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ゴジラ〜恐怖を統べる者〜
作:ぎどらまん

第十一章

「実力が違いすぎる...」

権藤啓一三等戦佐は,目の前の光景にただただ唖然とするばかりであった。
横浜の市街地は,港より侵入してきたゴジラによって火の海と化している。
ここは横浜の中でも有数の大きさを誇る十字路、先程までは特戦自の主力部隊が集結していた。
すなわち92式メーサー戦車12両,支援型レーザー自走砲5両,そしてスーパーXである。

今より少し前の午後1時30分,特戦自はスーパーXに乗る権藤の指揮の元ゴジラをこの十字路に包囲することに成功していた。
が,一斉攻撃をしようとした瞬間に,逆にゴジラの熱線を受けてしまったのだ。
ゴジラを囲っていた陸上部隊は熱線にさらされ,あるいは崩壊する建物の下敷きとなり,あるいは尾の一閃を受けて壊滅していた。
十字路に展開していた重厚たる群れは,今や阿鼻叫喚と死臭を漂わせるのみとなっている。

「グルルル....」

ゴジラが唸りながら空を見上げた。視線がスーパーXへと向けられる。
目が合った権藤は,恐怖のあまり失神しそうである。顔は青ざめ,今にも叫びだしそうだ。
ゴジラがゆっくりと口を開けた。裂けた口の中に青白い光が灯る。
それを見た権藤は,少し冷静さを取り戻した。
「今だ,カドミウム弾,スタンバイ!!」
スーパーXの背部からミサイルランチャーが姿をあらわす。
20年前と同様に口の中にカドミウムを打ち込む腹積もりなのだ。
「照準完了!」
権藤の副官を務めている隊員が隣に座る権藤に報告した。
同時に浮遊していたスーパーXの動きが固定される。
そのとき,ゴジラが突如として動いた。
発光していた口を閉じると,とまっているスーパーXに向けその強靭な尾の一撃を食らわせたのだ。
鈍い音がして,スーパーXの左側面の装甲が破れ、中から炎が飛び出す。
「しまった!罠か!!」
権藤はかろうじてそれに気づくことができたが,脱出までは許されなかった。
スーパーXは瞬時に炎にくるまれ,隣の高層ビルに激突する。
そしてビルごと地面へ倒れこみ,ほどなくして大地を包む炎と同化してしまった。
「グゥガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンン!!!」
ゴジラの叫びが,紅蓮に輝く横浜の町に木霊していく。


島津は基地食堂の座席に座り,モニターをじっと睨んでいた。
横浜を蹂躙するゴジラが映されている。
島津は眉間に皺を寄せ,目を逸らそうとしない。
「怒ってるな,隊長。」
少し離れた席に座ってる大野は隣に座っている吉田に話し掛けた。
吉田は大きく真っ黒な瞳を大野の方に向ける。
「そりゃ,あんなに不甲斐ない戦いしてたんじゃな。」と大野は続けた。
「それだけかしら...」
吉田はそうつぶやき,細い目を更に細めてモニターを見る島津を見た。
「え?」
「一番不甲斐ないと思っているのは,自分のことじゃないかしら。目の前で仲間がどんどん死んでいくのに,何もすることができない。」
「言われてみれば,確かに...」
「本当に,何もできないのかしら...」
吉田はそう言って整った唇を噛んだ。
「何もできないことはないぞ。」
後ろから声がして,二人は慌てて振り返った。
「北条参謀長!」
二人の声を聞き,島津も北条の方を見る。
「島津,見てのとおりだ。今,我々は敗北の危機に瀕している。しかし,まだこれからだ。」
「...どういう意味ですか?」
大野が,きょとんとして聞く。しかし,島津は何か解ったらしく,大きく頷いた。
「あれを...使うのですね。」
島津の言葉に,吉田も気づいたらしい。驚いたように北条を見た。
「でも,あれは失敗作では...?」
「さすがは吉田君,察しがいいね。確かにあれは一度失敗したものだ。しかし今あれ以外に今の状況を何とかできるものがあるかね。」
「それは...まあ,確かに」
「やりましょう」
北条と吉田をじっと見据えていた島津は,重くそう言うと,ゆっくりと立ち上がった。
「よし,行くぞ!」
北条が廊下を歩き出す。島津と吉田がそれに従った。
「ちょ...ちょっと,待ってくださいよ!いったいなんなんすか!!」
大野も慌てて立ち上がり,彼らを追っていった。


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