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修行シリーズ第2弾 私のフランス語 Y 先生
そのコンパートメントはちょうどすいていたので、ひとりで窓の外を眺めていると一人のおばあさんが乗ってきました。そのおばあさんは大きな荷物を持っていたので、自然にその荷物を網棚に上げるのを手伝ってあげました。そのとたんそのおばあさんからまったく予想だにしないフランス語が発せられたのです。「メルシー、ムッシュ」 私はその瞬間、どう言葉を返して良いかわからず、パニックに陥りました。というのも、もし英語で「サンキュー」と言われれば「ユーアーウエルカム」か「ノープロブレム」と返せば良いし、ドイツ語であれば、「ダンケシェン」と言われれば「ビタシェーン」と返せば良いと二週間の滞在で心得ていました。ところが、ヨーロッパは陸続きで、ライン川がドイツとフランスの国境だったんですね。それを越えればフランスに入るわけですから、いきなりフランス語でしゃべりかけられるのは自然なのです。私にとってこれは倶利伽羅峠の合戦で源義経が使った奇襲戦法「ひよどり越え」、第二次世界大戦で連合軍がナチスドイツに対して行った奇襲戦法「ノルマンディー上陸作戦」に匹敵するぐらいのパニックだったのです。
この雪辱を果たすべく、今度フランスに行って列車に乗ったときには、完璧におばあさんに対応できるように修行を積んで深呼吸してからコンパートメントに乗り込む覚悟です。 |