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| ゴジラ〜人の創りしもの〜 |
| 作:ぎどらまん |
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第七章 ベリーの乗ったヘリが、突如として揺れた。 ヘリの中で震えていたベリーの手が止まり、恐る恐る上げられた目に映ったものは、ハワイ諸島を包み込む、巨大な原子雲であった。 4月6日。午後5時。国連軍本部会議室。 ベリーの目に移った原子雲が、今会議室のモニターに映し出されていた。 「やってしまったな…」 北条がつぶやく。 「ハワイは観光地も含めて核爆発の被害を受けた模様です。通信も不可能で、救出活動もしばらくは不可能かと…」 そう報告する島津の表情も苦々しげに歪んでいる。 「被害者数は?」 「未知数です。原子力空母4隻の爆発ですから、広島や長崎よりも…」 「上か。」 「唯一の救いは、放射能反応が見られないことですが…」 「ゴジラの腹の中か…これでやつも以前並み…いや、それ以上の力を手にしたことになるな。」 「活動が活発化するのは、間違いないかと。ここは米軍に要請して、共闘体制をとらねば…」 「うむ…」 二人の眉間に、さらに皺が寄った。 同じころ、ホワイトハウス。 「本日、われわれは、悔やむべき報告を手にしました。」 貴社を前に演説するのは、アメリカ大統領・ハワードである。 「ハワイの壊滅は、皆さん既にご承知かと思います。 今日、われわれはわが国史上最悪の地理的、人的被害を受けました。 それも人類ではない存在による、卑劣な奇襲戦法によってです。 世界に全人類の自由をもたらすという責任ある立場にあるわが国が、このように卑劣な、人類の敵を前に、黙っていて良いのでしょうか? そんなはずが無い!われわれはここで恐れをなし、引き下がってはならないのです!!戦い、そして勝利せねばならない!!」 数分後、大統領執務室。 「見事な演説でしたな、大統領。」 大きな大統領専用椅子に潜り込むハワードに向かい、フーコーが言った。 隣には、唇をゆがませるスティングスの姿がある。 「うむ…これで、国民士気の低下を防ぐことはできるかもしれんが…大丈夫なのか?ゴジラが本土に上陸した場合、通常兵器を以って倒せるのだろうか?」 ハワードが眉間に皺を寄せ、演説とは正反対のことを言う。 「通常兵器では、恐らく無理でしょう。しかし、時間稼ぎは十分できるはずです。」 フーコーの言葉に、ハワードの眉間にさらに皺が寄った。 「やはり、その方法しかないか…」 「はい…レドリシアの証言によれば、あの場所に、大量のパンドラが隠されているとのこと。キューバーを発見し遺跡に侵入、回収すればかなりの戦力になるかと。」 「しかし、パンドラを使えば、国際的な批判は免れまい。」 「毒を以って毒を制す、です。国連軍の協力を仰ぐより、ましなのでは?」 スティングスの言葉が鋭く響く。 ハワードが顔をうつむけた。 確かに、国連軍に協力を仰いだ場合、世界最強を誇示してきたアメリカ軍は、国連軍にその席を譲ったと見られかねない。 そうした場合、国民支持率は低下し、大統領二期連続当選を狙うハワードとしては、選挙に響く可能性があった。 パンドラならば、ゴジラに勝利した後で『国連軍よりも強力なアメリカ軍』をアピールすれば、国内世論を抑えられる可能性がある。 国際批判は、いつの世も勝者には優しいものだ。 「…わかった。CIAのパンドラ捜索を許可する。キューバーを所持していると考えられる女は、見つけ次第拘束しろ。」 ハワードの決断を受け、スティングスはしたり顔で部屋を出て行った。 2006年4月8日の朝刊は、どの国も共通していた。 『米軍、国連軍の協力を拒否』 である。 第1課作戦室のドアを開けた島津に、大野の声が飛んできた。 「隊長!米軍の話、本当ですか!?」 眉間に皺を寄せた島津の顔が、大野のほうを向く。 「ああ。」 途端に、部屋のあちこちからため息が漏れた。 「あそこまでやられたのに、どうして…」 信じられないといった調子で、吉田が呟く。 「わからん。ただの意地でそう言ってるのか、それとも何か考えが…」 「隊長!」 慌てた様子で、エーベルバッハが入ってきた。 「どうした?」 「たった今入った情報なのですが、どうやら国連軍の協力拒否を大統領に打診したのは、CIAのようです。」 「CIAが?国防長官はどうしたんだ?」 島津が顔をしかめる。 「真珠湾のショックが大きかったらしく、療養中のようで…」 「さては国防長官が不在の時期を狙ったな…しかし、なぜ…」 「実は…もうひとつ重要な情報が入っていまして…」 エーベルバッハが言葉を切る。部屋中の耳目が彼の元に集まった。 「数日前、レドリシアの目撃証言があったらしいんです。」 とたんに、静かであった部屋がざわつき始めた。 「あのやろう、また…」 大野が苦々しげに呟く。 「それで、その証言を元に、CIA がレドリシアを拘束した…と?」 存外冷静に、吉田が尋ねた。 「ご名答」 意外というように、エーバルバッハが吉田を見た。 「そうであったならば、CIAがレドリシアから何かを聞きだし、大統領に入れ知恵したと考えられます。」 吉田が島津に向かって、単調な調子で言った。 「でも、レドリシアがそう簡単に情報を教えるか?そんなやつとは…」 大野が訝しげに言う。 「CIAの拷問は相当のものと聞くわ。レドリシアも人間の姿をしているからには、あるいは…」 「人間な…」 半ば不満を残した様子で、大野が呟く。 「しかし、レドリシアがCIAに何らかの情報を与えたとすれば、吉田の言うとおり、アメリカの決断も説明がつく。」 島津が、吉田に賛意を示した。 「そしてその情報とは…」 「恐らく、パンドラか、あるいはそれに順ずる兵器かと思われます。」 島津の言葉を、吉田が続けた。 「『毒をもって毒を制す』だな。冷戦時代の、核開発競争のようだ。」 ため息をつきながら、島津が呟いた。 4月8日の日も沈もうとしているころ、スティングスは自室で報告を受けていた。 「で、どこに?」 切れ長の目をニヤつかせ、目前に立つ金髪を結った男に尋ねる。 「は、どうやらニューヨークのパブでピアニストをしているようで。」 「ニューヨークね…人ごみに隠れれば逃れられるものではないわ。ホフマン、ジョイと一緒に行ってきなさい。」 「了解」 先ほどの男―ホフマンはさっと向きを変え、部屋を出て行った。 「…これで私も、救国の英雄ね。」 高い鼻をフンと鳴らし、スティングスはニヤついた目を、窓の外の真っ赤に燃える夕日へ向けた。 |
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