5月の津波

第5章  出発

明日から林間学校だ。
久しぶりに学校の行事。
しかも、よく言う「泊まり行事」である。
かなり、楽しみだ。
コウジも、かなりわめきに近い声で騒いでいる。
結局コウジもユイも同じ班になった。
この事もあってメチャクチャ楽しみだ。
準備をしている最中、ふと自分の携帯に目を落とす。
「携帯持っていこうかな・・・。」
結構迷う。みんなは持っていくのだろうか・・?
コウジにメールを送ってみる事にした。
『林間に携帯持ってく?』
少したってメールが返ってきた。
『持ってくつもりでおるよ。』
ほう・・・持ってくのか・・・。
そう言えば・・・。
『電波届くかな?』
大切な事を思い出した。
『あぁ・・・、そうか。』
たよりない返事が返ってきた。
ユイは?ユイは持っていくのかな?
『明日からの林間に携帯持ってく?』
早速メールで聞いてみる
『持ってくよ。』
『電波大丈夫かな?』
『先輩に聞いたら、ド○モは届くらしい。その他は無理やってさ。』
ほう、先輩に聞くという手があったか。
『そうかそうか。じゃあ俺の携帯もユイの携帯も大丈夫やな。』
『うん。持ってくやろ?』
『あぁ、持ってくよ。』
そうか・・・。ド○モしか無理か・・・。
じゃぁコウジは無理やな
『コウジ?先輩の話では携帯の電波、
ド○モしか無理やって。どうする?』
『へぇ。でも一応持って行く。』
『そうやな、先輩らが行ってから一年経ってるもんな。』
『そうそう、大丈夫やって!』
気楽だな、こいつ。まぁいいか、携帯は持ってくってことで。
(当然、随時マナーモード)
次の日、つまり林間学校当日。
この林間学校は2泊3日。
今日はハイキングで、宿泊施設に向かう。
基本的には班活動。
俺の班は前も言った通り、
俺と北川コウジ、高森ユイと
佐久間ヨシハル、通称クロと斉藤ヒカリの男子3人女子2人の班。
クロは2年から一緒になったやつで最近はよく喋るようになった。
かなり騒がしく、ハイテンションなやつ。
音楽は好きだけど、オンチ。
意味不明だが自分から「クロ」と名乗ってきた。
確か野球部だ。
斉藤さんは、去年一緒のクラスだったがあまり話した事はない。
結構おとなしめで、
ユイとは1年のとき同じクラスだったそうで仲はいいらしい。
俺はこれ以上の事は知らないが。
クロとは正反対に近い性格の子である、言う事だけいえる。
コウジとユイについては、一応説明しておこう。
北川コウジ、実は小学校からの友達。
1年の時もクラスは一緒だった。
部活はサッカー部。レギュラーで結構上手いらしい。
高森ユイ。俺とは幼稚園時代の友達で今の俺の彼女。
部活は俺と同じで入っていない。
本人が言うには、中学ではやりたいクラブがないらしい。
もっとも、俺は中学みたいな低レベルなところで
クラブ活動がしたくなかったからだ。
ちなみに俺たちが行っているこの森羅学園中等部には
それほど強いクラブはほとんどない。
強いといっても県内で数が少ないとか。
そんな理由で全国大会に行っているようなクラブがあるくらいだ。
しかし全国には全く通用していない・・・。
これでは全く面白くない。
話の内容が大幅に、ずれてしまった。
元の林間学校の話に戻そう。
まずは電車で名張方面へ向かう。
降りる駅は確か赤目口。そこからはバスで、
赤目四十八滝へのハイキングコースの入り口まで移動。
そこから曽爾林間公園までのハイキングとなる。
今から集合場所の駅近くの公園に向かう。
当然のごとく、横にはユイがいる。
「楽しみやな!」
ユイが笑みを浮かべながら言う。
「あぁ。楽しみや。」
俺もユイの楽しそうな顔を見て嬉しくなってきて言う。
「でも、一緒の班になってよかったね。」
「おう!それな、それ。」
そう。それが一番うれしい。
「夜さ、メール送ると思うで、携帯用意しといてな。」
「え?あぁ。携帯な。わかった。」
いきなりユイに言われてビックリした。
そんな雑談の中、集合場所についた。
もうほとんどの生徒がいて先生達も全員いるみたいだ。
コウジとクロが近づいてきて言った。
「おはよう。」
「おう、おはよう。」
普通の挨拶だ。
「今日はこの2人の邪魔しないようにしねぇとな、クロ!」
「そうだな、コウジ。」
皮肉たっぷりで言われた。
「あぁ、そうしてくれると嬉しいよ。なぁユイ?」
「うん、そうだね。ユウジ。」
皮肉たっぷりで返してやった。
コウジとクロは明らかに負けたような顔をしている。
「ヒカリサンは?」
もう一人の班員、斉藤ヒカリを探す。
「ヒカリは・・・。あっ、いたいた。ヒカリー!こっちこっち!」
ユイ見つけてヒカリサンをこっちに呼んだ。
「おはよう。」
ヒカリサンが近づいてきてユイの呼びかけに答える。
前も言った通り、俺はあまりヒカリサンの事を知らない。
この場はユイに任せるべきだな・・・・。
「じゃあユイ。俺向こうにいるから。また後で。」
「あ、うん。わかった。ヒカリ、おはよう。」
俺はここをユイに任せてコウジがいる方へと歩いていった。
「うん、おはよう。いいの?天川君。邪魔だったかな?」
「え?あぁいいのよ。どうもユウジったらヒカリのこと苦手みたいで。
まぁ、この林間学校、一緒の班だし。これから仲良くなってね。
そのことは一応ユウジにも言ってあるんだけど・・・。」
「そうなんだ・・・。」

「おう、コウジ、クロ。準備いいか?」
「お?いいのか?向こうは?」
コウジがユイとヒカリサンの方をアゴでしゃくる。
「あぁ。ヒカリサンがきてさ。どうも苦手なんだよ。」
「へぇ。そうか?俺はあの人、かわいいと思うで。」
コウジの意外なリアクション・・・。
もしかしてお前・・・・?

「もしかしてお前ヒカリサンのこと好きなんか?」
クロが俺の心を見透かしたように、コウジにたずねた。
「いやっ、べっ、別に、かわいいって言っただけで。
好きだとか嫌いだとかは、別問題だし・・。」
明らかに・・・・。
「明らかに動揺しとるな?」
クロ・・・お前は俺の心の中が見えるのか・・・・?
俺の言おうとしてる事を・・・・。
「集合!!」
先生の大きな声がした。
「おっ、もうそんな時間か!!」
コウジが逃げるように、集合場所へと走って行く。
「あっ、こら!逃げんのか!!」
クロが猛ダッシュでコウジを追いかける。
「ふう。まだ始まってもねぇのに・・・・。疲れる連中だな。」
それからなんだかんだで先生の説明があり出発の時。
「じゃぁ!しゅっぱーつ!!」
誰かが大声で叫んだ。
この大声からで長い3日間が始まろうとしていた・・・。


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