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ゴジラ〜恐怖を統べる者〜
作:ぎどらまん

第十二章

次々とビルを呑み込んで行く火炎の中を一歩一歩踏みしめるようにして歩いていくゴジラ。
その目は目前の地獄のような様子に爛々と輝き、尾で建物を叩き潰し、足でコンクリートを抉り、着実に進んでいく。
もはやその行く手を阻むものはない...はずであった。

「ゴジラ...ゴジラ!」

頭の中に自らを呼ぶ声が響いて、ゴジラはふと立ち止まった。
巨体を後方に向け、上を見上げる。
空中に浮いていたのは、レドリシアであった。
「なぜ、東に行こうとする?そちらにはイクセシリオンが向かう手筈になっている。貴様は西に進むのだ。」
レドリシアがテレパシーでなおも呼びかける。
しかし、ゴジラからの反応はない。
「どうした。なぜ返答をしない?」
真っ赤な瞳で地上の黒い巨体を見据えるが、なおも反応しない。
「答えよ!!」
しかし反応はない。
ただただ、血走った白濁色の目で睨んでいるばかりである。
「なぜだ...生き物であれば、わがテレパシーに返事をせずとも、ちょっとした感情表現を感じることはできるはず。だが、奴の頭の中は...空虚なだけだ。」
と、ゴジラに動きがあった。
視線を正面に戻し、レドリシアを無視するかのように前進をはじめたのだ。
向かう先は...東である。
「奴は水爆実験で巣を追われたため、人類を憎み破壊行動を起こしているはず。ならば感情がある筈、いったいなぜ...」
レドリシアは、事前に入手していたゴジラに対する学説から、そう分析していた。しかしどう考えても、ゴジラには感情がない。
「もしや...その学説が間違いなのか?奴がただの破壊衝動.破壊行動の塊でしかないとしたら...しかし、そんな生物が存在していいのか?」
地上ではゴジラがまた熱線を発射し、目前のビル群を火柱に変えている。
「しかし、他に考えようがあるのか?...何ということ。人類はなんと恐るべき生命体を創り上げたのだ...」
レドリシアは驚異の目でゴジラを見た。
ゴジラもその視線に気づいたのか、レドリシアの方を振り返る。
「ゴジラ...人類よりも恐るるべき存在か。それを破壊することもまた、神の御遺志。...替え玉はパンドラを使って、創造すればよい。」
レドリシアは殺気をゴジラに向けた。左手をゆっくりと地上に翳す。
「イクセシリオン。」
レドリシアがその名を呼ぶと、大地が大きく裂け、けたたましい咆哮とともに赤黒い怪獣が現れた。鋭い鎌のような前足をゴジラの方に向ける。
「これもまた神の御遺志、大空の元に戻ってきたばかりであるが、貴様のような存在はあってはならんのだ。うらむならば、その肉体を生み出した愚者どもを恨め。」
レドリシアがそう言い終るか終わらないかの内に、イクセシリオンがゴジラへと飛び掛った。
四対の後ろ足の最前列でゴジラの脇をはさみ、鎌のような前足で黒い巨体の肩口を切りつける。
「グゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!!」
ゴジラが苦痛に顔を歪めた。
ガ、イクセシリオンは容赦しない。
更に前足をゴジラの肉に食い込ませていく。
更にゴジラをぐいぐい押し、近くのビルにたたきつけた。ゴジラの動きが鈍くなる。
「意外と脆いな。...いや、これがパンドラの実力か。イクセシリオン、止めを刺せ。」
レドリシアの言葉に反応し、イクセシリオンが左前足を振り上げる。
と、そのときであった。イクセシリオンが突然バランスを崩し、その場に倒れこんだのだ。
「何!?」
よく見ると、後ろ足の一本にゴジラの尾が絡み付いている。
「油断させておいて引き倒したのか...なんと狡猾な。」
しかし、レドリシアの非難にゴジラが反応するはずもない。
勢いよく立ち上がると、倒れているイクセシリオンを思い切り蹴り上げた。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
イクセシリオンの絶叫とともに、左足が吹き飛ぶ。
ゴジラはイクセシリオンの叫びにどこか恍惚という表情を浮かべ、更にあまり大きくない胴体を踏みつけた。
イクセシリオンの顔が更に苦痛に歪む。
「どうした、イクセシリオン。貴様の実力はそんなものか。」
レドリシアが眉間に皺を寄せる。
それに反応したのか、イクセシリオンはゴジラをきっと睨むと、最前列の後ろ足でゴジラの足を突き刺した。
「グゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアゥゥゥンン!!」
驚き、思わず後ずさりするゴジラ。その隙にイクセシリオンは立ち上がりゴジラ向かって体当たりをした。
更に後ずさりをするゴジラ。イクセシリオンは止めとばかり、残る右の前足を振り上げた。
しかしゴジラはそれ以上の攻撃を許さなかった。
背鰭、口と青白い光が灯り、青い光の奔流がイクセシリオンの右前足を貫いたのだ。
大爆発とともにイクセシリオンの右前足が肩口から吹き飛ぶ。
「放射熱線...何という威力だ。イクセシリオン、勢いを失うな!...死にたくなければ。」
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエンン!!!」
一際大きな咆哮とともに突進し、ゴジラの右腕に齧り付くイクセシリオン。
しかしゴジラはそれを無表情で受け止め、その大きな裂けた口ガつながっている赤黒い首に、鋭い牙を突き立てた。
鈍い音がした。ゴジラの牙の前にイクセシリオンの外骨格はいとも容易く食い破られてしまったのである。
イクセシリオンの黄色く光る目がかっと見開かれる。
更にゴジラは血が流れるイクセシリオンの首筋を、勢いよくひねった。
イクセシリオンの牙はゴジラの右腕から一瞬にして引き抜かれ、顔面が180度回転したかと思うと、大きく裂けた口から血の混じった泡を吹きながら倒れこんでしまった。
地に伏せたイクセシリオンの体には、もはや力なくピクリとも動かない。
「ク...だが、これからだぞ。」
死闘の結果を見届けたレドリシアは、そう呟くと青空に吸い込まれるようにして消えていった。



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