★2日目★
8--深夜の緊急決断
夜中急に目がさめた。時計を見るとAM2時半。再び寝ようとするが寝られそうにない。
しかたなく起きてテレビをつけ、時刻表にふと目をやった。これが後の旅を大きく変えた。
”快速・高崎発3:37、新宿着5:10”
「夜中にこんなものやっていたのか。しかしこれに乗ればかなり時間が稼げるのう。」
←もちろん心の中でのつぶやき
もう一度時計を見るとまだ3時前だ。「間に合う。よし!!」
急遽支度を開始する。従業員をたたき起こし、3時15分チェックアウト。
こうして両手に荷物を抱えた18歳の男は、ラブホテルまがいのビジネスホテルを抜け出し、真夜中の高崎市内を疾走した。
(しかしこのホテルは、今回の旅の中で最も料金が安くて最もいい部屋だった。)
9--快速列車ムーンライトえちご
駅に入ったのは3時半ごろだった。閑散としていた中にも深夜快速ねらいが何人かいた。
そして無事乗車。車内の乗客は昨日のスキー客以上の爆睡ぶりを発揮していた。
空いた席を見つけてほっと落ち着き、また時刻表を見た。すると!!
”快速・高崎発3:37、新宿着5:10、全車指定席”
・・・げっ!
指定席ってどうなんだ?予約しないと座れんのか?よくわからん。でも席空いてるし・・・
決断は早かった。
えーい、寝たふりじゃ!!
だがその決断はあまりに早い崩壊を迎える。眺めていた車窓にはすでに、反射して映った駅員の姿があった。
駅員「はい、乗車券拝見します。」
とにかく、18切符を差し出す。
駅員「指定席のは?」
僕「えぇっ?」
間髪いれず、”そんなこと知りませんでした節”の驚嘆(演技)を発した。
事情を駅員に説明すると、とりあえず510円払え、払えばそこにいさせてやる、予約した人がくるまでな、
と優しい声をかけてくれたので、僕はなんとかそこにいることができた。
だがこれは僕に限ったことではなかったようだ。聞けばあちこちで僕と同様のミニドラマが繰り広げられていた。
ようやく心も実際にも肩の荷を下ろした。
前の席の人が大きく座席を倒していたのでそれにあわせて僕も倒す。
ん?前の人はもしや?光浦靖子では??
結局違ったのだが、髪型からメガネに至るまであまりに似ていた。
やがて僕が乗ってから最初の停車駅の大宮に到着。いったいいくつ駅を飛ばしたんだろう。
光浦もまだ薄暗い大宮で降りた。この時点で本人でないことは明らかだ。
10--山手線ゲーム
5時10分、新宿到着。すぐさま山手線にのる。
まだ早朝なのに人多くて座れなかったというあたりが東京らしくてよろしい。
20分ほど乗って品川で下車。山手線にはなんとなくずっと乗っていたかったが一周している時間もない。
品川で列車待ちの間なぜかミロを買ってホームで飲んだ。
どうもまだ寝ぼけていたようだ。ほとんど本能とフィーリングで行動している。
だがあろうことか、同じホームで列車を待っていた人もミロを飲んでいるではないか。
見た目は違えど、ドッペルゲンガー現象を見たような気がした。
そして東海道本線へ。ラッキーなことに快速列車に乗ったようだ。
めざましテレビが始まる前に横浜に突入するとは4時間前の自分は思いもしなかったろう。自分の事なのに。
しばらくは工場だらけの神奈川の風景を眺めていたが、そのうち強烈な睡魔が襲ってきた。
荷物をおなかに抱えたまま、いつのまにか眠っていた。
11--東海道の風景・・・?
気がつくと沼津にいた。車内にはまだ学生もおとーさんもわんさかいた。
僕の反対側の窓には陽に照らされた太平洋が見えていた。
僕の側の窓には枯草生い茂る丘やコンクリート壁が見えていた。ちきしょう、あっちに座っとけば。
やがて清水に停車した。エスパルスファンのくせに未だ清水未到達のぼくとしては降りずにはいられなかった。
でもこの旅は本州一周が目的。観光というより時間とお金への挑戦なのだが。
短い葛藤の末ドアが閉まる直前で清水で下車。
駅から出た途端、エスパルスののぼりや商店街の幕が目をひいた。さすがは清水。とにかく写真におさめる。
30分ほど市内を闊歩した。エスパルス色が強い店は見つからなかったが、今は金も余裕がないので
そういうとこはいつか車で来よう、と妥協した。
再び列車生活へ戻る。またしても海側には座れず・・・。
しかし僕の側の窓には立派に実をつけたみかんの木があちこちに見えた。
民家の庭には潅木にまぎれてみかんの木が当たり前のように生えている。さすがは柑橘類王国、静岡だ。
12--アーバンカントリー
愛知県の豊橋で乗り換え、12時ごろに名古屋に到着。終点ではなかったが、ひるめしのために降りた。
駅前に「生活創庫」があったので入ってみた。まあこの店自体は福井にもあるのだが。
軽い買い物を済ますと1時間が経っていた。そろそろ出なくては、と駅に戻り適当な列車に入るとすぐにドアが閉まった。
うーん、結局ひるめしを食わなかった。名古屋名物えびふりゃあでも食おうと思ったのが。
乗った列車はこの旅初のワンマン電車だった。小規模で速度も遅い。
岐阜・滋賀方面なら快速でもあったろうが、なるべく多くの都道府県を通るため、伊勢平野を突っ切ることにしたのだ。
のんびりと三重県に入り、終点の亀山駅へ到着。乗り換え列車を待つが来たのは40分後。思わぬタイムロス・・・。
そこからの列車はまたもやワンマン列車だった。しかも山道のため速度は極端に遅い。
「バスの方が早いんじゃねえの?」と頭の中でグチをこぼす矢先、窓の向こうには僕らを追い越すトラックの姿があった。
風景はどんどんワイルドになっていく。やがて水の青い渓流が現れ、駅からは登山客が登場した。
そんな状況が1時間ほど続くと山道も下りに入り、上品な関西弁を話す買い物帰りの主婦が乗りこむ。
新潟でもそうだったが、方言の変化は山を越えた瞬間に訪れるようだ。
13--もう少しあと少し
PM4時半ごろ、木津駅に到着。あとで知ったが、ここは京都の一部らしい。
時間も時間なのでこの辺で宿を探そうと思ったが、そんなものはとても見つかりそうにない。
進んでいけばそのうち見つかるだろう、と大阪行きの快速列車に乗った。
奈良、法隆寺、天王寺と進んでいく。
もちろん車窓からホテルは見えるが、あと少し進もうという気持ちがあり、電車から降りられない。
結局終点の大阪まで来た。ユニバーサルスタジオ行きの派手な列車が薄暗い中に映えていた。
ここで宿探しを考えるが、大阪だと料金が高いだろうという理由でさらに進むことにしてしまった。
こうして、もうちょい、もうちょいというまぬけな意地はついに兵庫県の姫路まで僕を運んだ。
姫路駅に着いたのはPM8時ごろ。駅周辺を歩き回るが、どこも高そうだ。
そこで駅に戻って駅員に聞いてみた。
「すんません、このへんで安い宿ないすかね?」
周りに影響されてか、妙な関西アクセントがついている。
駅員は南より北へ行けという、ドラクエのようなヒントをくれた。
14--「妖」な姫路の一場面
駅員の指示に従い北へ向かうと商店街の一角にいかにも安そうなビジネスホテルを見つけた。
その手前にはソ○プランドらしき店が。客引きのお兄ちゃんに「どうですか?」と誘われる。
料金が極端に安い。どうせぼったくりだろう。しかも僕、身分がばれるとえらいことになるし(笑)
身分がどうこうの問題ではないが、とにかくお兄ちゃんを黙殺してホテルの建物に入った。
ホテルはビルの5階らしい。階段を上っていくが3階の踊り場に立ち入り禁止のロープが(!)
しかし入り口のネオンはついていた。堂々とロープをくぐり、立ち入る。
5階にはちゃんとホテルがあった。入り口横にエレベーターが。なるほど、これで来いということだったのね。
高崎に比べ、料金は高いしサービスも悪かった。
だが大浴場とサウナがあったから姫路に免じて許してやろう、とぼやきつつ長い二日目を終えた。
3日目へつづく。
