「そうだデューク、君には紹介しておこう。
セルジオ・ディーシャンだ。」
先程の部屋からやや離れた廊下で、ふと思いついたようにオーがスタスは言った。
その言葉に従い、青い髪の従者が礼をとる。
「蒼髪の魔術師一族」と大陸に名をはせるディーシャン一族の証だ。
ディーシャンは遥か南の大国アゼラ―ニュに仕えるている。
そう簡単に手に入るものではない。
年齢はまだ若く、30才前後といったところだろうか。
痩身で整った甘い顔立ちをしていた。
「初めまして、デュサリオット様。」
その彼がゆっくりと優雅に円を描く礼をとった。
「君も知っているはずだな。蒼髪のディーシャン一族の噂は。
そこらの魔>術師とは格が違うだろう?」
にたりと顔に張り付いたような笑いを浮かべ、デュサリオットを見やった。
デュサリオットも儀礼的な微笑を浮かべて答えた。
「そうですか?ルカ、ご挨拶を。」
「はい、マスター。」
ルカは答えると素直にデュサリオットの言葉に従った。
「初めまして、オーガスタス様。
魔術師のルカと申します。以後、お見知り置きを。」
「魔術師?魔術師の数は少ないと聞くが、そちは何処の出だ?」
オーガスタスは小馬鹿にするように、嘲りを混ぜた調子で言った。
それに対し、ルカは全く動じず、
「オーガスタス様、魔術師の名は余り重要ではないのです。
むしろ、その名を振りかざす者ほど信用ならぬもの。お気をつけください。」
いつもにまして冷たく硬質な声で言った。
くっとオーガスタスは不愉快そうに顔を歪ませた。
「では叔父上、これで私は失礼いたします。」
そんなオーガスタスをを尻目に、デュサリオットは廊下を右へと反れた。
蒼い髪の魔術師がただじっと、それを見詰めていた。
「上手く行ったと思うか?」
「少なくとも、私の存在をあの男に示す事はできただろう。」
人気の無い回廊を二人は小声で話しながら歩いていた。
辺りに人影は無い。立ち聞きされる恐れは無いだろう。
「ならば叔父上も当面の敵はお前だと思っているだろうよ。」
「いや、寧ろあんたを狙うんじゃないか?」
「・・・そう・・だろうか?。」
「まさかとは思うが、自分が狙われるより先に私に攻撃が向くと思っていたわけではないよな?
王位継承権を持つのは私ではなく、あんただぞ?」
「い、いや、そういうわけではないが・・・」
歯切れの悪いデュサリオットの答えにある考えがルカに浮かんだ。
「まさか私のことを馬鹿にしているのか?」
「は?」
予想外の一言にデュサリオットは思わず間抜けな声をあげた。
「あの魔術師に私が勝てないと思っているんだろ。」
どこか腹立たしげなルカの声にデュサリオットはふうっと一息つき、
「まあ、ディーシャンといえば知らぬ者はいないからな。
俺も実際、見るのは初めてだ。
けど、お前がさっき魔術師は名じゃないって言ったし、期待してるさ。」
「ふーん。
だがな、実際魔術師に名は必要だ。というよりも、血が必要なんだ。」
「あ?でも、さっき・・・・・・」
「あれは、嘘だ。言われっぱなしじゃ悔しいだろ。」
「をい・・・・」
フードから覗く口元に軽く笑みを見せたルカをジト目で睨むデュサリオット。
「魔術師の血筋というのは魔術に優れている場合が多い。
だから、ディーシャンやフロイトというのは有名なんだ。だが、それだけではない。
例え、魔術師の一族に生まれなくても希に天才魔術師というのはいるんだ。
独学では厳しいものもあるが、優秀な魔術師に師事して学べばよい。」
「お前やカインはどうだったんだ?」
二人とも優秀な魔術師ではあるが、二人がディーシャンやフロイトと言った名門だとは聞いていない。
「私達は同じ師について学んだ。それだけだ。
あの馬鹿については、私は話すべき言葉をもたない。」
腹立たしげにルカは言い捨てた。
「・・・そうか。あいつも良く分からない奴だしな。」
「カインと言えば、あの男に一つ確かめたい事がある。
あの魔術珠を貸せよ。」
「わかった。」
ふと思い出したように言ったルカにデュサリオットはただ短く答え、深くは追求しなかった。
 
|