鏡の城


プロローグ

鳳凰の鏡が輝いている。
反射した光が俺を照らしている。
この遺跡が夕日の中に沈みかけた時、唯一の力が目覚める。
日の光は力を浮かび上がらせる。
この日の光が完全に欠ける時、全ての力が解放される。
全ての星が一つの中に入る時、この遺跡は扉を開く。
俺の役目はこの遺跡を守護することだ……。
全ての人がここから去って新天地を求め旅立った時、俺と奴はここに残った。
光の戦士としての役目を捨てるわけにはいかなかった……。
何年経とうと、俺は死ねない。
友は逝った。
俺は一体…………。

第一章

日の光が眩しい。今日は久しぶりに日が照っている。既に日は最も高い所に昇り、煌々と大地を照らしている。遠くに見えるあの遺跡も眩しいほどの陽光に照らされ輝いている。
通称『鏡の城』、陽光を反射する大量の鏡が設置され、いつ誰が何のために創ったものなのか、いまだに不明である。しかし、この遺跡の美しさはかなり有名だ。
「この遺跡に破壊跡はない、これはこの遺跡のあった時代にこの地域では戦争がなかったことを表している。私の調査ではこの遺跡は約四千年前から五千年前にかけて創られたものだと推測される。」
我が師にして、現代考古学の最高権威、カーラン・シミタル教授の意見書の一部である。
「この遺跡に関しては、様々な説がある。だが大きく分けて、二つの説が最も有力とされている。一つは、日光の反射を利用して、敵を怯ませる巨大な要塞だったという説。もう一つは、敵との戦闘に勝つことを祈願するための祭壇だったのでは、という説の二つである。この二つの説も有力というだけで実際の所は分からない。諸君の健闘を祈る。」
私の所属する、『鏡の城』調査研究所の所長フォルスター・ヒックスの激励分である。この激励分が俺たちが鏡の城の調査をするきっかけだった。
「まったく無茶苦茶だぜ。所長も先生も。あの遺跡は所長と先生が二十年も調査して全く何もわからなかった遺跡だろ?俺たち新人が調査させてもらえるのは嬉しいけど、俺たちは何の役に立てる?」
「お前もう少し静かにしろよ。うるさくて眠れやしねえ。まったく、どっちにしろ、俺もお前もただ調査に行くだけだ。そうだろ?」
「おいおいおい。フィン、お前本当に何も聞いてないし何も知らないんだろうな。」
「もちろん。」
おもいっきり嘘をついてみた。こいつは親友のカルロス・フェンリ。そして俺がフィン・アシュターテ。カーラン教授の下でトップの成績を誇り、遺跡調査では既に教授の解くことの出来なかった謎を幾つか解いている。
「まあ、お前がいるんだから心配ないか。」
簡単に言ってくれる。俺自身、遺跡調査は初めての経験だ。実際に見たって、謎が解けるか解けないかなんてのは簡単に分かるものじゃない。こいつも、いつのなったら俺の助手らしくなってくれるのやら。
「それよりもフォルスター所長に連絡入れたのか?あの人、逐一連絡しろとか言ってただろ。」
「あ!そうだ、すっかり忘れてた。」
大急ぎで連絡用の無線を取り出す。しかし、その無線は連絡を取るどころか電源すら入らなくなってしまっていた。
「なんで電源が入らないんだろう?」
「近くに強大な磁場が発生してるんじゃないか?」
「磁場なら電源が入らなくなるというのはおかしくないか?」
「確かに……。でもよ、もう少しで遺跡なわけだし連絡もいらないんじゃないのか?」
確かにそうではあるが、それでいいわけがない。
「貸してみろよ。」
そう言ってカルロスの手から無線を?ぎ取ると唐突に電源が入った。
「ガザッ………ピピ………お………おおい……きこえ……るの……。」
カーラン教授の声が無線から微かに聞こえる。
「カーラン教授、聞こえます。もう少しでそ『鏡の城』に到着します。」
「そ……か………、いい…ほ…こ、待ってる……。」
そこまでで無線は切れてしまった。受信状況が酷く悪かったのはおそらくこの辺一体の磁場が発生しているからだろう。
「なあ、教授なんだって?」
「おそらく、"いい報告、待ってるよ"って言ったんだと思うけどな。」
「中途半端だな。」
「仕方ないだろ。無線の受信状況がすこぶる悪いんだから。」
凄まじい勢いで走り続けるトラックの荷台の中、俺たち二人はしばらく言い争いを続けた。