依頼NO.44
『僕 ヲ 守 ッ テ』
依頼してきたのは、どうみても10歳前後の少年だった。
護衛の場合は依頼人に会わなくてはならないのだが、彼は会った瞬間絶句したのだった.
「何故護衛を?」
彼は黒く丸いレンズ越しに少年を見つめながら聞いた。
「ママに殺される」
少年は短く答える。
そして、ワイシャツの長い袖を捲り上げて彼に見せた白い腕には傷があった。
最近のものだとわかる。
白い腕に似つかわしくない赤い血液は白く、不器用に巻かれた包帯を染めている。
自分で巻いただろうことは、包帯の巻き方でわかった。
怪我をしているのは右腕なのだ。大抵の人間は右利きである。
赤い物の出所は5cmくらいの切り傷と言うことは包帯を巻きなおしてやったときにわかった。
「これは今朝・・・皿洗いをすぐやらなかったから」
少年は伏せ目がちに話した後、正面から彼を見つめた。
「お金ならありますから」
少年は訴える。
彼は仕事をうけた。
少年の名は橘 梗哉といった。
LISTLIA(りすとりあ)
桜菜 辻(おうな
つじ)がつくったいわいる「何でも屋」
メンバーが少ないためタウンページなどには載っていないが(依頼が多すぎると全てを処理することが難しくなるため)依頼したことは、どんなに危険で難しい仕事でも必ずやり遂げるため、評判はよく口コミで広がりほどほどの量の仕事がきている。
ちなみにLISTLIAのなまえは作曲家のリストからきている。
理由は「その作曲家の曲が好きだから」
この組織の結成理由も「なんとなく。人のために働くというのがかっこいい」だから、桜菜
辻の考えることはよくわからない。
とにかく思いつきで動く人間ということで・・・。
さて、物語にもどりますと・・・。
はぁ。
ため息をつく。
その場所は自分の家の前。
(あの子はうちの娘と同じくらいの年だった。しかし、娘とは違う。
あの子は無表情で震えていた。)
あの子とは今回の依頼主の少年のことである。
僕は、もう一度ため息をついてから自宅の戸を開いた。
「パパァ!おかえりなさぁい」
「こんばんわ。おじさま。おじゃましてます」
玄関にはいるなり出迎えてくれたのは娘の麗翔(りしょう)とその友達のホタルちゃん。
二人は玄関で飼い犬と遊んでいた。
僕は、犬の頭をなでながら娘の友人に聞いた。
「ホタルちゃん、今日はお父さんと一緒かい?」
「うん、お母さんもいっしょだよ」
「ありがとう」
そして僕はホタルの両親がいるだろうと思われる部屋にむかった。
「仕事だ」
僕の前にはトオル・カオル・葎(りつ)の3人がいる。
このメンバーはLISTLIAの中心人物。
「護衛って話だったけど?」
葎がきいてくる。
トオルは殺人などの殺伐とした仕事ではなさそうだと判断して、テーブルの上に脚を乗せた。それをカオルが叱っている。
「それが・・・」
「それが?」
「子供なんだ」
3人は、はぁ?っという顔で僕を見た。僕は昼間のことを話した。
護衛は僕とトオルが1週間交代で行うことになった。
機能は話し合いの途中でカオルと葎は「そんなの親のすることじゃない」とかいって依頼人の家にのりこみかねない勢いだった。
そんなやりとりを聞きながらトオルがボソッっと言ったことを、僕はあの子に聞いてみようとおもっていた。
p.m.3:00
本日の護衛ー 桜菜 辻
橘 梗哉が授業が終わって学校から出てくる。
友達はいないのか一人で出てきたところを少しうしろからついていく。
すると梗哉はぴたっと立ち止まったかと思うと僕の方を振り向いた。
「すこし、話し相手になってください」
梗哉少年は12歳だった。
麗翔の1つしたの小学6年生。
私立のお坊ちゃん学校に通ってるところからみると家は金持ちだろう。
話しているうちにわかったことは、変声期前の可愛い声や見かけと違い少年自体はひどく殺伐とした、大人びた人間だということ。
そして・・・トオルの読みがはずれたこと。
『継子ならべつにめずらしいことじゃないさ』
実の親子だった。
なら何故、実の子供を虐待するのだろうか・・・。
「うひゃぁ・・・」
僕は、梗哉少年の家のまえで思わず声ゐもらしてしまった。
僕の家が10個くらい簡単に入ってしまいそうな大きさ。
梗哉少年のたっての願いで僕はすみこみで護衛をすることになった。
確かに、住み込まないと家庭内で彼を守ることはできないからしょうがない。
しかし、いきなり不信人物が家にあがりこんで、家の人は平気なのかと思ったが別に誰にもなにもいわれなかった。
この家は、重苦しい空気にみちていると僕はおもった。
この家ではまっとうな子供が育たない。
僕は4日目にしてそう感じた。
父親は仕事三昧で家には近寄らず、たまに帰ってきても妻と使用人、愛人達と自室にこもってでてこない。
母親は、何かと息子に文句をつけては暴力をふるう。
こないだなんか、会談から梗哉少年を突き落として享年は右足を骨折した。
そして、さっき、梗哉少年が国語の98点のテストをみせるなり「何故満点がとれないの!」といって、包丁をふりかざし梗哉少年は左肩からひじにかけて重傷をおい、現在縫合中である。
僕は「手術中」の赤いランプの点灯している扉のまえで1人ランプが消えるのを待っていた。
母親は息子を切りつけた後、父親が帰ってきたため、笑みを浮かべながら扉の中に消えた。
僕は、その時点で決心していた。
「梗哉をひきとって麗翔と一緒にそだてよう」
決意をもう一度声にだして見たとき向こう側から葎とカオルがやってきた。
梗哉少年が病院に運ばれたときに来て暮れと連絡したのだった。
二人に僕の決意を話すと二人は快く承諾した。
「そんなの親じゃない」という、カオル。
「一人育てるのも、二人育てるのも一緒」という、葎。
「このままじゃ殺されちゃう」と二人は言った。
そして、どう両親を説得するかと話し合ってるとランプが消えた。
麻酔の切れた梗哉少年に会った。
「うちの子供にならないか?」という、僕の言葉に思いきり驚いた梗哉少年は小さく首を横に振った。
「それでなければ親から保護する施設にはいるか?」
この問いにも首を横に振る。
「じゃあ、今のまま家にいる?」
また、横に振る。
「梗哉は、どうしたいんだ?」
「・・・おじさんと・・・暮らしたい・・・」
小さな声だがかみ締めるように、はっきりといった。
そのとき、梗哉少年の頬をなみだがつたった。
骨折しても切り裂かれても、叫ぶだけで涙をこぼさなかった子供がそのとき大声で泣いた。
梗哉少年が退院した日、そのまま僕らの家につれていった。
玄関には桜菜家、久保家が勢ぞろいしていた。
「左から、一番ちっこいのが娘の麗翔。隣が僕の奥さん、つまり君のお母さんになる葎。で、隣が久保ホタル、麗翔の幼なじみで、そのお母さんのカオル。お父さんのトオル」
「梗哉です・・・」
僕の隣で小さくなっている梗哉を葎が抱きしめる。
「ほらぁ、ただいまは?みんな梗哉が帰ってくるのをまってたんだよ。
麗翔なんか弟に早く会いたいってうるさかったんだよ」
「ままっ!それは言っちゃダメっていったのに!梗哉、あたしの方がいっこ上だけど麗翔でいいよ」
梗哉はそのときやっと顔をあげた。
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