ある男の夜

時間の針は24時を回っていた。
彼女からの電話の内容に受けたショックを隠し切れずにベッドの上にうずくまっていた。
なにげに窓の方を見るといつものようにいないはずの人の気配を感じる。
窓のそとに女性の姿が見える。
ついに幻覚を見るようになったかと思うとその女性が窓を通りぬけ部屋に入ってくる。
なんだ幽霊かと、自分でも驚くほど冷静でいた。
そして話しかける。
「なんか用か?」
・・・!
「だから、なんか用かって聞いてるんだ。」
・・・?
「なぜ驚かないかって?悪いな、少々驚いたが今は驚いていられるような気分じゃないんだ。」
・・・?
「何があったか?って。聞きたいか?」
・・・
「あんたの期待してるような、答えじゃないぜ。それでもいいのか?」
・・・
「そんなに聞きたいか。それじゃ、とりあえずこっちに座れよ。・・・失恋した。ふられたんだ。」
・・・?
「不思議だろ?でもなんで失恋とこれと関係があるのかって顔してるぜ。」
・・・
「俺も不思議だよ。あんたが出てきても不思議と冷静でいられた。」
・・・?
「まぁいい、彼女の話を聞かせろ!?いったいなんなんだ?」
・・・!
「いいから聞かせろって?しかたないな。綺麗な人だった、心の強さを持った人だった。」
・・・?
「何処に惚れたかって?優しさかな。どんな物にも変わらない優しさをもった人だった。」
・・・
「ずっと好きだった。想いが通じてこの上なく幸せだった。」
・・・?
「でなんでふられたかって?分らない。俺よりもいい奴が現われたかな?ははっ。ってなんでこんなに話してんだろ俺。」
・・・
「なに?もしかするとなにか理由があるのかもしれないって。そうかもしれないな。」
・・・
「でも、ふられたのは事実だ。これ以上そうこうするつもりはないよ。」
・・・
「だとしたら、彼女だけが女じゃないし。いつかまたいい人が現われるだろうって?ありがとよ。幽霊に励まされるとは思わなかったな。」
・・・
「はっはっは、あんたも死んでから人を励ますとは思わなかったって?そうだろうな。」
・・・
「じゃ、今度はこっちが聞くぜ。あんたなんで死んだんだ?」
・・・
「なっ!俺と同じ失恋だって!!。」
・・・
「そっか。結婚まで約束したんだな。それで裏切られた?」
・・・
「久しぶりにそいつの家にいってみたら女がいた?」
・・・
「しかも結婚してた?!なんて奴だ!!信じられね、許せねえな。」
・・・
「それからなにも信じられなくなってそれでついにはこの窓からか・・・。」
・・・
「それから、そんな思いをさせたにもかかわらず、そいつのことが忘れられずに思い出の詰まったこの部屋に実は俺が引っ越してきたときからいた?それでなんかのいるような気配がしてたのか。あんただったのか。」
・・・
「でも、あんたはえらいよ。」
・・・?
「俺がそういう状況に陥っても死のうとは考えても死ねないからな。そんな勇気ないからな。」
・・・
「たしかにそうかもしれない。けど死んでいいことなんかないって?そりゃそうだな。俺もまだこっちでやりたいことがたくさんあるもんな。」
・・・
「でも、もう死んじまったんだ。残念だ。生きてるあんたと会いたかったよ。まっ俺は構わないからいつでも出てきな。話相手になるさ。俺の話も聞いてほしい。」
・・・
「なに?俺にもっとはやく出会っていたら、死ぬ必要はなかったかもしれないって?思わせぶりなことは言わないでくれよ。おかしいな。なんだか本気になってきた。あんたのことが好きになっちまったみたいだ。」
・・・!
「関係ないよ。幽霊だろうがなんだろうが。」
・・・
「好きだ。ずっとそばにいてほしい。」
・・・
彼女の実体のない体を抱きしめキスをする。
次の瞬間彼女は消えてしまった。
それから、俺の部屋から気配は消え二度と彼女は現われることはなかった。
おそらく、彼女の心は満たされたのかもしれない。
彼女が幸せならそれでいい。

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あとがき
長編にまで持っていくのが難しいので短編という形で書いてみました。
バイクに乗っててふと設定とシュチエーションが浮かんだのでほぼ即興でストーリーを組んでみました。
不思議な恋愛ってな感じになりました。
結構、こうやって即興で物事を作り上げてくのは好きです。
上手い下手は別ですけども(笑)。
まっ、現実にはありえないんですけど、 こういう恋愛もなかなかいいものだと自分でも思ってしまいました(笑)。