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ゴジラ 怪獣列島
作:MOTHGO

 5 ゴジラ上陸

 愛知県豊橋市・海岸沿いの道。
順調に進んでいない避難活動をよそに、三人の男達がゆったりとした表情で話をしていた。
 「こんなところまで来るとは思えないけどなぁ。」
 「アンギラスが消えたのって新潟あたりだろ?そんな日本縦断なんてありえねぇしな。来たとしてもこんな田舎、すぐ通り過ぎちまうよ。」
 「しかし日本ってホントに怪獣災害多いよな・・・・・・怪獣のマンションでもあるのかね?」
 「日本列島じゃなくて怪獣列島ってか?」
 「ぶははっ、怪獣列島ってそんなもんあってどーすんだよ!」
 と笑っていた時、そのうちの一人があるものを見つけた。
 「おい、あれ何だ?」
 他の二人もそれを見た。
海の上に見える白い航跡のような波。
V字型のその波はこちらに向かってきているようだった。
しばらく見ているとその航跡は海面にふわりと散って消えた。
 「なんだ今の?」
 その時、突然海面に巨大な水柱が立った。その水は男達に容赦なく降り注いだ。
 「ぶわっ、痛っ、辛っ!」
 「なんなんだよ一体!?」
 男達が見上げたそこには、黒く、巨大な、『生物』。
 「!!?!?!!!」
 「ゴ・・・ゴゴ・・・・・・ゴジラだ―――――!!」
 「なにしてんだ、はやく逃げろ!」
 ゴジラは歩を進め、その一歩で先程まで男達が座っていた道のアスファルトを砕いた。
 ついにゴジラは日本に上陸した。
   「やっぱりこういう場合は輸送ヘリか・・・残念。」
 と愚痴をこぼすのは名古屋空港の果歩だった。もっと攻撃的なヘリを見たかったらしいが当然避難活動に必要ないのでここにはない。
 「少し違ってもこういうのってあんまり乗る機会ないからいいんじゃない?」
 「ですかねぇ〜、やっぱり欲張りすぎはいけませんよねぇ〜・・・・・・でも惜しいなぁ。」
 何機もの輸送ヘリがすでに飛び立っているが、まだ1000人ほどの民間人がヘリに乗る順番待ちをしていた。
幸子と果歩はその真ん中あたり、まだしばらく時間がかかりそうだった。
 が、突然地面が揺れだした。
 「きゃ、何?地震?」
 その時果歩は聞いてしまった。近くに止まっていたジープの無線の声を。
 『震源浮上中、巨大生物反応感知!』
 ビルが崩れ、大量の土砂が宙に舞った。
それは空港からも見ることが出来た。
土埃から出てきたアンギラスは空に向かってその声を響かせた。
 パニックに陥った空港を一睨みしたアンギラスはライトニングフラッシュの発射態勢に入った。
 「果歩ちゃん伏せて!」
 アンギラスの放ったライトニングフラッシュが輸送ヘリを撃墜した。
それには避難民が何人も乗っていた。
次から次へと輸送ヘリを撃墜していった。避難民収容中のヘリだろうと容赦はしていない。
一機のヘリの爆風で果歩の体が宙に舞った。
 「果歩ちゃん!?」
 空港のアスファルトに叩き付けられ、ぐったりしている果歩に幸子は呼びかけ続けた。
 「大丈夫ですか!」
 防衛隊員が駆け寄り果歩を抱き起こした。
 「地下に緊急避難場所があります。他の方々もそちらへの避難をはじめました。この子は私が背負っていくので早くこちらに。」
 幸子と果歩は防衛隊員に連れられ地下避難所に移動した。
 すぐ側ではアンギラスは手当たり次第に建物を破壊し続けていた。

 「レーダーに目標捕捉。」
 「全機攻撃態勢に入れ。市街地だが攻撃許可は出ている。視認次第攻撃開始せよ。」
 雲の上を5機のF15J戦闘機が飛行していた。
攻撃準備が完了したF15編隊は降下しはじめた。
雲を突き抜けるとそこには建物を破壊しながら突き進むゴジラがいた。
 「攻撃開始!」
 ミサイルが一斉に発射された。
次々とゴジラに突き刺さり炸裂するが、そのゴジラは全く気にせず進撃を続ける。
 「第二次攻撃開始。」
 だが攻撃が開始される前にゴジラは背ビレを光らせ、熱線でF15を撃墜していった。
 「くそっ、ダメか!」
 最後の1機も撃墜され、ゴジラは再び歩み出した。

 防衛軍司令本部。
加藤は状況を把握するため司令室へと走っていた。だが加藤の前にある人物が現れた。
 「新星さん!状況は・・・・・・ゴジラはどうなっているんですか?」
 「ゴジラは愛知県に上陸し、名古屋方面に向けて北上中だ。」
 名古屋、と聞いた時加藤の脳裏に不安がよぎった。さらに新星は大変なことを言った。
 「その名古屋でアンギラスが現れ、一時避難所となっていた名古屋空港が襲われた。すでに大勢の死者が出ている。そして名古屋空港には・・・・・・きみの奥さんと・・・私の娘がいたそうだ。」
 加藤は驚愕した。
 「・・・・・・生存者は?いるんですか?」
 「地下の緊急避難所に避難したところまではわかっているが、それから連絡が取れていない。」
 そして新星は加藤に近寄り、その両肩を強く掴んだ。
 「頼む、加藤くん!多くの軍人達がゴジラとアンギラスに挑み、死んでいった。もはや2体に立ち向かえるのは君と轟天号しかいない。
娘を、名古屋の人々を助けに行ってくれ!私は妻をアンギラスに殺されている。もうこれ以上・・・・・・大切な人を失いたくないんだ!!」
 新星は膝をつき、その場に泣き崩れた。
 「俺だってもうこれ以上・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・・そういうことか!」
 加藤は新星の両肩を握りかえすと、
 「新星さん、ありがとうございます。娘さんは絶対助け出して見せます。」
 そう言い残し再び走り出した。残された新星は呆然としていた。
 「ありがとう?そこまで言うほどの事したか?」

 防衛軍司令室。加藤が扉を開けて入った時、次々と情報が入ってきた。
 「アンギラス、ナゴヤドームを破壊!」
 「ゴジラ岡崎市に進入、尚も進撃中!」
 加藤は司令室の最も高い場所へ向かった。
そこには内閣総理大臣、防衛軍各幕僚長、総司令官が集まっていた。
総司令官が加藤に気付き、声を上げた。
 「加藤大佐、松岡大佐の意識が回復した。今無線が入っている。」
 「松岡さんが!?失礼します。」
 無線を受け取った加藤はそこから聞こえる声を聞いた。
 『お・・・加藤か。』
 「松岡さん、大丈夫ですか?」
 『まだ少しクラクラするかな。これじゃとても轟天号での出撃はムリだ。』
 「松岡さん、俺が戦う意味、見つけました。」
 一回深呼吸をして心を落ち着かせ、加藤は言った。
 「俺は兄貴をゴジラに殺されました。
大切な人を失った心の痛みは簡単に治るものではありません。そしてそんな心の痛みを持っている人は数多くいます。
俺はもうこれ以上心の痛みを味わいたくない、味わわせたくない!俺は大切な人を守るために戦います!」
 無線の奥の松岡はしばらく黙ったままだった。少しして口を開く。
 『そうか・・・・・・司令官に替わってくれるか?』
 今度こそ納得できる戦う意味を見つけた、そう思っていた。
松岡の返事に加藤は渋々司令官に無線を渡した。
 『司令官、轟天号新艦長に加藤大佐を推薦致します。』
 うつむいていた加藤は驚きの顔を上げた。
 『自分はとても動ける状態ではありません。今そこで轟天号艦長に最も相応しいのは加藤大佐であると考えます。』
 「確かに、彼は優秀だ。しかしそんなすぐには決断は下せない。」
 『今この瞬間にも死傷者は次々に増えていているのです。人を守ることこそが、防衛軍の存在意義ではないのですか!?』
 「確かにその通りだ。」
 「総理?」
 口を開いたのはその場にいた総理大臣である。
 「直ちに加藤大佐を新艦長とし、轟天号出撃。」
 「しかし!・・・・・・・・・了解。加藤大佐。」
 「はっ!」
 加藤は返事をした。
 「ただ今より・・・轟天号新艦長に任命する。」
 「了解!」
 『司令官、もう一度加藤大佐に替わって頂けますか。』
 加藤は再び司令官から無線を受け取った。
 『加藤、よく見つけてくれたよ。過去の戦闘で出撃したお前の攻撃は恨みがこもっていた。
防衛軍はその名の通り防衛を目的とした組織だ。恨みや憎しみで人は守れない。お前にそれを自分の力でわかって欲しかった。
お前には優しさがある。お前の恨みや憎しみはその優しさがあるからこそのもののはずだ。だから恨みや憎しみを、優しさの力として戦え。』
 加藤はしばらく言葉が出なかった。
この人は自分のことを真剣に考えてくれている、だから加藤はそれに応えようと返事をした。
単純であるが、とても重い意味を持った言葉で。
 「・・・了解。」
 『絶対死ぬな、勝って帰ってこい。』
 そう言って無線は切れた。加藤は司令官に向き直った。
 「轟天号、民間人救助活動及びゴジラ・アンギラス撃滅のため、出撃します!」
 加藤は司令室を走って出ていった。

 轟天号・艦橋。
 「艦長、通信が入っています。」
 「新星さん・・・ですか。」
 モニターに映されたのは新星の顔だった。
 『加藤艦長、出撃前に装備の話をしてあげられないのは残念だが、今はそれどころではないな。
えーっと、以前のアンギラス戦での敗因がTSBの射程距離だと考えた私は、今回TSB−09の先端ドリルを最も固い金属フルメタルにしてさらに射程を伸ばしたTSB−09(改)を搭載させた。
結構値は張ったがな、その分射程は数倍に上がった。
そしてもう一つ、射程だけでなく破壊力も数倍に上げたTSB−10も搭載しておいた。だがこれは一発きりだ、使用する時は注意してくれ。』
 「了解。」
 『あ、それと・・・・・・やっぱりいいや、気にしないでくれ。』
 「・・・?何なんですか?」
 「轟天号発進準備完了。」
 「・・・では行ってきます。轟天号出撃!」
 凄まじい音を天に轟かせ、轟天号は名古屋を目指して飛んでいった。
 「加藤君・・・娘を頼む・・・・・・」
 新星は飛んでいく轟天号を見つめながらつぶやいた。


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