「余韻 2」 02.1.19 by F澤


  かすかな眠りの中僕の体は完璧に10年前へと戻っていた。犀川沿いのプラネタリウ
 ムにハレー彗星を見に行ったときのこと、その時の思い出が胸の中をかすめた。確か
 近所の友達みんなを誘って行ったあの天体観測は誰がいただろうか?縄跳びがうま
 く出来なくて悔し涙を流していた大島君、幼稚園から一緒でまるで兄弟のようになって
 遊んでいた山口君、おさげがとてもかわいかったちぐさちゃん、鍵っ子で寂しがりやの
 面もあったけど、本当は男の子顔負けのドッジボールの強かった晶子ちゃん。ゲーム
 が人一倍強くて、天然パーマだった林君。
  そして円香ちゃん。
  あの時夜8時に待ち合わせをして、たしか母が引導して犀川のほとりまで行ったっけ。
 プラネタリウムの係員の人がひとつ、ひとつ星を紹介してくれた、真冬の寒い空中散歩、
 足元の雪をトランポリンにして僕らは真冬の星座のなかへ旅立った。「見えますかー?
 あれがオリオン座です。その後ろをかすみ飛んでっているのがハレー彗星です。」まだ
 小学校低学年だった僕らはくいいるように冷え切った夜空を見つめ、そして吸い込まれ
 ていった。「君、何座生まれだっけ?」「僕?うお座」「私、さそり座。今日は見えないみた
 い。」「円香ちゃんは?」「私?私、おうし座」「へー僕と一緒だ」誰かがつぶやく、「あ、雪。」
 小さな子供たちの小さな天体ショウ空中散歩は目的のハレー彗星を邪魔していた雲の群
 れからなる、白いふわふわした雪によってフィナーレを迎えた。寒い、寒いとみんな口々
 に叫ぶ。でも僕らは満足だった。たとえハレー彗星が見えなくて、骨折り損のくたびれもう
 けだとしても、みんな空が見せてくれたひと時の気まぐれに感謝さえしてた。
  そんな金沢の思い出。
  ひと時のセンチメンタルジャーニーから僕をたたき起こす、無粋な文明の利器の声。
  母からだった。