5月の津波

第1章   再会

俺の名は天川、天川ユウジ。
初めて高森ユイと出会ったのは、確か幼稚園のころ。
クラスが一緒で、家が近かった事から、かなり、仲がよかった。
親が言うには、幼稚園時代に、結婚と言う言葉まで出ていたらしい。
もちろん、俺は覚えていない。
幼稚園児がよくすることだと、俺は思う。
これも親から聞いた話だが、
幼稚園のくせに、いや幼稚園児だからこそかもしれないが、
キスまでしていたと言う。
このころは・・・。高森サンのこと好きだったかもしれない。
それも当然、覚えてはいない。
しかし小学校にあがる時別々の小学校になってしまった。
家は近いのだが、地域の境目がある所なのだ。
次第に高森サンへの感情はうすれていっていたのだろう、
俺の中での初恋の人は高森サンではない。
もっと別の女の子だった。
中学1年になった夏休み、
家の近くの公園で、友達とバスケをしていた時だった。
いきなり大声で、
「天川くーん!」
と、呼ばれた。
聞き覚えのある声、幼稚園時代、この公園でよく遊んだあの子の声、
そう高森サンだった。
いきなりの事でビックリしてしまい、シュートを決められてしまった。
この公園は結構大きい公園で。はしからはしへと声をかけるとき、
大声を出さなければならない。
「なにー?今ええとこやったのに?」
「なんや?つめたいな。別にー!なんもないよぉー。」
「なんやそれ。」
俺は唇をかみながら、さっきリングに入れられたボールを睨んだ。
もう一度顔を上げると、そこにはもう、高森サンの姿は無かった。
「ホントになんもないんやな・・・。」
少しがっかりして、ボールを持ち直した。
それからは不思議にシュートがうまく決まっていた。
家に帰ってから、もう一度高森サンの顔を思い出す。
「そう言えば・・・。あいつと喋ったん何年ぶりやろ?」
ひとりボソッと呟いてベッドに寝転ぶ。
「あいつ・・・、中学校一緒やっけ・・・?」
その後は覚えていないから、多分寝たんだろう。
次の日からは、そんな事は全く頭の中から消えていた。
中学2年になるまでは・・・。
中学2年になった時、クラス替えの表を見て驚いた。
名前がある、高森ユイの名前が。
しかも同じクラス・・・。
「へぇ中学校一緒やったんや・・・。知らなかったな。」
ぼそっと言ったすぐあとだった、
「久しぶりやな!ユウちゃん!」
これにはかなりビックリした。
幼稚園の時そのままの呼び方・・・、
振り返り見たらこっちを向いて微笑んでいる高森ユイの顔があった・・・。


続く・・・。

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