LISTLIAT-2「彼と依頼と子供たち」
梗哉が家にやってきたのは冬だった。
お金のかかる私立の小学校から、公立の学校へ編入。
生活が不便になったにもかかわらず、梗哉はいつも笑っている。
無理やり笑ってるのではなくちゃんとした、自然な笑顔。
笑う梗哉を見て引き取って本当によかったと思ってる。
しかし、最近ある問題がある。
梗哉に知られるわけにはいかない問題。
とにかく、梗哉は本日から麗翔の通う中学の1年生になります。
4月5日 朝
「おはよう麗翔。今日から学校?」
「おはようママ。うん。今日から・・・って梗哉の入学式でしょ。
もしかしてわすれてる?まぁた、梗哉すねるよ」
「忘れるはずないでしょ。カオルと一緒にいくんだもん。
でもなぁ、梗哉には学生服よりブレザーの方が似合うとおもうのに・・・」
「はいはい。ママ、お鍋ふいてる」
きびすを返し登校の準備のため2階へ行く麗翔の背中を押すのは、
「梗哉とパパをおこしてきて」というママの声。
桜菜家の一室。
この部屋の主は既に目覚めていてこれから3年間お世話になる学生服を見つめている。
橘 梗哉である。
もうそろそろ麗翔が起こしにくる時間だと思い、少し大きい学生服を身につける。
「成長期だから」と辻が選んだのはふたまわり近く大きい学生服だった。
「期待しすぎだ」とわらったのはトオル。
たとえ期待にそえることができなくとも辻は起こらないだろう。
ただちょっと苦笑するかもしれないけど。
梗哉はそんな辻がだい好きだ。
あの家から梗哉を連れ出してくれた辻を本当の父親のように思うようになっていた。
「おっきろー梗哉!って起きてたのか。つまんない」
梗哉の思案中にノックもなしに部屋に入ってくるのは姉・麗翔。
「おはよ。麗翔」
「おはよ。梗哉、パパ起こしたら寝癖直してあげるからちょっと待ってて」
そうしてしばらく後に辻の悲鳴があがった。
われらがパパ様はくすぐりがとっても苦手らしい(笑)
「梗、頭、火山」
ダイニングに下りた梗哉にホタルの一言。
「おはよ。ホタル姉。頭はあとで麗翔がやってくれるんだ」
「ほぉ。リィのブラコンにも困ったもんだな」
そういい、お茶を一口すする。
どうやら今日のお茶っ葉は煎茶らしいとこぼす。
「梗、学校の場所はわかっているな?」
過去に小学校からの帰り道に迷って警察沙汰一歩手前の前科をもつだけに、ホタルも心配になるらしい。
「あれ、ホタル。もう来てたの?」
「あぁ。葎さんへの伝言もあったからな」
「ふぅん。梗哉、寝癖直すからこっちおいで」
今日も、いつもと同じ朝が巡っている。
「おはよう、葎。こどもたちはもう行ったのか?」
「麗翔に起こされたわりには眠そうよ。みんな行ったわ。
あぁ、でも梗哉の入学式があるから私ももうそろそろ行かなくちゃ」
2階から降りてきた辻は寝癖だらけの頭でパジャマを下だけはいた格好。
まだ、眼鏡はなし。
後ろから葎を抱きしめて「ホタルちゃんの伝言とは?」と耳元で聞く。
「トオルから。新しい宝物を奪いに鬼が島から鬼が来てるから気をつけろって」
「そうか。でも、僕は宝物を渡すわけにはいかない。やっとあのこが笑ったのだから・・・」
辻は辛そうにいっそうきつく葎を抱きしめる。
その人物に一番最初に気がついたのは麗翔だった。
直後、葎とカオルが気付き、ホタルは行動にうつった。
梗哉の入学式の帰り道。
式典の吹奏楽の音に脅えていた梗哉をからかっていたとき。
誰かにあとをつけられてる。
梗哉以外の3人はLISTLIAのメンバーとしてトレーニングを受けているためあらゆる場合に対処できるが、梗哉は全くの一般人だ。
「まきこまれたらやっかいだ」そうホタルの唇が動き葎がうなづく。
麗翔は既に戦闘体制にはいっている。
ホタルは「梗、すまない」と一言声をかけた後梗哉を抱えて走り出す。
そして、カオルが尾行者にひややかに告げる。
「いいかげんでてきたらどうですか?橘
梗哉の母親とそこの雇われ用心棒さん」
「梗哉をかえしてちょうだい。あれは私の玩具なの。人の物をかってに誘拐すると犯罪よ?」
そういって妖艶に微笑をうかべる。
「梗哉君は人間です。いくらおなかを痛めて産んだ子でも玩具にするなんて・・・」
「何故?
おなかを痛めたからこそ、その痛みを子供にあたえるのよ?
こんなに痛い思いしてまで産んでくれてありがとうと感謝されても、逃げ出されるなんて思いもしなかったわ。心配しないで。殺しはしないわ」
そうして、子供のようにくすくすっと声にだして笑う。
「しょうがないわねぇ。どうしてもかえしてくれないのね。残念だわ」
その言葉が合図になっているのかそれまで隣に立っていた用心棒がうごく。
子供を人質にでもしようとおもったのか、麗翔めがけて突進する。
麗翔はつかまったかの様にみえたが、用心棒にとってあってはならないことが、まったく計算のうちに入っていなかったことが起きる。
後ろから羽交い締めにしようと回りこんできた用心棒の腹に肘鉄を食らわせ、脚を払う。倒れこんでくる寸前に後ろに回って手刀をいれて気絶させる。
「狂ってる・・・」
誰かがそう呟く。
さて、理由も知れないままホタルに誘拐された格好となった梗哉は今、おとなしく説明をうけている。
「一般企業には、とくに何でも屋関係からはLISTLIAは疎まれてるからな。
まれに、刺客が送りこまれてくる」
これは本当だが梗哉の母のことは本人には黙っていようという辻の判断によって今回のことも伏せておく。
「そっかぁ。知らないからホタル姉に誘拐されたんじゃ・・・とか考えちゃったよ」
無邪気に笑う。
この笑顔を守る、はじめての「弟」
そう考えると麗翔のことを笑えない程度に自分もブラコンだなと自嘲気味に思う。
ピロロロロロロ・・・・・
LISTLIAとは別に回線のひいてある電話がなる。
「はい、桜菜です。・・・はい、梗哉は僕ですけど・・・え・・・とうさん!」
その日の夕食後。
桜菜家の書斎にて梗哉の今後のことが話し合われる。
突然の梗哉母の襲撃。
意外な梗哉父からの電話での申し入れ。
その電話の内容とは・・・。
梗哉母は小さな頃貧困な家庭で虐待を受けながら育った。
梗哉父と結婚して裕福になり一子をもうけた。
しかし旦那の浮気が発覚し神経がおかしくなるほど悩み起こったことが・・・
虐待の遺伝
小さなころ虐待を受けた子供は、自らの子にそれを繰り返す。
このままでは、梗哉を殺されかねないので半永久的に梗哉を預かってくれ。
それが、意外な申し入れ。
自分は、狂った妻の介護で精一杯だからと。
「じゃあ、梗哉はこのままここにいてくれるんだね?」
「はい。辻さんが・・・お父さんがいいのなら」
「あたりまえだろ」
こうして、梗哉は完全に桜菜家の住人となり、LISTLIAのメンバーとなる。
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