NO TITLE
中学の頃某サイトに送った小説です。
登場人物は主人公以外は全て親友達がモデルとなっています。


<1>
吹雪が容赦なく私たちに吹きつけてきた。目を開いていることさえできない。
まだ、3時頃のはずなのに吹雪で周りはほとんど見えず、薄暗く光も射さない。
とにかく寒い。足が重い。でも、ただひたすら歩きつづけるしかない。
裕介のほうも同じなのかさっきから何にも喋らない。
何故こんなことになったのだろう。
確か、裕介が商店街の福引で特等を引いたのだ。
それが、N県のリゾート地Hスキー場のスキー宿泊券だった訳だ。
ペアで招待だったから、一応私と来たんだけど。
運がいいのか悪いのか、道に迷ってしまったのだ。
どこをどうすれば初心者用のコースで道に迷えるのかいまだにわからない。
尤も、随分雪が激しくなってきた時点で、周りの人たちは引揚げはじめたのだ。
もっと遊びたいと言い張った私が悪いのだ。
余り雪が酷くなってきたので、そろそろ戻ろうと確かにペンションへ向かって歩き出したのだが
その時には既に、右も左もわからないほど降り出していた。
じっとしていてもしょうがないと、取り敢えず勘に任せて歩き続けたが、逆効果だったようだ。
途中で使えないスキー道具一式は捨ててしまった。
引き返そうにも方向がわからない。
およそ3時間ほどこんな状況が続いている。
こういう状況をおそらく遭難というのだろう。
「ねぇ、裕介」
気を紛らそうと、裕介に話しかけた。唇まで震えて、声もうまく出なかった。
「なに?大丈夫?」
裕介は危機感のない顔で私を振り返った。
「この状況で大丈夫な人は少ないと思うけど。裕介は大丈夫?」
「うん。まあ、何とか。」
裕介はやはり危機感のない笑顔を私に向けた。
彼も限界近いはずなのだが、それでも笑っている。いつもそうなのだ。
余裕なのか、危機感がないのか、恐らく後者だと思うが、この木下裕介という人間はどんな状況でも笑っている。
そのくせ、いつもとんでもないボケをやる。本当に困った人間だ。
「そう・・・・・ここどこかな?」
「さあ?N県のどこかだよ。きっと。」
「きっとじゃなくてもN県よ!」
疲労が限界に近いにもかかわらず私は叫んだ。
「大丈夫?疲れてるのに叫んで」
「あんまり大丈夫じゃないけど。」
力なく答えてから、私はもう一度尋ねた。答えは期待していないが。
「人がいるところまでどのくらいあるのかな?」
「うーん。あれ、何かな?」
見ると、明かりらしきものが20メートルほど先に見える。
さっきまでは雪で見えていなかったのだ。
「・・・明かりだよね。人・・・いるよね。きっと・・・・。」
私は、奇跡が起きたと思った。
確かに奇跡だった。
私たちは、雪に足をとられながらも、最後の力を振り絞りその明かりの元へ急いだ。

<2>
「だいぶ暖まられましたか?」
優しそうな女性が、私たちにココアを渡しながら言った。
「はい。どうもありがとうございます。」
私たちは、温かいココアを受け取り答えた。

あの後、私たちは無事に明かりの元へと辿り着いた。
それは、大きなとても古い、時代がかった洋館だった。
間近に見たその洋館は、独特の、何人にも開かれざる雰囲気をもっていた。
私たちは一瞬その雰囲気に飲まれ、この館を訪れることを躊躇した。
しかし、私たちに選択の余地はなかった。
恐る恐る、重たそうな扉をノックすると、時代遅れだが、その館には似つかわしい、執事らしき人が応対に出てきた。
事情を話すと、彼は快く私たちを中へ入れてくれた。
そして、しばらく入り口のホールで待たせた後、私たちを暖炉のある部屋へと案内した。
サロンという名前がふさわしいような気がする部屋だった。
案内された部屋には、約8人ほどの男女がソファーに座って暖炉にあたっていたいた。
ココアを渡してくれた女性もその一人だ。
「事情は聞きました。大変でしたね。」
先ほどの女性が優しく声をかけてくれた。
「すみません。どうもありがとうございます。」
「いいえ。では、あらためてようこそ幻燈館へ」
「幻燈館?」
「この館の名前らしいです。
 なぜそんな名前かは知りませんが。
 ところで、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
女性は控えめに言った。
さっきからの会話にしてもこの女性はとても控えめだ。
「はい。吉野彩夏といいます。で、こっちは、」
「木下裕介です。」
私が言うより早く、裕介は自分で名乗った。
「仲いいな。恋人か?」
奥に座っている男性がぼそりと言った。
何だか、印象の悪いひとだ。
髪も少し長めで目が隠れているし、眼鏡をかけているらしいので余計に暗く見える。
しかし、口元は笑っていた。
「いいえ、違います。」
「そんなことないです。」
私たちは断固とした口調で言った。しかし・・・
「沢山君、そんな決まってること聞いちゃ駄目だよ。」
どうやら、彼らのリーダーらしき人が私たちの答えを無視して言った。
その場の人々は笑い出した。
彼も眼鏡をかけているが印象は180度違う。
「柴野、言うこときつい。」
間抜けそうな、目の細い男性だった。
「もう、柴野先輩も、沢山先輩も初対面の方に失礼ですよ。」
ココアをくれた女性がたしなめた。
「ごめんなさいね。この人たち自分に恋人いないからってひがんでるんです。
 気にしないでください。」
「うるさいわぁぁぁ!」
パコンという音がして、女性はさっきの嫌な男性に何かで殴られたようだった。
「ところで、皆さんのお名前を教えてもらえませんか?」
さっきから黙っていた裕介が聞いた。
「そういえば自己紹介してないな。沢山賢也だ。よろしく。」
嫌な奴は軽く裕介に会釈をしていった。
「小島由真です。」
沢山さんの隣に座っていたさっきの女性が言った。
「柴野智です。」
小島さんの隣の柴野さんは人懐っこい笑顔を浮かべながら、軽く頭を下げた。
親しみやすい人だ。
「原田隆明だ。」
笑って軽く手を上げた。
彼は、笑うと余計に目が細くなった。
さらに原田さんの隣の男性が言った。
「青木雅彦、俺がこの中で一番若いから、困ったことあったらなんでも言ってよ。」
彼は、世間の基準で見るなら、いい男の部類に入るだろう。
でも、何か引っ掛かる・・・・・
「若い女の子の前だからって格好つけちゃって。
 こいつには、気をつけたほうがいいよ。」
もう一人の女性がいった。
彼女も、人目を引く人だ。何と言うかとても派手で、華やかな美人だ。
髪は短くてボーイッシュな感じもする。
「何ですかそれは、仁科センパーイ。」
後ろにハートがつきそうな口調で言いながら、青木さんは仁科さんに絡みついた。
「はいはい、わかった、わかった。」
だだっこをあやすように言って、青木さんの腕を振りほどくと、私たちのほうを向いた。
「私、仁科千鶴。ちづって呼んで。」
彼女は妖艶に微笑んだ。
「誘惑」という言葉が頭を掠めていった。
裕介はと見ると、全く意に介せずといった感じだ。
「藤崎涼。」
最後の一人が言った。
目つきの厳しい、クールな感じの人だが、笑うとなかなか優しそうだ。
「これで、全員かな。
 ああ、あと幻燈館の管理をしていらっしゃる堀井さん夫婦がいるんだけど、後で会うと思うよ。
 他には何かある?」
柴野さんが私たちに向かって聞いた。
「あ、えっと幻燈館のご主人さんにご挨拶したいんですけど・・・」
裕介があい変わらずとぼけた顔で言った。
「えっ?」
一瞬、その場の空気が止まったような気がした。
「僕、何かいけないこと言いましたか?」
その場の空気を察したのか裕介は心配そうな顔で聞いた。
「いや、構わないよ。
 でも先に、着替えてきたほうがいいんじゃないかな。」
確かに私たちは、まだスキーウェアを着ていた。
「でも荷物はみんなペンションに置いてきちゃったし。どうしよっか?」
裕介は本当に困った顔をして私に聞いた。
「僕の貸そうか?」
「えっはい。どうもすみません。」
「では、吉野さんには私が貸しましょうか。」 小島さんが立ち上がりながら言った。
「ありがとうございます。」
「じゃあ、木下君は僕の部屋へ、吉野さんは小俣さんの部屋へということで。」
柴野さんも立ち上がり、裕介と小島さん、私と一緒に部屋を出た。