和也は口笛を吹いていた。
口笛など滅多に吹かないのだが、この日だけは違っていた。
和也は現在住んでいる東京の、ある食料品会社に勤めている。
和也は広報担当で、雑誌用の広告や街角に張るポスターなどを製作している。
それに毎日頭を悩まされる日々だ。
和也の考えるほとんどの案は没になり、ほかの社員の案が通ることが多い。
クビだけは避けているのだが、それも時間の問題かと和也は思っていた。
今日からゴールデンウィークの大連休が始まる。
今年は休日の繋がりがうまく、平日二日間も代休を申請していた。
計9日間も休みが取れることになったのだ。
うれしくてたまらなかった。
和也はこの機会に実家に帰ろうと思った。
和也の実家は静岡にある。
去年購入した愛車を走らせよう。
部屋の鍵を確認し、車に乗り込む。
まだ新車特有のあのにおいが残っていることに気づき、笑みがこぼれる。
お気に入りのMDを入れる。
和也の大好きな「瞳の住人」が流れ、また笑みを漏らす。
カーナビを起動させ、設定する。
アクセルを踏み込み、和也は実家へと出発した。
1時間ほど走ったあと、妙な異変に気づいた。
カーナビの画面が波打っていた。
接触が悪いのかと思った。
だが、異常に波打ち方が悪かった。
そしてついに“プチッ”という音と共に画面が黒くなってしまった。
車を止めようとした瞬間、何事も無かったようにきれいな画面が現れた。
ただ、さっきとマップが違っているような気がする。
そう思い、和也がアクセルに乗せている足を緩めたその瞬間だった。
ガクッとした感触があった後、目線の先には道路が無かった。
「うわぁぁぁ!!」
崖が目の前にまで迫ってきた。
感じたことの無い衝撃を食らう。
ガンガンと激しい音を立て、騒音の中で和也は気絶した。
もう助からないと和也は思った。
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