ソフトクリームえっくす

これはソフトクリームを食べることに執念を燃やした男の、 あついあつい物語である。(風の中のすーばるー♪) 「ふぅーソフトクリーム食いたいなぁ。」 男はある夜、ふとソフトクリームが食べたくなった。 「よし。買いに行くか。」 男は夜9時を回っていることなど気にせず、 ソフトクリームを食べたいという一心で、 さっそうと原付にまたがりはしった・・・。 「今日は暑いからソフトクリームがうまいぞぉ!!」 そんなことを叫びながらただひたすら走った。 そしてついに栄光のソフトクリームを売っている店につく。 「えー。ソフトクリームひとつ。」 もう店にも客がまばらで、ましてやそんな時間に男一人できて、 ソフトクリームを注文するなど“変”以外の何者でもなかった。 ようやくソフトクリームができあがり、 念願のソフトクリームを手にした男は早速かぶりつく。 「ん〜!うまい!(ペコちゃんスマイルで)」 男の予想通りソフトクリームはうまかった・・・。 そのとき男の脳裏にある考えがよぎった。 『風呂上りに食ったら絶対もっとうまい!』 それは急な思い付きだった。 しかしその思いつきは確信を得ていた。 原付で走って食べるソフトクリームよりも、 風呂あがりのさっぱりした時のソフトクリームのほうが、 うまいのは誰が考えても明らかだった。 男はシチュエーションが大事なタイプだったのである。 「よし!もって帰ろう!」 男は大きな決断を下した。 しかしそれには大きな壁が立ちはだかっていた。 そう、男は原付で来ているのである。 どうやってソフトクリームを安全に運ぶか・・・。 男は考えた・・・。 「うん!大丈夫だ!」 そう。男には原付運転の腕に自身があったのだ。 事実、男の運転はなかなかの腕で、事故も一度しかしてない。 策は決まった。 いざ実行だ。 そして男が1つ、人よりも得しているのは、 人目があまり気にならないというところだ。 もう、9時半をまわった時間帯で男が一人、 デパートでソフトクリームを食べながら考え込んでいる。 誰がどう見ても“変な人”か、ちょっと“アレ”な人である。 しかし男はそんなことなど気にならない。 ある意味男の中の男なのだ。(ソフトクリームを持った) 「よーしがんばるぞ!」 ソフトクリームと男のプライドをかけた戦いが始まった。 男はソフトクリームを片手に持ち、 スクーターの陰にソフトクリームを隠し、 風が当たらないようにした。 「はやく・・・。はやく・・・。」 男はあせった・・・。 一刻も早く風呂上りのソフトクリームを堪能したい・・・。 そんな気持ちの高揚を抑えられないでいた。 しかし・・・。悲劇は不意に訪れる。 「!」 そう。ソフトクリームが溶けだしたのである。 完全には防ぎ切れてない風が当たるたびに、 溶けたソフトクリームが左手に襲い掛かる。 「まずい!このままじゃあ風呂上りのソフトクリームが!」 男は必死に原付をとばした。 しかしその心とは裏腹にソフトクリームは一気に溶けていく。 スピードを上げれば上げるほど、 左手にソフトクリーム(液状)の雨が降り注ぐ。 「しかたない。多少の犠牲は仕方ない。」 一度、溶け出してしまったソフトクリームを、 止めることはどんな人にもにもできない。 そんなソフトクリーム界の常識を、男は知っていた。 犠牲を覚悟の更なるスピードアップ・・・。 ソフトクリームを知り尽くしたものだからこそ、 考えだすことのできた策である。 ここでソフトクリームが溶けきってしまっても、 “通”はきっと彼を責めないだろう。 それだけ彼の対応は正しいのだった。 そして、ついに家に到着した。 左手はもうソフトクリーム(液状)まみれ。 しかし男はなぜか勝ち誇っていた。 そう、男は勝ったのである。 何に勝ったのかなんて、そんなものはわからない。 しかし男はソフトクリームとの死闘により、 かけがえのないものを手に入れたような気がした。 「・・・。(涙)」 しかし、神は非情であった。 男が原付から降り、駐輪所にとめようとしたそのとき。 いつもの癖で、両手を使ってしまったのである。 そう、ソフトクリームを持っている手を使ってしまったのだ。 「あ!しまった!」 それはまるでスローモーションのようだった・・・。 地面に向かってまっすぐ落ちていくソフトクリーム(半溶け) 必死に食い止めようと伸ばした手もむなしく、 人差し指にクリームがささり、そのまま落ちていった。 「あ〜・・・。」 男は言葉を失った。 無理もない。あんなに必死になって得たソフトクリーム。 風呂上りのソフトクリームも目前だったのに・・・。 ただ、男はまだ諦めていなかった。 おもむろに落ちたソフトクリームを拾い上げてみると、 「お!うまい具合に地面についた面が取れた!」 幸か不幸か、地面についた面がきれいに取れて、 見た目では何の問題もなくなったのである。 「よし・・・。」 男は決心した。 『食べられる』そう確信した男は、少し表面を手で払い、 一口食べてみた。 「うまい!大丈夫じゃないか!」 男は喜びに浸った・・・。 もう夢中でむさぼり食った。 原付での苦しかった死闘。 ベトベトの左手。 そして最後の最後でのまさかの悲劇。 そんなことが走馬灯のように頭を駆け巡った。 「こんなうまいソフトクリームは初めてだ!」 そしてついにソフトクリームを食べきったのである。 「あ〜(涙)うまかった(号泣)」 「よし!風呂入ろう。」 (風の中のす〜ばる〜♪)以下BGMで流れてます。 風呂上りのソフトクリームはできなかった・・・。 しかし男はそれ以上の満足感を得ていた。 男は日本の、いや、世界のソフトクリーム界の歴史に残る すばらしい偉業を成し遂げたのだ。 −−−完−−− 「あ、はっ、腹がいたい!!!!」 男はその夜、腹痛に襲われた・・・。 (この作品は実際にあった話を元に書いています)
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