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| ゴジラ〜人の創りしもの〜 |
| 作:ぎどらまん |
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第四章 ローランド=ジョイに伴われたミラ=スティングスがとある部屋に入ってきたのは,2006年4月3日の夕刻のことだった。 スティングスの顔に冷笑が浮かぶ。 「ちょうど今朝、あなたの話をしていたのよ。かくれんぼはそろそろ終わりにしたいってね。」 スティングスの声が、部屋に響き渡った。 言葉をかけられた男は,拘束具を手足につけられたいすに座らされ、身動きが取れないでいる。 真っ赤に光るその瞳が,無表情のままスティングスを捉えていた。 「レドリシア=ガルド。今朝方、インターネットカフェからホテルに戻るまでの間を一般市民に目撃され、CIA にお縄。無様なものね。」 「…ふん」 スティングスの言葉に、レドリシアは冷笑で応答した。 「自分のことでも嗤っているのかしら?」 「まぁ、そうだな。油断したようだ。そうでなければ、貴様らのような下衆に捕えられることがあるはずもない。」 「…遠吠えね。あなたもおしまいよ。とんでもないことをしてくれて…生きていられるとは、思わないで。」 「…だろうな。下等種が生き残るには、私が生きているわけにはいかない。闇に葬るしかない…か」 自嘲するような笑みを浮かべ、レドリシアは顔をうつむけた。 「でも、いま闇に消えてもらうわけにはいかないわ。いくつか教えてもらわないと。」 そう言って、スティングスはレドリシアに一束の書類を渡した。 「あなたがインターネットカフェで調べていたことを、調査させてもらったわ…なぜ、いまさらハードリー研究所のことを調べる必要があるのか…? あなたが『ペット』を育てさせていた場所に、まだ秘密が?」 「貴様らに知る権利はない」 薄ら笑いを浮かべながら、レドリシアはつぶやく。 「…痛い目に会いたいようね。」 スティングスの切れ長の目が、鋭く光った。 島津は、北条、エーベルバッハとともに沈痛な面持ちで酒をあおっていた。 三人ともピアノの音色に合わせて軽やかにダンスを踊る人々を、カウンターに肘をついて眺めている。 「結局、変わらんのだな。」 北条が、ポツリとつぶやいた。 「大国は自国の利益を守るのに必死。 共通の問題には、利害が一致しなければ協力しようとしない。」 「アメリカはまだ実際のゴジラ被害にあってませんからね…実感がわかないというのもあるのでしょう。ヨーロッパ諸国も積極的とはいえ、東アジア諸国ほどではない。」 北条の言葉を、エーベルバッハが続ける。 「新兵器があるといっていたが…勝てるのだろうか?どう考えても、ファイヤーミラーの応用としか思えないが…」 中国代表の言葉を思い出しながら、北条が言う。 「ファイヤーミラーでは、ゴジラは倒せませんでした。」 そうつぶやいた島津の言葉で、三人はさらに重い雰囲気に引き込まれ、黙ってコップを干した。 「いい音色ですね。」 不意に、エーベルバッハがつぶやいた。北条と島津が、ピアノの方向に視線を注ぐ。 「なかなか上手いな…見たところ、日本人のようだが。」 北条が答える。 確かに、ピアノを奏でる女性は東洋風の顔立ちであった。 特徴的というわけでもないが、面長の整った顔立ちである。 「ピアノか…」 島津が目を細め、懐かしそうにつぶやいた。 北条が思い出したように島津の顔を見る。 「…彼女も、上手だったな。」 「ええ、杏子も…よく私にひいてくれました。」 先ほどまでこわばっていた島津の顔が、少し和らいだ。 と、女の目が島津のほうを向き、彼の表情に気づいた。 島津に向かい、微笑み返す。あわてて視線を下にそらす島津。 「誤解されたようだな。」 北条がにやりと笑った。エーベルバッハも顔をそらし、笑みを浮かべる。 島津も釣られて照れ笑いを浮かべた。 しかし、その目の奥には、どこか堅さが残るのであった。 スティングスが、ジョイとともに部屋を出た。 「5時間…これほどねばったやつも、始めて見たわ。」 「ええ、普通の人間なら、あの電気ショックで死んでますよ。 恐らくはいたというより、錯乱状態の中で思わずしゃべていた、という感じですね。」 「まあ、普通の人間とは、とても言い難いのは今までのことで重々承知しているから…」 そう言って、スティングスがため息をつく。 「しかし…本当でしょうか?あの話…」 「信じがたくはあるけど…しかし超人的な男に怪獣を作り出す赤い玉。そんなものが実際に現れたあとであんな空想じみた話をされても、ありえると思えなくはないわ。」 「一応、裏付を取ってみます。」 「ええ…それから…」 「女の捜索も、抜かりなく。」 「お願い。」 「やっと、このときが来ましたね。」 「ええ、祖国を凋落の危機から救い、これまで払ってきた多大な犠牲を清算する…。2年の苦労も、これで報われるわ。」 スティングスが、口元をにやりとゆがめた。 椅子には、男が座らされていた。 拘束具はいまだつけられたままだが、その拘束具からはぷすぷすと白い煙が出ている。 拘束具は、後ろにある怪しげな機械とコードで結ばれていた。 そこから、電気ショックを流されていたようだ。 男の見張りには、二人のCIA職員がついていた。 一人はもう一人より階級が上らしい。 「少しトイレにいってくる。しっかり見張っておくんだぞ。」 というと、部屋を出て行った。 残された男は、中肉中背、金髪を伸ばし、後ろで束ねている。 CIAの男が、座らされている男のほうを見た。 拷問の後だからか、顔をうつむけ、気を失っているようである。 「…愚かな。」 CIAの男が呟いた。 その顔には,人間のものとは思えないほど冷たい笑みが浮かんでいた。 ハワイ沖。 海底を、巨大な生物が歩いていた。 一歩一歩漆黒の巨体が進むたび、あらゆる物を引き込んでしまうほど巨大で深い足跡が刻まれていく。 憎悪に引きつったような黒い顔面の中で、瞳のない、血走った目はひときわ目立つ。 その目は、獲物を見つけた肉食動物のごとく、はっきりと何かを見据えているようであった。 |
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