”が剣に向かって放たれる。
”サンダーヴォルト”は剣を伝い急激に成長し、ラグエルの内部機関を蹂躙。
そして、全身から白い煙を上げ、ラグエルの機能は完全に停止した。
「なにしてくれるんだい、せっかくあたしが潰そうとしたのにっ!」
頬から滴る鮮血をそのままに、シェリルが憤然と抗議する。
今にも手にした剣でアシュレイらを両断しそうだ。
「そうは言いますが・・・あのままだとシェリルさんが非常に危険だったので今のがベストな方法と思われます。
それに、敵増援もいつきてもおかしくなかったですし。」
クラリスがもっともらしい理由を述べる。これがアシュレイかリドルだったら、とっくの昔に斬られていただろう。
しぶしぶシェリルは剣を鞘に収めた。
と、その時工場内にけたたましい警報が発せられる。
「当工場ハ、機密保持ノタメ自爆シマス。3分以内に総員退去シテクダサイ。繰リ返シマス・・・」
「ちぃっ、やっぱコレがお約束かよ!兎に角、さっさと脱出するぞ!」
アシュレイは剣をラグエルから引き抜き、入り口へと走っていった。
リドル、クラリスもそれに続く。
シェリルは何故かつまらなさそうに入り口に向かって走り出す。
よほど、ラグエルをしとめ損ねたことが悔しかったのだろう。
4
出口に向け、走り出すシェリル達。
逃走の途中、死ぬなどという概念のない機械兵器たちが必死で足止めをしてくる。
アシュレイは、”サンダーレイン”を高速で紡ぎ、発動。
機械兵器たちを過去形にする。
途中何人かの不幸な帝国兵がシェリルの剣により2つに分裂させられ、壁に叩きつけられた。
工場自爆まであと30秒というところで何とか脱出を果たした。
それから30秒後、轟音が鳴り響き、工場の入り口から黒煙が吐き出される。
「やれやれ、なんとか脱出はできたな。・・・おいシェリル、いつまでスネてんだよ」
アシュレイは呆れながら、傍で虫に八つ当たりをしているシェリルに声をかける。
「・・・・次強そうなのが出たら絶対にあたしが倒すんだから・・・。」
シェリルはそういいながらも、心底残念そうな顔をしながら立ち上がると、剣を鞘に収めた。
「まぁ・・・それは次の仕事の時の楽しみとしておいて・・・だ。
そろそろ本部に戻って報告いれようぜ」
リドルはそう言うと、さっさと歩きはじめた。
彼らの所属する、白W・R・R<ヴァイス・ローゼン・リッター>の本部があるウィルタミアの街に向けて。