第23講

第23講
 デイヴ デイヴィス「BUG」(バグ)です。

「誰?」て方も沢山いると思います。彼はイギリスの長寿バンドKINKSのギタリストにしてリーダーのレイ デイヴィスの弟でもあります。現在50歳半ばくらいでしょうか。そしてこの「バグ」は現在の所最新作(なんと約20年振り!)で、アメリカでは去年発売、日本でも最近発売されたものです。

 往年のアーティスト(特に60、70年代に活躍した)で現在でも活躍してるのは沢山いるんですが、以前のような刺激のない「いい趣味」の音楽にはしったり、クオリティが下がったりするパターンが多いということは認めざるを得ないと思います。去年デビット ボウイの「ヒーザン」が発売され、よい曲も幾つかあったんですが、脈絡なくカバー曲が入っていたりして散漫な印象でした。実際本人も「ただの楽曲集」と評していて、年をとることによる全盛期のようなロックへの情熱が幾分冷めることはやむを得ないことだとさえ感じたりもします。

 しかしデイヴのこの新作はそれを見事に覆した会心の作品だと断言できます。間違えなくこのアルバムは純粋なあの「キンキーサウンド」の延長戦上にあるものです。残念ながら日本盤でも歌詞が掲載されていないので内容は分かりませんが、音はまるでKINKSの長い歴史をまとめたような彼らしいバラエティに富んだものになってます。
前半にデイヴらしいハードなロックンロール曲を並べ、3曲目の「THE LIE!」をはじめとしたクオリティの高い作品が数多あります。
このアルバム中特にすばらしいのが6曲目の「ROCK YOU、ROCK ME」。これほど美しいロッカバラードが現代に創られたことが奇跡です。とても懐かしい音なのに、時代遅れではない音楽を創ってしまう。これはデイヴが60年代というロックにって激動の時代に第一線のバンドとして活躍した経験、そして現代まで朽ち果てないアーティストとしての才能が結実した結果だと思います。
更に特筆すべきは8曲目の「FORTIS GREEN」。タイトルからしてKINKSを想起させるユーモアなタイトルですが、曲も「ビレッジグリーン」を発表した当時のようなホーン楽器を有効に使った音になっています。KINKSが好きな人には特にたまらない作品だと思います。ラストの12、13曲目ではトランスを取り入れたビートミュージックが展開されてます。これについてはデイヴのコンセプトがあって、競争社会に生きる人間がいつか経験する心理的なトランス状態というものを表したかったそうです。

 日本盤には一曲ボーナストラックが存在します。それが「GIVE SOMETHING BACK」。なんとこれは彼がジョージ ハリスンとの共演用に作った曲です。しかしジョージが二年前に亡くなったことでそれは実現しませんでしたが、最近発売されたジョージのトリビュートアルバムではデイヴが「GIVE ME LOVE」を歌っていて、そのことがこの曲をさらに感慨深いものにします。
この曲の雰囲気もどこかジョージらしく、その辺りの曲作りのこだわりにも感服するばかり。とにかく現代においてこれだけ質が高くロックンロール的なノスタルジックを漂わせたことがこのアルバム、そしてデイヴ デイヴィスの奇跡だと思います。



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