第26講

第26講
 キング クリムゾンの「クリムゾン キングの宮殿」。これはキング クリムゾンのデビュー作に当たるもので、今でもバンドのファーストアルバムがコレだったら驚きですが、この作品が発表されたのは69年。ビートルズの「アビーロード」発表の時期と重なっています。日本ではこのアルバムが「アビーロード」を抜いてチャートのトップになった、なんて言われてますが、実の所は5位が最高位だったようです。

 このバンドの母体となったのが三人構成のバンド「ジャイルズ ジャイルズ フィリップ」。その中の二人、ロバード フィリップとマイケル ジャイルズが「ジャズとロックの融合」を目指し再活動。そこに5人の先鋭的アーティストが集まり、キング クリムゾンが結成されます。

 パーソナリティ:
  ロバート フィリップ (ギター)
  マイケル ジャイルズ (ドラムス)
  イアン マクドナルド (キーボード)
  グレッグ レイク (ベース リードボーカル)
  ピート シンフィールド (作詞 イルミネーション)


ピートの「イルミネーション」というのは、ライヴでのライティング、装飾担当の役割の事です。彼は元々ギタリストだったんですが、ギターの評判はよくなく、作詞の能力、また視覚的にクリエイティブな芸術性を買われて作詞、イルミネーションとしてバンドに参加したようです。また、イアンはこのアルバムでキーボード以外にもメロトロンなど数々の鍵盤楽器を駆使しているし、ロバートとピート以外のメンバーはコーラスもしています。

 まずこのアルバムのジャケットのインパクトの凄いこと。
何者かが狂っているような顔がアップで描かれ、内ジャケを見ると、外ジャケの顔のキャラが今度は怪しい笑みを浮かべている、といった感じ。多分このジャケットの構成は一曲目の「21世紀の精神異常者」に基づいているものだと思います。
この曲は21世紀が社会的に崩壊し、そこでヒトの精神が分裂してしまう様を描いているようです。その「21世紀の精神異常者」の二面性を表したものかもしれません。
21世紀は芸術が拒否され死が賛美さると予測したキング クリムゾン。芸術が人々の救いとなり死に異論が唱えられていたベトナム戦争当時から30年以上経ち21世紀となった現在、どうやら彼らの目測は完全に的を得ていたといえるでしょう。
演奏面でも詩との融合が成されていて、だだっ広い荒野に取り残されたような奇妙な風の音から始まり、それを突っ切るように出てくるのはあまりに有名なホーンと重なった重厚なギターフレーズ。曲の約半分を占めるジャズ調(こういう演奏を本当の「ジャズ ロック」というのかも)の間奏は聞きもの。特にドラムスは圧巻。

 二曲目の「風に語りて」は一転してスローテンポになります。短い曲(6分くらいだけどもこのアルバムの中では最も短い)ながらも編曲、展開の手法はクラシックを参考にしているようです。この辺りが彼らの音楽を知的に感じてしまう所以でしょうか。

 A面の最後にあたる三曲目の「エピタフ」も名曲。ここでも彼らは現実を否定し、哀れみ悲しむ様をうたっているようです。個人的に好きなのはここでのグレッグの哀愁漂うボーカル。この曲でこのアルバムの一つのクライマックスを迎えるといってよいでしょう。

 B面の一曲目にあたる「ムーン チャイルド」は12分近くの大曲。彼ら独自の夢、幻想がコンクレート ミュージックといった感じで展開されます。最近のマイケルのインタビューでこのアルバム制作時の回顧した際、「我々はジャズ的なアプローチをしていたので、時には楽譜に表せない、リズムなんて存在しないような演奏もしたりした」と言っていましたが、この曲を聴けばそれもうかがえ知れます。

 そしてこのアルバム最後の作品はもう一つのハイライトといえます。アルバムの表題曲「クリムゾン キングの宮殿」。これは4節からなる構成になっており、「エピタフ」で聴けたようなロック シンフォニーが再び演奏されます。当時日本でも7インチで両面に分けてシングルカットされました。売れなかったみたいですが。


 ファーストアルバムでいきなり比類なき完璧な作品を作ってしまったキング クリムゾンはその後迷走していきます。イアンとマイケルは脱退し二人でバンドを作り、グレッグは「エマーソン レイク&パーマー」に参加、ピートも遅れて脱退。
キング クリムゾンはロバートによって今日まで支えられていますが、黒魔術にはまったり(ロック界には多いらしい。ジミーペイジとか)人格にも問題があったりで今まで何人もがこの宮殿に出入りしてきました。
「クリムゾン キングの宮殿」はロバート フィリップに大きな影となって今でも驚異的な存在感を醸しているようです。つまり、この作品は当時の先鋭的な若者達が集まり、見事なまでに芸術性が融合した奇跡的な作品といえるでしょう。



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