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ゴジラ〜人の創りしもの〜
作:ぎどらまん

第十四章

4月13日の朝日が昇ってきた。ホワイトハウスから、ひとり口ひげを蓄えた眼光鋭いアジア人が出てきた。国連軍総司令官.北条公康である。眼の下には、隈ができていた。門の前に止まっている車に乗り込む。
「お疲れですね...」
助手席に座っていた島津が話しかける。運転席に座るのは、エーベルバッハだ。
「ああ。大統領の意志は決まっていたようなんだが、CIAがうるさくてな...どうやら長官のフーコーが、FBIとつながってるらしい。あそこも政治家連中の汚い話を握っているからな。」
北条が眉間にしわを寄せ、左手で顔半分を覆った。
「ここまで重大事に来ても、未だ政争の具をかざすんですか...」
驚いたように、島津がつぶやく。
「まあ、何であろうとこれで決まりだ。国連軍と米軍の協調体制。本番はこれからだぞ、島津。」
北条の言葉に、島津の顔が少し曇った。

「おのれおのれおのれおのれっ!」
わめき散らしながら、フーコーが会議室に入ってきた。部屋には、スティングスとホフマンがいる。ホフマンは相変わらず髪を後ろで結って至って冷静な顔である。連日の疲れを見せる気配はない。一方のスティングスは、切れ長の目に光はなく、ずっと下を向いていた。
「どうした、スティングス?」
フーコーが怪訝そうに話しかける。いつもの彼女ならば、切れ長の眼をぎらつかせ、次なる策を練っているはずだ。幾年もの間、多くの犠牲を払いながらやっと捕まえたレドリシアからの情報が、今、無駄になろうとしているのである。
「実は...ジョイと、部下二人が殉職しまして。...キミサワを連行しようとしたとき国連軍の連中が突然襲い掛かってきて、私だけが、生き残りました。」
眉間にわずかながらしわを寄せ、ホフマンが言う。
「彼が...!信じられない。スティングスの懐刀だったというのに...部下も死に、パンドラの捜索も打ち切りに...」
「長官。」
フーコーの言葉をさえぎるように、重々しい声でスティングスが口を開いた。
「これはもう、弔い合戦です。」
スティングスの眼が、ぎらつきを取り戻した。
「し...しかし...」
「結果が出せればいいのでしょう。長官がなんと言おうと、私はやらせていただきます。」
「や...やめろスティングス。我々にもう手立ては...」
「失礼します。」
しどろもどろのフーコーを尻目に、スティングスとホフマンは立ち上がり、部屋を出た。後に残されたフーコーが、あわてて携帯電話を手に取った。

 4月14日午後1時。
ニューヨーク郊外国連軍本部の小会議室で、島津、大野、吉野そして北条の4人は黙って腰掛けていた。ノックが聞こえ、エーベルバッハが入ってくる。その後ろに立っていたのは、君沢だった。
「君沢遼子さん...ですね。」
島津が穏やかな口調で尋ねる。
「はい...」
うつむき加減で、君沢が答えた。
「早速だが、お尋ねしたい。君がパンドラを大量に所蔵した場所の鍵のようなものを持っていると聞いたが、本当か?」
「え...?」
島津の言葉に、君沢が一瞬たじろいだ。どう見ても、演技ではない。
「...持っていないんですか?」
いぶかしげに吉田が聞く。
「そんな場所があるはずがありません。パンドラは、私がいた研究所で作った3つだけしかないはずです。」
「では君はなぜ追われている?」
島津が聞いた。
「それは...」
君沢が唇をかんだ。しばらく下を向いて押し黙っていたが、意を決したように顔を上げ、ポケットから小さな黒い立方体を出した。一見するとさいころのようだが、黒光りするその塊は、人に不安を与えるが如く暗い印象を与える。
「それは?」
ものめずらしそうに、大野が聞いた。
「『キューバー』と言います。我々人類がまだ狩猟をしていたような時代に作られたものです。」
君沢の言葉に、一瞬一同はきょとんとした。しかし、彼女の顔は大真面目である。
「原始人がそんなもんを作ったてのか?」
驚いたように大野が言い、身を乗り出した。吉田があわてて抑える。
「信じられないでしょうが...これを作ったのは、別の星から来た者たちです。」
そういって君沢は、『キューバー』をテーブルの上に置いた。側面をつつくと、小さな立方体から全身黒服の中年の男の映像が飛び出した。
「これは...」
誰ともなく、驚きの声が上がる。
「私の名は、エケンダル。アトランティスの科学者だ。」
映像が話し出した。
「アトランティスって、あの伝説の?」
大野が吉田に聞いたが、彼女に分かるはずもない。こっちが聞きたいぐらいよ、と言う顔を返した。
「伝説ではない。実在したのだ。...厳密に言うと、我々が作った。」
映像が答え、大野が眼を丸めた。
「しゃ・・・しゃべった!」
「ある程度の質問ならば答えられるようプログラムされている。」
至って冷静に、映像が答える
「エケンダル...とかいったな。作ったとは、どういうことだ。」
状況が飲み込めたのか、島津も冷静に問い返した。エケンダルの眼が、島津のほうを向く。
「我々アトランティス人は、別の星からやってきた。惑星内での人口過剰が原因で、一部の囚人が宇宙船に乗せられて惑星を追い出されたのだが、我々はその子孫だ。何世代もの間宇宙空間を漂い、やっとのことでこの星へやってきた。」
「それで、君たちは居住地として、大陸を作った...と?」
「そうだ。アトランティスとムー。この星に従来住んでいる生物たちの生活に介入し、環境バランスを崩しては暮らしていけなくなるからな。」
「ムー大陸まで出てきやがった...」
大野は相変わらず信じられないような様子である。
「『キューバー』が世に出たのならば、君たち地球人には危険が迫っている。気をつけねばならない。」
エケンダルの映像が続けた。
「危険?」
それまで黙っていた北条が、聞き返した。
「そう。『やつ』が復活する危険が...」
映像の表情が、一瞬曇った。


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