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ゴジラ〜恐怖を統べる者〜
作:ぎどらまん

第十章

2004年7月2日午後1時3分。横浜市ランドマークタワー

「横浜港前線指揮所より入電、『おだわら』が帰還しました。」
「肉眼でも確認可能です。」
ランドマークタワーの戦闘指揮所にはすでに海上自衛隊の敗報が伝わっていた。
せめて『おだわら』だけが助かったことに全員が安堵のため息を漏らす。

陸上自衛隊指揮官皆川もその一人であった。
しかし彼は指揮官である。安心してばかりはいられない。
「で、ゴジラはどうしたのだ?」
努めて冷静に尋ねた。
「それが...途中までは『おだわら』を追っていたそうなのですが、いきなり行方をくらましたそうで...空自が現在探索中だそうで」
「ふむ...しばらくは休戦...かな」

一時間後。『おだわら』艦橋
このとき、横浜に展開している自衛隊の中で最も安心していたのはこの『おだわら』の乗組員たちであったのは言うまでもないだろう。
そして、それが気休めでしかないということも...
「艦長!巨大な物体が浮上してきます!!」
「何!どこからだ!?」
「...真下です!!おそらくは、ゴ…」

横浜港

港には帰還した『おだわら』が停泊しているほか、九〇式戦車20台を主力とする『第1新装甲連隊』を中心に、
両翼には八十九式装甲戦闘車を含む『第1新普通科連隊』、後方には特戦自の九十式メーサー戦車6台が展開していた。
陣中央の九十式戦車は、前から5両.5両.10両の3列横隊編成である。
最前列中央の戦車に乗り込む小林昭典三等陸曹は、キャノピーから顔を出し、海を眺めていた。
停泊している『おだわら』に目を向けた後、また海面に視線を戻す。
「本当に来るんですかねー、ゴジラは?」
小林は下にいる高橋俊哉二等陸曹に声をかけた。
「どういう意味だ?」
高橋が反問する。
「いや、だってさっきから、この港平和そのものじゃないですか。ひょっとして、『おだわら』なんか諦めて、海に帰ったんじゃないのかなと」
「うーむ、まあ、確かに、こうも来なかったらな…」
と、そのとき、高橋の後ろから、滝のような音が聞こえた。
「なんだ?」
高橋が振り返る。そして仰天した。
なんと海面が盛り上がっているではないか、しかもその隆起した水面は『おだわら』を持ち上げてしまっているのだ。
「な…なんてこった。」
高橋が呆然とその光景を眺めているうちに、『おだわら』はバランスを崩し、展開している部隊に向かって横倒しに倒れてきた。
あまりの光景に高橋は声も出ない。
彼の視線は『おだわら』の巨大に覆われ、やがて真っ暗になった。

ランドマークタワーの司令部に、空でも落ちてきたような大きな音が聞こえてきたのは、
彼らが空自の索敵でもゴジラを発見できなかったという報告を聞いていたときだった。
「何事だ!」
皆川が叫び、皆が窓越しに外を見る。
誰からともなく、戦慄の声があがった。
港に、『おだわら』が横倒しになっていた。
船体は装甲連隊の前列と中列を押し潰し、見るも無残な姿となっている。
そして、先程まで『おだわら』が浮かんでいた場所には、黒く禍禍しい、巨体の姿があった。
「おのれ、ゴジラめ…被害を報告しろ!」
皆川が叫ぶ。
「装甲連隊、兵力75パーセント減!」
「野々村前線指揮官より連絡!『兵、士気甚ダ下降ス。撤退ノ許可ヲ請ウ』とのことです。」
「ヌウ…」
皆川が唇を噛む。
まだ一戦もしていないのに、撤退とは許されることではない。
が、彼の視界には、目の前の巨大な敵に恐れ戦き、逃げていく兵の姿がすでに入っていた。
「統合幕僚本部に連絡しろ。撤退する…とな。」
皆川はそういうと、すぐに指揮所の片づけを命じた。

「何ということだ…」
統合幕僚本部では、そう言って細川が頭を抱えていた。
予想外の事態である。
海自はおろか、陸自も撤退してしまうとは。
しかも、その間にゴジラに対するダメージは一切与えられていないのだ。
50年前よりも圧倒的に高い兵力、そして火力。それにおごりたかぶり過ぎていた自分に、今はじめて気づいた。
細川のそんな状況に、陸海空の幕僚たちは皆呑まれてしまっていたが、一人だけ冷静にものを見ている人物がいた。
特戦自幕僚長、北条である。
「統合幕僚長、もはや『あれ』を使うしかありますまい。」
乱心気味の細川に、北条は冷然と話し掛ける。
「しかし…あれは」
「もはや、そのようなことを言っているときですか?
あれだけの大敗です。スーパーXでも時間稼ぎにしかなりますまい。我々はこの戦いに決して負けてはならないということは、良くご存知のはずです!」
北条の剣幕に、上官たる細川は完全に萎れてしまっていた。
「…解った。その件に関しては、一任する。」
「有難うございます。」
北条は一礼すると、急いで部屋を出て行った。
事は急を要する。

北条は賭けていた。『あの男』の復讐心に…


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