ハリウッド映画のような起承転結なストーリーや、現実からかけ離れたファンタスティックな世界を想像してはいけない。この映画は私達が暮らしている街角でも起こりうる、とても身近な話だ。そしてその結末もごく現実的で、夢が無いともとれそうだが、それがかえってストーリーを間近に感じることが出来た。自分とまではいかなくても、友達の1人にでも起こりそうな、後で話を聞いてじんわりと心温まるような、そんな作品である。
演奏家同士のストーリーだけあって作品全体に音楽が散りばめられているが、ミュージカル映画のような押し付けがましい雰囲気ではなく、自然とその場面に合ったBGMとして溶け込んでいる。日本人の想像するアイルランド・ダブリンを感じられる音楽や街の雰囲気に酔うことが出来そうだ。
エンドロールでの主人公2人の名前を見ると、劇中で何か不自然に思っていたことがするりと流れ、脚本家であり監督のジョン・カーニーの粋なねらいにほほえまずにはいられないだろう。