第二章
すっかり日も暮れてきた頃、俺たちはようやく遺跡に辿り着いた。まずは寝床と飯を準備する。
「お〜い、この荷物ここでいいのか?」
「おう、そこに置いといてくれ。」
お互いに手伝いながら順調に寝床と飯を確保した。
「今日はとりあえずこのまま寝ようぜ。」
「そうはいかないよ。この遺跡は夜が最も重要なんだからな。」
「どういう事だ?」
「この遺跡は大小百八十の鏡から構成された光の結界とも言うべきもので守られてる。だからこいつを調べるのは日没後から日の出前にかけてが一番いいんだよ。だから今から調査を開始する。」
「か〜!相変わらずクソまじめだねえ〜。」
どう言われようと俺は方針を変える気はなかった。この遺跡について昔から非常に興味があった。俺が考古学を目指したのもこの遺跡のせいだ。七年前、父に連れられて見にいった考古学の出土品展の中に、この遺跡の物があり、この遺跡の写真が飾ってあったのだ。その遺跡を一目見た時、得も言われぬ懐かしさが込み上げて、涙を流していたのだ。俺は初めてその遺跡の前に立っている。ただ何かが、子供の頃見た時とは何かが違う。あの頃は、ただただ何か懐かしいものを感じ涙を流していた。しかし、今遺跡を目の前にして一番感じるのは悲しみと怒りだ。
「この遺跡には一体何があるんだ……」
「そんなことはいいから、まず飯にしないか?」
相棒のそんな声は、俺を現実に引き戻してくれる。俺の中には、父親の性質が強いらしい。父は、豪胆で辛抱強く、誰にでも優しく、思慮深かった。
母は俺は父に似ているとずっと言い続けていた。そして、死ぬ時も「お父さんと同じように、人に尊敬される男になりなさい。」そう言って死んでいった。そして、父はその数ヵ月後、母を追うように事故で死んだ。
「この遺跡で一番の謎はなんだ?」
「もちろん、この大量の鏡を何に使ったのかだろ?」
やはり普通の人はそう思うだろう。しかし、俺が一番不思議に思ったのは、何故この遺跡は放棄されたのかということだ。この遺跡自体はそんなに壊れた部分はない。戦争があったなら、破壊跡があってもおかしくない。だが、この遺跡には相した破壊跡はない。ならば何故放棄されたのだろう。地理的条件では、この辺りの部族たちは、基本的にこういった場所に住んでいたため問題は見あたらない。
「この遺跡に何があったのか。調査はまずそれからだ。」
「何でだよ。まず調べるのは何でここに鏡があるかだろ?」
「確かにそれも疑問の一つだけど、それよりもなんでいなくなったのかが最初に知りたいんだ。」
「はあ〜!何訳のわかんないことを言ってんの?」
「とにかく、その調査から入るから。それだけ覚えといて。」
「へいへい。分かりましたよ。全くお前はこうと決めたら絶対に曲げないよな。」
そんなことをブツブツ言いながら、あいつも調査を始めた。暗い中での作業は難行した。小さな明かりを頼りに、少しずつ調査を進めていく。そして、三日経った昼頃だった。
「なあ、これなんだろう?なんかの鉱物みたいだけど、こんな鉱物見たことねえよ。黒いから黒曜石かとも思ったけどな。こんな正三角形の出土品見たことあるか?」
相棒が素晴らしい物を発見してしまった。
「お前これ………。カナグロスの正三角形じゃないのか?三十年前に、先生が発掘現場から持って帰って来たっていう……。でも先生の正三角形は白かったよな。」
「確かにな。でも似てるっちゃ似てるよな。先生に聞いてみるか?」
先生に聞く前に自分で考える時間が欲しかった。
「先生に聞くのは明日にしよう。今日はこの辺で上がりにしよう。みんなもそろそろ疲れてくる頃だ。」
「そうだなわかった。明日先生に無線で連絡してみようぜ。」
「ああ。」
そう言ってテントに戻った俺は、あの黒い正三角形について考え始めた。あの形は自然に出来るものじゃない。人工的に作るにしても、現代の高等技術がなければ作ることが出来ないような代物だ。一体どうやってあれを作ったのか、そして、一体何のために創ったのか。謎は深まり俺の考えは全くまとまりに欠けていた。