|
長田野工業団地によって地域雇用にいかなる波及効果がもたなされたのかについ
て、長田野に最も近いX高校の就職状況を通して考察してみることにする。
福知山市内には6つの高校があり、X高校は府立工業高校として、大きな役割を果たし
てきた。X高校卒業生の約8割が就職する。地域別就職先については表2-1のようになっ
ている。
表2-1人口と面積X高校地域別就職状況
|
年 |
福知山 |
綾部 |
舞鶴 |
京都 |
大阪 |
兵庫 |
滋賀 |
中京 |
関東 |
その他 |
計 |
長田野 |
|
48
50
55
60 |
46
40
57
60 |
14
7
5
8 |
12
9
12
19 |
43
43
39
46 |
106
78
65
45 |
7
11
5
12 |
2
6
6
4 |
10
7
6
7 |
14
8
10
7 |
3
4
13
4 |
257
213
228
190 |
37
24
28
33 |
出所:『X高等学校卒業生修飾一覧昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
□ ■ □
長田野操業開始時の昭和48年3月と比較して、今春卒業生で大阪に就職した者が半減
している。これに比べて距離的には大阪市とさして変わらない京都府や中丹各市以外の
京都府は増加している。就職求人数は圧倒的に大阪が多い。しかし、福知山の行政区分
は京都府であり、大阪市と比べた場合の京都市への気分的近接性が、この数字に表れて
いると言えよう。本人に加えて親にの中にも、京都市はよいが大阪は遠すぎるという意
識があることも忘れてはならない。親も子も地元指向が強まる中で、長田野の就業機会
が果たす意義は大きい。
□ ■ □
しかし、希望者全部が長田野で就職できるわけではない。表2-2と表2-3にみるよう
に、新卒者地元採用の枠は決まっている。
表2―2 長田野工業団地57年3月以降の新卒者地元採用状況
|
|
大 卒(女子) |
短 大(女子)
高専卒(女子) |
高 卒(女子) |
計 |
|
57年3月 |
15( 1) |
5( 2) |
82( 25) |
102 |
|
58年 |
11( 0) |
9( 7) |
64( 25) |
84 |
|
59年 |
5( 1) |
1( 1) |
82( 35) |
88 |
|
60年 |
13( 1) |
6( 5) |
98( 39) |
117 |
出所:長田野会館での質問に対する解答より作成。
表2―3 地元労働力の雇用状況
|
|
操業企業 |
総従業員 |
地 元 |
移 動 |
地元雇用率 |
|
50年 |
16 社 |
1,210 |
774 |
436 |
64,0 % |
|
55年6月 |
22 社 |
2,000 |
1,567 |
433 |
78,4 % |
出所:福知山市編『長田野工業団地概要書』153ページ。
高卒男子新卒者の最近4年間の地元採用状況についてみると多い時で59名、少ない時
で39名の採用がある。このうち約7割がX高校卒業生であり、X高校の高い評価のほど
がうかがえる。
□ ■ □
X高校卒業生のうち福知山市内で就職するものについて、さらに検討を加えよう。
表2―4 X高校卒業生福知山市内就職者の内訳
|
|
長田野 |
福知山鉄道管理局 |
長田野と福鉄局
以外の福知山市 |
合計 |
|
51年3月 |
8 |
16 |
18 |
42 |
|
55年 |
28 |
13 |
16 |
57 |
|
60年 |
33 |
0 |
5 |
38 |
出所:『X高等学校卒業生就職一覧昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
表2-4にみるように、昭和51年3月に卒業したもののうち、福知山市内で就職したのは
42名で、このうち長田野での就職者は8名であった。目を引くのは福知山鉄道管理局に
就職した者が16名もいたことである。毎年ここには多くの卒業生が就職していたのであ
るが、国鉄の分割民営化が決まり、余剰人員削減ということで、58年3月以来採用ゼロ
が続いている。福鉄局と長田野を除いた福知山市内で就職した者は毎年減少しており、
60年3月にはわずか5名になった。しかも、自動車販売・フードサービスといった業種が
多く、高校時代に習得した技能を生かせる場が少ないというのが現状である。福鉄局と
長田野を除いた福知山市内での就職者の減少は、求人の絶対数の少なさが意味するとこ
ろが大きいが、雇用条件の問題も見逃すことができない。
□ ■ □
表2−5 雇用条件の比較
|
会社名 |
A社 |
B社(1) |
B社(2) |
C社 |
|
募集
職種 |
検査員,補助作業 |
レンズ組立 |
カメラ組立工 |
電気部品組立加工 |
|
作業
内容 |
完成製品をマイクロメーターダイヤルキャリバーなど等で測り検査用紙に記録 |
|
コンブアラインでの組立(半田)付け作業,カメラ部品の組立て,検査 |
|
|
学歴 |
不問 |
不問 |
高卒 |
不問 |
|
時間 |
8:00〜16:45 |
8:15〜16:00 |
8:15〜17:00 |
8:30〜17:30 |
|
休日 |
日曜・祝日・年末始・盆休・隔週休2日 |
完全週休2日 |
完全週休2日 |
日曜・祝日 |
|
基本給 |
530(円)×8(h)
×22(日)
=93,280円 |
560(円)×7(h)×21(日)
=82,320円 |
5257(円)〜6203(円)×2083(日)
=109,500〜12,9200円 |
3600(円)×25(日)
=90,000円 |
|
諸手当 |
給食手当3,300円
皆勤手当2,000円 |
|
時間害手当週平均8時間
6834円〜8064円 |
皆勤手当4,000円
精勤手当3,000円 |
|
通勤
手当 |
社規定により定額 |
全額支給 |
全額支給 |
社規定により定額 |
|
賞与 |
なし |
入社月に応じて金一封 |
年2回 4.6ヶ月 |
なし |
|
定年 |
なし |
60歳 |
60歳 |
60歳 |
|
年齢
制限 |
20歳〜40歳 |
35歳まで |
18歳〜25歳 |
なし |
|
備考
|
試顧期間
14日間
2)3ヶ月毎の嘱託契約採用 |
パートタイマーとして当発8ヶ月契約、以後は定時社員として1年契約可能。
退職金有、最低3年勤続者 |
常勤
退職金有、最低2年勤続者 |
常勤
パートの場合時給450円 |
(注)
A社とB社は長田野工業団地内の事務所、C社は福知山市内で主に長田野の事
業所から下請けをし、生産している事務所。
出所:『福知山公共職業安定所に昭和60年11月15日に提示されていた求人票』より作成。
表2―5は福知山公共職業安定所に昭和60年11月25日に掲示されていた求人票(7)により、
雇用条件を比較したものである。本社を大阪に構えるA社とB社の長田野工場と、従
業員数
7名のC社の雇用条件の差がよくわかる。このように長田野工業団地は、福知
山市に雇用条件の二層性をもたらしたと言うことができる。
女子の場合と同様に、男子にとっても長田野以外の福知山市内の事業所は魅力の乏
しいものになっている。そのために、大阪や中丹以外の京都府(特に京都市)で就職
する卒業生も多い。
□ ■ □
表2-6 X高校卒業生地元採用者数企業別順位
|
|
51年3月〜60年3月 |
|
57年3月〜60年3月 |
|
1
2
3
3
3
6 |
A社
43名
B社
17名
C社
16名
D社
16名
E社
16名
F社
15名 |
1
2
3
4
5
5 |
A社
24名
B社
17名
G社
10名
C社
7名
D社
6名
E社
6名 |
出所:『X高等学校卒業生就職一覧昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
表2-6はX高校卒業生の中で長田野で就職した生徒について、特に大量採用した企業を
あげたものである。51年3月からの10年間についても、ここ4年間に限って見ても、順位
はほとんど同じである。A社は長田野工場の男子生従業員のうち4割近くをX高校出身者
で占めている。B社は本社を大阪に構える電気機械器具メーカーで、2年前に長田野で作
業を開始したが、その時に高卒男子を大量に採用した。X高校卒業生を大量に採用した
企業のうち3社についてとりあげ、出身学科による採用の特徴について考えてみたい。
□ ■ □
表2-7 X高校地元大量採用企業学科別採用状況
|
|
業種 |
機械 |
原動機 |
電気 |
電子 |
計 |
|
A社
B社
G社 |
精密機械
電気機械器具
電気機械器具 |
21
3
2 |
5
1
1 |
9
4
6 |
8
9
2 |
43
17
10 |
出所:『X高等学校卒業生就職一昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
表2-7のように10年間にわたり43名ものX高校卒業生を地元採用した精密機械器具メー
カーA社の場合、4つの学科から均等に採用している。機械科の出身者が多いが、機械科
は長田野就職者の絶対数が多い。電気機械器具メーカーであるB社とG社は、電気科と
電子科の出身者を数多く採用しており、特にB社は表2−8からわかるが、この10年間に
電子科出身者で長田野で就職した者のうち、4分の1を採用したことになり、地元就職率
が4学科の中で最も低い電子科に対して、大きな貢献をしていると言えるでろう。
表2―8
X高校卒業生学科別地元採用者数の比較
51年3月〜60年3月
|
|
就職者総数 |
長田野就職者 |
地元就職比率 |
|
計 |
845
275
587
421
2,128 |
118
28
70
36
252 |
13.96 %
10.18 %
11.92 %
8.55 %
11.84 % |
出所:
『X高校卒業生就職一覧昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
□ ■ □
電気機械器具メーカーでは電気科・電子科の生徒を大量に採用するケースが多く、一
般機械器具・金属といった業種のメーカーには、特徴が見られず、化学メーカーでは、
X高校卒業生をあまり採用していない。機械・金属メーカーが製作所的要素が強く高卒
男子・女子・臨時パートの求人が多いのに比べて、化学メーカーには研究開発所的要素
が強く、大卒男子の移動労働者が多く、高卒生の求人はない(表2-9)。X高校卒業生
の例に見るように、地元雇用という面で大きな貢献をした長田野工業団地だが、地元採
用枠の拡大、男子大学新卒者数の増加が課題といえそうである。
表2―9 業種別分類とX高校卒業生採用状況
|
|
窯業土石 |
鉄鋼 |
非鉄金属 |
金属 |
一般機械 |
電気機械 |
化学工業 |
精密機械 |
その他 |
計 |
|
企業数
採用者数 |
1
11 |
3
13 |
3
28 |
7
44 |
3
16 |
4
47 |
6
19 |
1
43 |
6
17 |
34
238 |
出所:
『X高校卒業生就職一覧昭和51年3月〜昭和60年3月』より作成。
|