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新・海底軍艦
作:toga13

第5話 「苦悩」

ムゥ帝国からの宣戦布告によって、地上国と海底国の前代未聞の戦争が開戦した。
しかし、戦況は海底国に有利であり、開戦当初にはすでに世界中の軍隊に被害が出て いた。
遺跡を調査していた鳴海と那美は、太平洋は危険だと思い、十分な調査情報を仕入れ てから日本に帰国。 東京にある考古学研究所で研究が進められた。 まるで戦争が始まってるなど実感していなかった。特に、今まで日本人は第2次大戦 から60年間以上も戦争をしていない、正に平和ボケしているから、実感するのは難 しかった。 しかし、不安と恐怖は世の中に拡大していた。

日本政府は緊急対策本部を設立した。
   日本 東京  首相別館 緊急対策本部
「すでにアメリカやロシア、中国にヨーロッパ各国の軍隊が動いている。だが、我が 国の自衛軍は動いていない。アメリカのブラウン大統領からこう言われたよ。「何故 日本は軍を動かさない」と・・・。」
内閣総理大臣の松岡は集まったメンバーにそう告げた。
「数年前の憲法改正によって、自衛軍を置きましたが、自衛軍は海外には簡単に出動 できない事が、前の自衛隊と変わらないんです。こっちから戦争をしないように・・ ・・」
「変わったといえば、正式に軍として認められた。そして、十分にアメリカなどが起 こした戦争に参加できるようになった。日本が攻撃されたらすぐに出動できるように なった。その他。それぐらいです」
「だから、数々の法律を潜り抜けないと、海外の遠征出動は無理です。せいぜい日本 領海内です」
憲法を知り尽くす三人組の内閣の職員達がそう言うと、松岡は顔を真っ赤に膨らまし て、拳を机に叩いた。
「それでは何のために国民の批判を受けながらも自衛隊を自衛軍に変えて、憲法を改 正したと言うのだ!」
「やはり日本はいつまでも憲法に縛られる愚かな国だというのか?」
防衛庁長官の山下がとんでもない事を言った。一同は驚き、松岡は睨んだ。
「山下君!どうなんだ?なんとかその愚かな国のために自衛軍を遠征出動できんの か?自衛隊の時でもイラクまで派遣できたろう!」
「イラク戦争ですか?あれは初めて多国籍軍として派遣された時ですね。あの時はア メリカの手助けでした。でも今回は、前代未聞の例を見ない戦争ですので、どう判断 すればいいのかわかりません」
「馬鹿者!」
松岡がそう吐くと、山下は眉をピクリと反応させた。
「よくそんなので防衛庁長官が勤めるな。」
その防衛庁長官を山下に任命したのは総理自身ではないか、山下はそれを思うのがた まらなかった。
だが、松岡はムゥ帝国から宣戦布告されてから十分な睡眠を何日もとっていなかっ た。仮眠すら少ない。目の下には隈ができている。ストレスもたまっていた。
「全てを決定するのが総理だと思いますが」
内閣情報局長が言った。
「総理、憲法を無視するのですか?民主党や国民が黙ってはおりませんぞ」
またこんな声も聞こえる。
「敵は姿がわからない、どんな国かもわからない、海底の敵国だぞ?モタモタすれ ば、何もわからない内に日本が攻撃されたらどうするんだ。日本は四方八方海に囲ま れてるんだ!」と、松岡。
会議は続いた。会議は数時間続き、疲れが目立ち始めた頃、首相秘書官の清川は明日 へ会議を延ばす事を決定して、メンバーを解散させた。後には松岡総理と首相秘書官 の清川だけが残った。
清川は30代前半の背の高い男であり、礼儀正しかった。しかも東大出のエリートで ある。過去、祖父が総理の秘書官であった。そして父は防衛庁長官を務めていた頃が ある。
代々日本政府に関係する優秀な家系であった。
松岡は椅子に座り込み、タバコを口に銜えた。
「清川君・・・どうすればいいと思う?アメリカや中国などがすでに戦っているとい うのに、日本だけが・・・」
「総理・・・・・。」
清川は何も答えられなかった。それが悔しくてたまらなかった。
「すまん・・・こんな事を考えさせて。私は日本の総理大臣だと言うのに、情けな い。」
「そんな総理・・・!・・・総理、私も苦悩させていただきますよ。そして考えま す。情報を入手し、調べ上げて総理に提案を必ず申し上げます。」
「・・・ありがとう、清川君。君がいて誇りに思うよ。本当にすまない。私も一国の 代表として今の現状を対処しようと試みるよ」
「総理、頑張りましょう・・・!戦後初の戦争。しかも世界中が関係する大戦争で す。それでも、その苦難を通り抜けましょう・・・」
「・・・・・・・」


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