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ゴジラ 怪獣列島
作:MOTHGO

6 民間人救助作戦

 アンギラスが暴れているのか、部屋全体が揺れ続けていた。
そこは名古屋空港地下の緊急避難場所で、数百人の民間人と防衛隊員が避難していた。
 「う・・・・・・ん・・・」
 「果歩ちゃん、気が付いた?」
 幸子の膝を枕にして横になっていた果歩が目を開ける。
 「・・・・・・ここは?」
 「空港の地下にある避難所よ。防衛軍の人に連れてきてもらったの。」
 「避難所・・・そうだ、いきなりアンギラスが出てきて・・・たくさんの人が・・・!!」
 果歩は幸子に抱きついた。
幸子ははじめ驚いたが、果歩の肩が細かく震えていることに気が付いた。幸子はそっと、母親のように果歩の頭をなでてやる。
 「大丈夫、きっと助けが来るから。それまでもう少し我慢しましょう。」
 人々の不安をあおるように、部屋は尚も揺れ続けていた。

 轟天号・艦橋。

 「F15の出撃を確認しました。」
 「了解、目標まであとどれくらいだ?」
 「およそ10分です。」
 「わかった。」
 そこで加藤は大きな溜息をついた。
 「どうかいたしましたか?」
 加藤の隣に立っていた副艦長が訊いてきた。
 「いや、大した事ではないんだが・・・・・・今回を逃したら、もうゴジラとアンギラスを倒せないような気がしたんだ。根拠はないがな。」
 「どうですかね。艦長のその勘がアタリだとしたら、それは怪獣が二度と現れないのか、それとも轟天号の敗北か。」
 「どうせ俺の戯言だ、気にしないでくれ。俺たちは負けない。約束があるからな。」
 加藤は右手拳を強く握りしめた。

 アンギラスは依然、名古屋中心を破壊し続けている。
だが突然動きを止めたアンギラスは空を見上げた。
そこには2機のF15戦闘機の機影があった。
2機のF15は続けざまにミサイルを発射する。
そのミサイルはアンギラスに直撃するが、その固い甲羅に阻まれてほとんど効果はないようだ。
F15はアンギラスの真上を通過していった。
アンギラスは甲羅を展開してライトニングフラッシュの体勢に入り、F15に狙いを定めた。
だが背後から再びミサイル攻撃を受ける。
アンギラスが振り返ると先程とは別のF15、2機が真上を通過していった。
さらに別のF15が飛来、またしてもミサイル攻撃を仕掛けるとすぐ飛び去って行った。
F15のヒット&アウェイ攻撃にアンギラスは激怒、飛び去って行くF15を追って徐々に移動を開始した。

 「アンギラス名古屋空港から4kmライン突破。」
 「よし、轟天号降下。」
 加藤の命令で雲の中から轟天号が名古屋空港に降下していく。
 今回の救助作戦はこうである。
まずアンギラスにF15編隊が攻撃を仕掛ける。
だが、ここで撃墜されては全く意味がないので、攻撃を仕掛けてすぐ逃げるヒット&アウェイ戦法による波状攻撃を行う。
また、この波状攻撃はF15の軌道を一方向に統一することでアンギラスの誘導も行う。
それこそがF15編隊の目的である。
アンギラスがF15に引きつけられているうちに轟天号が名古屋空港に着陸、民間人を収容して安全地域まで飛び去る。
これが加藤の考えた救助作戦である。
そして今、轟天号はまもなく名古屋空港に着陸しようとするところだった。
 「ただ今我々の救助に轟天号が到着しました!」
 室内は「わっ」という安堵の声で満たされた。人々の顔からも安心の笑みがこぼれる。
 「果歩ちゃん、轟天号が助けに来たって。もう大丈夫だから。」
 「轟天号?お父さんの造った轟天号が?」
 はっきりとはしないものの、幸子は果歩の顔に安心感が浮かんでいるのを感じ取り、自分も安心する。

 F15の波状攻撃はまだ続いている。しかしついにアンギラスの反撃が始まった。
またもや2機のF15からミサイルが発射される。ミサイルが命中する直前、アンギラスは真上に跳び上がった。
跳び上がったアンギラスは2機のF15の目の前に・・・・・・
 「うわあああぁぁぁ!!!」
 2機のF15はアンギラスの針の生えた甲羅に激突、炎と共に空に散った。
同時にF15編隊に動揺が走る。
その一瞬の隙をついて、アンギラスは甲羅を展開、ライトニングフラッシュでF15を撃墜していった。
 その光景は轟天号の艦橋からも見えた。
 「F15編隊、直ちに戦闘区域を離脱してください!」
 『しかしあなた方は・・・』
 「我々は・・・救助を続行します。」
 乗組員達が加藤を振り返る。
 「正気ですか!?今この状況で援護もなしに救助活動だなんて・・・危険すぎます!」
 副艦長が反対するが、加藤は言った。
 「しかしこの地下には多くの民間人が恐怖に怯え、助けを待っている。
そんな人々を放ってはおけない。
それにアンギラスは轟天号を見たら先程のF15のように追ってくるだろう。
そうすれば戦わざるをえないが、それでアンギラスをここから引き離したとしても今の空港の状態では救助ヘリは着陸できない。」
 副艦長は荒れ果てた名古屋空港を見た。
確かにそこら中でアスファルトがめくれ上がり、とてもヘリが着陸する場所など無かった。
着陸できるとしたら瓦礫を潰すほどの重量を持った轟天号だけだろう。
 「今救助活動が可能なのはこの轟天号だけなのだ。そしてそのチャンスも今しかない。」
 副艦長は黙ったまま、アンギラスの映るモニターを見た。
アンギラスは何かを探すよう、首を左右に振っていた。
そして真正面を向くと一瞬動きが止まり、威嚇の大声を上げながら向かってきた。
 「どうやら本当に考える時間はないようですね。そこまで言うのならやろうじゃないですか。我々が唯一の望みであると言うのなら。」
 加藤は他の乗組員を見渡した。全員が頷き、同意を示す。
 「よし、轟天号引き続き降下、アンギラスに対し垂直に着陸!」
 「民間人の盾になるつもりですか?」
 「横向きの方が攻撃もしやすいだろう。日本海海戦さ。」
 「なるほど。」
 轟天号は電子砲4門をフルに活用しながら強い衝撃と共に着陸した。
一方のアンギラスは電子砲を避けるので精一杯のようだ、今のところは・・・・・・。

 「早く、急いでください!」
 「慌てずに、気を付けて!」
 民間人を収容中の轟天号だが、それでもアンギラスへの砲撃は止められない。
今アンギラスは体を丸めて電子砲の攻撃を固い甲羅で受け止めている。
その隙に人々は轟天号に乗り込んでいく。
しかしかなりの時間が必要に思われた。なぜなら民間人は全員で数百人もいるのだから。
 「一瞬たりとも隙を与えるな!多くの民間人の命がかかっているんだ!」
 「しかし・・・・・・全く動かないというのも逆に怪しいですね。」
 「何か企んでいると思うか?」
 「注意はした方が良いかと。」
 確かに、と加藤は思った。
アンギラスは一度轟天号を倒している。
ならば「自分より劣る敵」と認識して攻撃を仕掛けてくるはずだ、と考えた。
向こうにも何か考えがあるのだろうか。加藤は安心できないでいた。
その時、突然アンギラスが土埃と共に姿を消した。
 「何だ、何が起こった!?」
 土埃が徐々に晴れていく。
するとそこにはめくり上げられたアンギラスの甲羅だけがあった。
どの甲羅はすぐさまライトニングフラッシュで反撃を開始した。
 「そうか、丸まったフリをして少しずつ地面を掘っていたんだ。
そしてあの一瞬でその穴の中に入り、攻撃だけに集中する。
なかなかうまいことを考えてくれるじゃないか。・・・民間人の収容はどうなっている!?」
 「現在、約80%を収容完了、アンギラスの攻撃による死傷者は出ていません!」
 その途端、轟天号全体に強い衝撃が走る。
 「電子砲1門に被弾、大破!」
 「艦長、今の衝撃で弾け飛んだ瓦礫により民間人数名が重軽傷を!」
 「くそっ、ミサイル発射用意、残りの電子砲で真正面から、ミサイルで真上からの二面攻撃だ!」
 再び衝撃が走るが、今回は直撃していないようだ。
だが早くしなければ死傷者はさらに増えてしまう。
 「ミサイル発射準備完了!」
 「撃て!」
 誘導弾発射機からミサイルが発射される。
ミサイルは急上昇し、さらにそこからアンギラス目掛けて急降下する。
同時に電子砲も連続発射される。
だがアンギラスはミサイルが命中する直前、穴の中から真横に飛び出して二面攻撃を回避した。
さらにアンギラスはスラッシュスパイクを形成すると体を丸め、尻尾を地面に叩き付けてまるで回転ノコのように轟天号に向かってくる。
 「ミサイル、電子砲発射!」
 再びミサイルと電子砲が発射されるが回転しているアンギラスはそれをすべて弾き飛ばす。
 (ダメだ、やられる!もう諦めるしかないのか!?)
 尚も迫ってくるアンギラスに誰もがそう思った。そして次の瞬間、

 アンギラスは炎に包まれながら真横に吹き飛んだ。

 アンギラスが吹き飛んだのと反対方向には煙を上げる名古屋駅ビル・セントラルタワーズがあった。
が、それがまるで失敗したダルマ落としのようにホコリを巻き上げながら下から崩れていった。
一方のアンギラスはそのホコリの中にいるモノを感じ取り、威嚇の大声をあげた。
ホコリが晴れていき、その中のモノを見た加藤はつぶやいた。
 「まさか・・・ヤツに助けられるとはな。」
 巨大な体、赤紫色の背ビレ、長い尻尾、鋭い牙が並んだ口。
ついにゴジラが名古屋に進入し、アンギラスに威嚇の大声をあげた。
アンギラスも瓦礫を弾き飛ばしながら起き上がり、威嚇し返した。
 「艦長、民間人の収容、完了しました。」
 「もう他に民間人はいないな?」
 「はい、間違いありません。」
 「直ちに戦闘区域を離脱、最寄りの防衛軍基地に民間人を避難させる。急げ!」
 轟天号は瓦礫を吹き飛ばしながら垂直上昇する。
先程まで轟天号と戦っていたアンギラスはすっかりゴジラに釘付けになっていた。
一方のゴジラも轟天号を一睨みするもののすぐにアンギラスに視線を戻す。
 「最強の怪獣王でも決めようというのか・・・?」
 轟天号はそのままメインブースターに点火し、防衛軍基地目指して飛び去って行った。
名古屋に残されたのはゴジラとアンギラスだけである。2体は再び最大級の雄叫びでお互いに威嚇しあった。

 今、地球最強を決める決戦が始まった・・・・・・・・・・・・。


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