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ゴジラ〜恐怖を統べる者〜
作:ぎどらまん

第七章

「レドリシア?」
北条は,島津の口から出た人名を繰り返した。
心当たりがあるように顎を摩る。
ここは特殊戦略自衛隊幕僚長室。
幕僚長.北条に,島津が戦闘結果を報告しているところであった。
「ご存知...なのですか?」
「うむ。今朝,首相官邸から話があってな。
何でも,ウサイとスラムをアメリカでかくまっていた男らしい。」
「ほー」
「そして,これはCIAからの直の情報らしいのだが...
どうやら,数日前の謎の研究所爆発事件も,このレドリシアが起こしたものらしい」
「えっ」
予想外のことに,さすがの島津の驚いた。
国のお抱え研究所の爆破を,たった一人でこなすとは...
空中に浮いていたり様々な特殊能力を使ったりというところからみても,とても人間とは思えない。
「レドリシアとは...何者なのでしょうか?人間とは,とても思えない...」
「確かにそうだ。だが,レドリシアの正体を考えているほど,ひまはない。」
「ゴジラ...ですね」
「それもだが,もうひとつ問題がある。レドリシアが研究所を爆破したときに,持ち去ったといわれているものだ。」
「そんなものが?」
「パンドラというものでな...」
「パンドラ...箱...ですか?」
「いや,球状の物体らしい」
北条がそういったとき,島津の頭にレドリシアの手に握られていた赤黒い球体がはっきりと浮かんだ。
「あれか...!」
「知っているのか?」
「いえ,レドリシアが持っているのを見かけただけですが...それが何か?」
「信じられないかもしれないが...あれは,生物兵器なんだよ。」
「バイオハザード(細菌兵器)か何かですか」
北条がゆっくりと首を振る。
「違う。あの球体の中には,アメーバ状の人工生命体が入っていてな。
そのアメーバは球体から出たら,即,周りの生物にとりつき,吸収し,その細胞組織を巨大化.兵器化させ,数時間で怪獣化させてしまう代物らしい。」
「そんなものが...作れるので?」
「今の人類が持つ技術じゃまず無理だ。」
北条が断言するように言う。
「では、なぜその研究所は作りえたのです?」
「爆発後の研究所のパソコンのデータを調べて解ったらしいんだが...
どうやら,研究所は20年以上前からレドリシアらしき人間と面識があったようでな。
ある日突然れドリシアが『パンドラ』のデータを持ってきて,
自分はこんなものを作る設備を持ち合わせていないから,代わりに作ってくれと...依頼したようだ。」
「研究所も良く引き受けましたね」
「『これ』だよ」
そういって,北条は左手の親指と人差し指で円を作った。
「金...ですか。」
「相当な額だったようだな。」
「どこから仕入れたものなのか...つくづく解らない男ですな...レドリシアは」
「確かに。でもまあ,今,諜報部が行方を追っている。そのうち捕まるだろ」
そういって北条が時計を見た。
7月2日の午前8時12分をさしている。
「そろそろ会議の時間だな。...次こそ,ゴジラを倒さねばならん。」
「ええ,...幕僚長。わが体の分担は,いったいどこなので?」
「...それは...会議中に発表する。」
そういう北条の顔は,少し曇っていた。

8時30分。会議室。
特戦自の主な部隊長が集まってきていた。
もちろん島津もその中にいる。
「えー、海自の情報によると,ゴジラは現在,東京湾南方をゆっくりと北上中ということだ。
前回の戦いから統合幕僚部は陸海空の自衛隊,およびわれら特殊戦略自衛隊の共同作戦をもってゴジラ殲滅を図ろうという計画を立てた。」
そういって北条は作戦の要綱を開くことを促した。
皆それに従う。
「まず,海上航空両自衛隊が東京湾近辺で攻撃を行う。
そして,ゴジラが港から上陸しようとしてきたところを,今度は陸上自衛隊が攻撃を加える。このとき使用するのは麻酔弾だ。
これでゴジラの動きを鈍らせ,最後にわれわれがメーサー攻撃を加え,ゴジラを殲滅する。」
そういって北条が言葉を切った。
皆が作戦に納得した様子を見て取ると,言葉をつなぐ。
「作戦の分担だが,ほとんどすべての兵力をこれに動員する。
だが,予備の基地待機部隊も準備せねばならん。
その任務は...島津と,麻生の部隊に任ずる。」
島津は,頭上に大石が落ちてきたような衝撃を覚えた。
島津率いる第一特殊戦闘車両連隊は、特戦自の中でも選び抜かれた優秀な隊員を集めた部隊である。その部隊を待機に回すとは。
しかし,冷静に考えてみればそれの納得できないでもない。
何せ,島津の部隊は,前回の戦いで,その車両のほとんどを失っている上に,死者も出ている。
島津もそれがわからないでもなかったが,しかし納得できなかった。
ゴジラを倒す,という20年来の目標が,今目の前にあるというのに,まさかそれを指をくわえて見ているだけしかできないとは。
「質問はないようだな。では,解散。」
他の部隊長たちは呆然とする島津を皆気まずそうに見ながら、己の任務の準備のために去っていった。


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