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| ゴジラ〜恐怖を統べる者〜 |
| 作:ぎどらまん |
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第二章 島津義雄は、成田にある特殊戦略自衛隊本部基地でメーサー戦車部隊の演習指揮を行っていた。 1984年、三原山に消えたゴジラは、1986年の火口調査によって生存が明らかになった。 全世界はその事実に驚愕した。 最も驚いた国が日本であったのは明白なことであろう。 日本政府はゴジラの通常兵器による討伐を断念、いずれ訪れるであろう三原山からの復活に備え、世界技術の粋を結集しこの「特殊戦略自衛隊」を設置したのである。 主力は92式メーサー戦車。 所属人員は3000人でほとんどが特殊戦闘車両のパイロットであった。 「よし、今日の演習日程はこれにて終了。各自、休んでいいぞ。」 島津の指示で、この日の演習は終わった。 20年前は一兵卒であった彼も、今では特殊戦略自衛隊第1特殊車両連隊司令官を務めている。 「隊長、昨日の話聞きました?」 そう言って島津に近づいてきたのは、副官の大野康隆である。 「ああ、イスラム原理主義者の話か。」 2004年6月29日。 警視庁は緊急記者会見において、 世界規模の指名手配を受けているイスラム原理主義過激派、ウサイ=アッラシードと、その弟スラムが日本国内に潜伏中である可能性があるということを発表したのだ。 「飛行場での職員の目撃証言から明らかになったそうだな。だが、何故わざわざ日本に...」 「前の潜伏先のアメリカの方が遥かに逃げ場は多いはずですよね」 「研究所の件と関係があるんじゃないの?」 そう言って大野と同じく副官の、吉田美穂が割り込んできた。 「研究所?」 大野がきょとんとした顔で吉田を見る。 「ほら、この前あったじゃない。 カリフォルニアのある研究所がテロで爆破されて、研究員が全員死亡したって話。噂によるとその研究所、得体の知れない生き物を作ってたらしいわよ。」 「なるほど。その生き物を作らせてたのがウサイとスラムで、口止めのために研究所を爆破した...」 「考えられなくもないでしょ?」 「生物兵器...か。人間は、まだゴジラのことで懲りてないらしいな。」 「え...でもゴジラは人間が意図的に作り出したわけじゃ...」 島津の呟きに、吉田が反応した。 「奴が生まれた原因は、水爆実験による突然変異とする説が一番有力だ。 もしそれが本当だとしたら、意図的ではないにしろ、ゴジラは人類の産物ということになる。 人類は自分達が生み出したものに散々な目に合わされているかもしれないというのに...生物兵器という、似たような過ちを...」 島津の言葉に、大野と吉田は何の返事もできなかった。 島津がこの特殊戦略自衛隊に自ら志願して入ったこと、そして彼の恋人が20年前に死んでいることからも、島津が特殊戦略自衛隊に入った目的は、彼自身が語らずとも誰でもわかっていることであった。 ―仇討ちただひとつである。 島津の暗い顔とは裏腹に、梅雨時のはずの関東は、珍しく青空であった。 東京渋谷区郊外、とあるアパート。 「戻ったぞ」 そう言いながら、ウサイはカムフラージュ用に被っていた鬘を取った。 「どうだった?」 弟のスラムが奥から出てくる。 「ああ、どうやら日本警察も、こんな郊外にはまだ手を出しちゃいないようだ。」 「さすがはレドリシアさんが準備しただけあるな」 「確かに」 「呼んだかね?」 予想外の声に、ウサイとスラムが同時に振り向いた。 奥の和室の真ん中にレドリシアが立っている。 「レ...レドリシアさん!?」 「いつの間に?」 「ククク...私は君達の意思通りに出てこなくてはならんのかね?」 「いえ...まさかそんなことは...」 「しかしレドリシアさん、何故貴方はそんなにも我々のために動いてくださるのですか?我ら兄弟がアメリカに入国した時からずっと...」 ウサイの言葉を、レドリシアは途中で遮った。 「それは、諸君らの『ジハード(聖戦)』とやらに関心があるからだよ。私はアメリカという国が嫌いでね」 「はあ...では、何故日本にきたのですか?」 「うむ。潜伏先としては、諸君はアメリカよりも日本が良かっただろう。 だが、私にはまずくてね...それでここまで来させて頂いた。そのために諸君の逃げ場がなくなり、日本にこなければならなくなったことはお詫びする。」 「アメリカで何かあったのですか?」 「前に、研究所の爆発事件があったろう?」 「はあ・・・」 「あれは、私が起こしたのだよ」 「え!?それはまたなんで!?」 「それに答えるわけには行かない。...あえて言うならば...神の御意志の為だ」 「神の...意志?」 「君達が戦う理由も其処にあるだろう?日本で一旗挙げてみるのも、いいかもしれないぞ?」 レドリシアの言葉に、二人はうなだれて少し考えた。 そして、再び顔を上げたとき、レドリシアの姿はもうなかった。 「あれ?」 「おかしな人だ...」 二人が首をかしげたのは言うまでもないだろう。 「なんにせよ、あの方が言われたことは嘘ではない。アラーの為、イスラムの為、資本主義のもう一つの巨魁.日本に一泡吹かせてやろうではないか!」 「でも、どうやって?」 「うーむ...」 スラムに聞かれ、ウサイは頭を抱えた。 が、先ほどから無視しつづけていたテレビ画面に一瞬釘付けとなり、これだ!と叫んだ。 スラムが慌てて顔を画面に向ける。其処には、出現後20周年と銘打たれた、ゴジラ特集が映し出されていた... 二人のいるアパートの隣の廃ビルの屋上に、レドリシアはいた。 「フフフ...人形達よ、どうやら我が意思通りに動いてくれているようだな...」 レドリシアはにやりと笑ってそう呟くと、しろのコートを翻して去っていった。 空は、何も知らないかのような鮮やかさで、青く輝いていた... |
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