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ゴジラ〜恐怖を統べる者〜
作:ぎどらまん

第四章

7月1日。深夜3時。
厚木在日米軍基地。
「ここです」
そういって、米軍士官はロベルトを部屋に入れた。
中には、逆さ手に縛られた男が横たわっている。
「貴様か。テロリストどもに爆弾を渡した裏切り者は。」
ロベルトはそういって、男の襟首をねじ上げた。
「裏切り?違うな。俺はアラーのため、最善を尽くしたまでだ。
貴様らこそ、アラーに対する裏切り甚だしいではないか。」
「なに?貴様・・・スパイか!」
「そんな馬鹿な。軍にはいるためには、幾重もの身元調査が行われているはず・・・」
「そんなもの、いくらかの金と、嘘をつく脳みそがあれば、いくらでも切り抜けられるさ」
男は、嘲笑を浮かべながら、いった。
「ちっ、こんなやつにはかまっておれん。いくぞ!」
ロベルトはそういって、足早に基地を発った。

早朝6時、大島・三原山

ウサイとスラムが、足早に山を下りてきた。
「やったな、兄貴」
そういってスラムは兄の方を見た。
「ああ、資本主義者もこれで大きな痛手を被るであろう。ざまあみろ、だ!」
そういってウサイは笑った。スラムもそれに続く。
が、その場で一番笑いたかったのは、だれあろう、
密かに彼らのことを見ているレドリシアに他ならないことに、気づくものはいなかった。

時はさかのぼり、早朝4時。特殊戦略自衛隊本部基地

「出撃命令ですか?」
島津は、特殊戦略自衛隊幕僚長・北条公康の言葉を聞き返していた。
「そう・・・場所は・・・大島だ。」
北条が深刻そうな顔で答える。
「と・・・すると。ゴジラが?」
「或いは、復活するやもしれん」
「と、いうと?」
「テロリストが潜伏中であることは知っているな?」
「ウサイ・スラム兄弟のことですか?」
「そうだ。彼らが米軍スパイから大量のダイナマイトを手に入れ、大島へ向かったという情報が入った。」
「彼らが、ゴジラ復活をもくろんでいると?」
「イスラム原理主義過激派の間では、ゴジラは資本主義を倒そうとするアラーの使者であるという見方をするものもいるらしい。
それに触発されたのかもしれん。」
「ゴジラが神の使者・・・考えられない。」
「どちらかというと、地獄よりの使者だな。」
「なんとしても止めなくては」
「だから呼んだのだ。内閣もすでに承諾済みだ。すぐに軍備を整え、出撃せよ!」
「了解!」

大島の海岸付近の洞窟に、ウサイとスラムはいた。
ダイナマイト爆発の際起こる噴火に、自分たちが巻き込まれないようにするためである。
「いくぞ、兄貴。」
スラムが、起爆スイッチに手をかけた。
ウサイも緊張してそれを見守る。
と、その緊張を、一発の銃声が破った。
「ぐわああああああああああああ!!!」
スラムは痛みのあまり、起爆スイッチを落とした。
親指が血しぶきとともに、地面に転がる。
スイッチを素早く取り上げ、ロベルトは二人のテロリストをにらみつけた。
彼の背後には何人ものCIA、及び警視庁機動隊員が控えている。
「そこまでだな。ウサイ、スラム。」
「な・・・CIA。ここまで追ってくるとは!」
いうが早いか二人は近くにあった拳銃を手に取った。
が、多勢に無勢である。
「撃て!」
というロベルトの指示と同時に多数の銃声が洞窟を支配し、血だらけとなったテロリストの死体がむなしく地面に転がった。
「ふぅ、これで一安心・・・だな」
ロベルトはいいながら死体の片づけを命じ、
起爆スイッチを部下に渡そうとした。そのときである。なんとスイッチが、宙に浮いたのだ。
「な・・・お、追え!」
ロベルトは驚きながらも、飛んでいくスイッチの追撃を命じた。
皆が一斉に走り出す。が、スイッチはすぐにとまった。
そして、不思議なことにこれまた宙に浮いている男の手中となったのである。
「な・・・レ・・・レドリシア!」
宙に浮いている人物は、白いコ−トに身を包んだレドリシアであった。
「一安心?・・・ふん、貴様ら愚物どもに、安息の時などもうない。あるのは果てしない絶望と、そして、大いなる浄化だけだよ。」
「なにをほざくか!やはり黒幕は貴様だったんだな。スイッチを大人しく渡せ!さもなくば・・・」
ロベルトの言葉とともに、CIAと機動隊員の銃口が、宙に浮かぶレドリシアへと向けられる。
「さもなくば、撃つ、か。野蛮な。もう遅いのだよ。
神が回し始めた歯車は、このスイッチが押されると同時に今までになかったような早さで回り出し、そして、「無」という名の浄化を与える。」
レドリシアは左の手のひらをロベルト達に向けた。
するとどうだろう、彼らが持っていた銃がすり抜けるようにしてその手を離れ、宙に浮き、持ち主へと銃口を向けたのだ。
「な、何をするつもりだ!?」
ロベルトが声を裏返して叫ぶ。
が、レドリシアはそんな声を聞こうともしない。
「そして君たちは、神が与える「浄化」の光栄ある生け贄となる。」
黒鉄色に輝く銃達の引き金が動いた。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ロベルトの断末魔の叫びであった。
そして銃声と同時に、レドリシアは手中のスイッチをゆっくりと押した。
三原山が火を噴き、惨劇が始まる瞬間であった。
 


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