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ゴジラ〜人の創りしもの〜
作:ぎどらまん

第一章 

2004年。アメリカ・カリフォルニア州の某研究施設。
研究室長パブロ=ハードリーは、何かに怯えた様子で電話を掛けていた。
「フーコーか?私だ、パブロだ!」
「どうしたんだ。パブロ?久しぶりじゃないか。」
「頼む、お願いがあるんだ・・・」
「何だ?そんなに勿体ぶって。確かに俺は今CIA長官の地位にいるかもしれんが,俺とお前の仲じゃないか。そんなに気にしなくてもいいんだぞ?」
「とんでもないことになった…私が…私が研究費に目がくらんだばかりに…」
「…やはり,研究費をどこかから不正に受け取っていたんだな?確かにお前の研究所は国立の秘密施設でありながら、予算を超えた研究が行われていたようだしな…わかった。
俺がお前の身の上だけは何とかしてやる。…だが、どうしてそれを言う気になったんだ?確か、FBIの調査でもはっきりしたことはばれなかったじゃないか。隠し通せなかったわけでもないんじゃ…」
「違うんだ。それだけじゃないんだ。」
パブロのより真剣な口調にフーコーが一瞬たじろぐ。
「私は…私は,創ってしまったんだよ。これはまさに滅びのための発明だ…今に人間を…」
次の瞬間、フーコーの耳に電話回線が切れる音がした。
「パブロ?どうした!パブロ!!」
フーコーの呼びかけにもかかわらず、彼の耳に入ってくる音はツー、ツー、という電子音ばかりであった。
パブロは破壊された電話の受話器だけを持ち、腰を抜かしていた。
彼の目前の強固な壁は紙のごとく破られ、後ろには生き物のごとく荒れ狂う炎が見える。
そして、その炎の前に白いコートを着た男が立っていた。
「…レドリシア」
ポツリと、パブロがつぶやく。
「キューバーはどこだ…キミサワに盗ませただろう?」
「…」
「見たことは判っているのだ。貴様はあれから私が取り出したデータを受け取って,私の望みどおりに製作を進めていればよかったものを…」
「貴様は、人類医療のための古代技術だといっていたじゃないか。それが・・・あんなことのために使うものだったなんて…」
「貴様らのような薄汚い人類を生かしておくわけには行かないだろう…この惑星を護るためには、きみたち人間は邪魔なんだよ…」
妙にやさしい口調のレドリシアの言葉の裏に、パブロは明らかな殺気を感じた。
「わあああああああああああああああああ!」
パブロの手がいすを掴み、レドリシア向かって投げつけた。
いすを顔面に受けたレドリシアがその場に倒れこむ。
その隙をついて、パブロは部屋を飛び出した。
研究所はまさに地獄絵図と化していた。
研究機材はことごとく破壊され、その周りには研究に従事していたのであろう人間の死体がばらばらの肉塊となって転がっている。
と、ごとりという音とともに床の一部がずれた。
中から東洋系の女性が現れた。
やや細面でこれといった特徴もないが、よく整った顔立ちで髪は肩口まで伸ばしており、白衣はやはり煤塗れである。
女性は首から上だけを恐る恐る出し、周りに誰もいないことを確かめるとゆっくり立ち上がった。
下を見ると、先ほどまでともに働いていた同僚の無残な姿に出くわす。
どう見ても人間と認識できないその死体に涙が零れ落ちる。
突然、女性の肩に何かが触れた。
人の肌であることは瞬時に理解できる。
驚いた彼女は、あわてて後ろへ飛びのいた。
「リョウコ!」
手の主が彼女に呼びかける。パブロだった。
「局長…」
「リョウコ…怪我はないか。」
「はい。」
声を詰まらせながら,君沢遼子が答える。
「局長…これはいったい…」
「レドリシアだよ。」
「彼が?」
「ああ、われわれは、やつの力を甘く見すぎていたようだ…」
「『あれ』をとられたからですか…?」
「そうだ。秘密を知られた以上、生かしてはおかないつもりなのだろう。」
「そんな…」
「リョウコ…『あれ』を持って逃げろ。」
「局長は?」
「ここで時間稼ぎをする。」
「え?」
「『あれ』をやつの手に戻すわけにはいかない。『あれ』をやつが持てば…人類は滅ぼされる。」
「そこにいたのか…」
突然の声に二人がその方向を振り向く。レドリシアだった。
「泥棒猫め。貴様らにはここで死んでもらうぞ。」
「リョウコ!行け」
パブロがつぶやくように言う。
「でも、所長は…」
「これも償いさ…早く、行け!!」
いきなり怒鳴られた君沢は驚いたように立ち上がると、あわてて駆け出した。
「逃がしたつもりか?無駄だよ。この炎からは逃れられんさ。」
レドリシアの目が赤く輝く。次の瞬間、あたりの炎がさらに勢いを増した。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
炎はまるで生き物のようにパブロの白衣にまとわりついてくる。
「キミサワも今頃は、君と同じ運命だ。」
(逃げ延びていてくれ…リョウコ…)
炎の中、パブロの意識は次第に融けていった。

2006年。研究所跡。
いまや更地となったこの場所に人影があるのは珍しいことであった。君沢である。
その手には、黒い立方体がしっかりと握られていた。
同じころ。レドリシアは漆黒に覆われた空間に一人立っていた。
目の前には円柱状になった岩がある。岩の頂には、小さな四角い穴が開いていた。
「あれが、必要なのか…」
レドリシアの赤い瞳が、さらに輝きを増した。


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