2001年5月14日 66号
私と山

N.A 先生 

 「あなたはどうして山に登るんですか?」という質問に、著名なアルピニストが「そこに山があるからだ。」と答えたという話は有名である。山の魅力は理屈で考えるものではないという意味なのか、とても一言では言い尽くせないという意味なのか、予期せぬ質問だったので答えに困ってしまって思わず出てしまった一言なのかはよく分からないが、私も同じ質問をされたら答えに窮してしまう。何が良くてかはよくは分からないが、その魅力に惹かれて細々と夏の山登りを続けている。その体験が私の身体に刻み込まれている。以下その体験の一部を話してみたいと思う。

 怖かったこと、それはカミナリ。北アルプス大天井岳から常念岳への縦走路で出会ったカミナリ。稲妻が横に走る。どこから来るのかも分からない。雷鳴もなく、電気火花の音を大きくしたような「パリパリ」という音が稲妻とともに走る。足がすくんで一歩も歩けなくなってしまっていた。福島県の会津朝日岳では、爆裂音とともにすぐ近くの唐松の大木にカミナリが落ちたのを見た。木が縦に裂けてしまっていた。

ただ私は本来晴男。30年間山登りをしてきて、雨に降られたのは数回のみ。天気が良ければ夏の山は最高。日差しは肌を刺すほど強いが、空気は涼しい。山登りは苦しく、その苦しさとの戦い出もあるが、どんなに疲れていてもその涼しい新鮮な空気が、再び歩く力を蘇らせてくれる。わき出ている清水もいい。山では水が一番の貴重品。苗場山の雷清水、磐梯朝日岳の金明水等々私の乾いた喉を潤してくれた清水は最高でした。雪渓の雪がカキ氷なることもある。味付けはポカリスエットの粉末だったりする。晴れた夜空もいい。透明な空気の中を星が降ってくる。平地ではどんなに天気が良くても見れない光景がそこにある。私にとってはダイヤの輝きよりもずっと素敵に思える。

 私の専門は植物の分類。山に登り始めたきっかけも、植物を調査するためだった。高山帯では夏のほんの短い期間だけ高山植物が咲き乱れる。お花畑の出現である。早お昼を済ませて、そこに寝ころべば、下界で小さな事にくよくよいじいじしている自分など何処かに行ってしまっている。

山の魅力はなどと考えてみることもあるが分からない。が、無意識のうちに自然のとてつもない偉大さ・パワーを感じさせてくれてそれとの一体感を感じることができることかななどとも思ったりしている。齢50を越えて、体力はだいぶ衰えてしまっているけれど、これからも自分の体力と相談しながら山登りを続けていきたいと思っている。

想いに任せて、筆を走らせてしまったが、この原稿が1年5組のクラス通信「さだきち」であることを急に思い出してしまった。全くふさわしくない文章と思いながらも、このへんで無責任にも筆を置きたい。


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