イシイは今日もゲーセンに行っていた。
ゲーセンはイシイの生息地といっても過言ではない。
イシイは「BeatMania」を好んでゲーセンに通っていた。
イシイはよく行くゲーセンで、神とまで言われるスーパープレイヤーであった。
当時、ゲーセンに突然現れたイシイはまさに変人だった。
ビーマニの機体に立つなり、そのとき誰もクリアしたことの無い曲を軽がるプレイし始めたのである。
常連は呆気にとられ、ただ呆然とイシイを見つめていた。
プレイが終了するなり、イシイは帰っていく。
毎日ワンゲームしかしないのがイシイの特徴だった。
誰ともしゃべらず、目をあわそうともしない。
ただ来るなり、まっすぐ機体に向かい、怒涛のような捌きを見せる。
そして何も無かったかのようにそそくさと帰っていく。
常連プレイヤーは神と呼ぶしかなかった。
自信を兼ね備えたプレイヤーが挑もうと、イシイには勝てなかった。
一回だけ、イシイはバトルプレイをしたことがある。
「バトルしようぜ」と話を持ちかけられたのだ。
イシイはいつものように無言で機体へ向かう。
相手もすぐさま向かい、バトルプレイを選択する。
結果はイシイの圧勝だった。
次から次へと最高難易度の曲を選択し、相手を蹴散らしていった。
相手は歯が立たず、泣き顔で帰っていった。
それほど、イシイは強かった。
そんなイシイは今日も、いつものゲーセンに向かった。
ゲーセンに行くなり、すぐさま機体に向かう。
神だ神だとあちこちから声がする。
そのときイシイの目に、頭を金髪に染めた2、3人のチンピラどもが目に留まった。
イシイは気に留めず、プレイし始めた。
チンピラどもは食い入るようにイシイのプレイを見ている。
ワンゲーム終了後、機体から離れようとするイシイにチンピラどもが立ちはだかった。
「おい、お前すごいな」
「俺らとやってみよで」
イシイはうなずく。
周りから「珍しいな」という声がする。
イシイは淡々とチンピラどもを蹴散らしていく。
「くそー」、「はぁ?」とかチンピラは言っている。
イシイはいつものように機体を離れる。
外に出たとき、空は黒かった。
「こんな時間か・・・」
帰り道、見覚えのあるチンピラが近づいてくる。
「おい、お前うまいな」
そういって、静かに近づいてくる。
いやな予感を感じたイシイは走り出す。
案の定、ヤツらは走ってくる。
不意に意識が遠くなる。
イシイは背中に違和感を感じる。
立ち止まって、背中を見ると、深々ときらきら輝くものが突き刺さっていた。
「おい、まずいだろ」とか「あぁ、お前やっちまったな」とか言う声が聞こえる。
イシイは何が起こったのかわからないが、とりあえず笑っておいた。
自分に出来ることといえば笑うことだろと言った感じで。
「おい、なにわらってんだ」見たいな事を呟きながらチンピラは手際よくイシイの財布を奪う。
「にげるぞ」という言葉を残し、チンピラは闇の街に消えて行った。
イシイは道端に綺麗に倒れこむ。
もう目を開けることは無いと思った瞬間、馬鹿笑いをし始める。
その笑いも徐々にに引き、イシイは死んだ。
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