MOVIE 3





 それは 何か大切だったモノが崩れる音


 きっとそうだ だってオレはこの音を 知ってる

 最後に聴いたのがいつだったのか

 それもよく憶えてないけれど



 「大切だった・・・?」


 そうだ いや

 そう 大切だったじゃなくて 大切なモノ

 今も大切だと 自分でちゃんとわかってる かけがいのないモノ




 周りを見渡す限り 何もない

 殺風景という言葉は この景色にあてはまるんだろうか?


 わかっていることは なくしたモノの大きさと

 その気が遠くなるような 永い隔たり


 「ずいぶん遠くへ来たよな・・・」


 その声も震えてる              寒いしな ここは


 ああ それからもうひとつわかってる

 ここには誰もいない



 「自分でも冷静でいられてないことがわかる

  ・・・・・ってことは ある程度は落ち着いてるってことか?」



 「冷静でいることと 平安であることは違う

                   何をするんだ? 探すのか?」



 「探すのは 目的地か? 出口か? 何かのコタエか?

                わからない    なにもわからない」




 ここでこうしてうずくまっていることは

 誰に何の迷惑もかけていないと 思う

 ・・・・・だって見渡す限り誰もいない


 でも もし誰かがオレのせいで苦しんでいるとしたら

 例えこんなになってたとしたって オレは自分を赦せない

 ・・・・・よな?


 なくしたモノを取り戻すには

 どれだけの時間がかかるのかわからないけど

 時間が解決してくれるわけじゃないことは わかる


 疲れてただけじゃ なかったんだ



 「いつまでもうずくまってればいいわけじゃないことは

  わかるだろう? いつか立って 歩き出さなきゃいけないことも」



 「・・・・・ホントに歩き出さなきゃいけないのか?

            立ち上がるだけでいいかもしれないし

     ひょっとしたら うずくまってるだけで いいのかもしれない」



 「わかるだろう って 一体何がわかるってんだ?

         わかってることは こんなにも少ないのに!

                  わからない    なにもわからない」



 どうしてこんなトコにいるんだっけ?

 気が付いたらここにいたと思う

 確か 逃げ出してきたような そんな気がする  でも


 「忘れたフリか? 逃げ出して来たじゃないか?」


 でも 今すぐそんなこと思い出して

 どうすればいいのか とか 考えなきゃならないのか?

 今はとにかく 何もしたくないんだよ!


 「何をすればいいのか もちろんわからないけど

      そうやっていじけてればいいわけじゃ ないだろ」


 正論はいいよ もっとオレのことを考えてくれよ

 オレがどんな想いでここでこうしてるか わかってるだろ?


 「・・・自分でわかってることを オレに言わせるな

    選ぶのはいつもオマエだし ここでこうしてるのは

                  まぎれもなく オマエの意志だ」


 だから正論はいいって言ってる!

 今は何も言うな オレは何もしたくないんだ


 「甘えたいなら それもいいかもしれない

                けど        それは他に言え」


 何もしたくないのが甘えだと言うのなら

 オレは甘ったれでもなんでもいい




 なくしてしまった大切なモノが

 オレの手の中から出て行ってしまったのか

 それとも オレが手放しただけなのか

 自分のココロでは納得していなくても

 冴えたアタマの片隅が 教えてくれる



 こうやっていると 顔にあたる地面の感触が

 オレのアタマを冷やしてくれる

 白いと思っていた 自分の吐く息は

 ・・・ああ 別に白くない

 本当はそんなに寒くないってことだ


 でも 温かい場所はここではないはずで

 その証拠に オレは 泣くこともできないでいる

 雪でも降るんじゃないかって思ってた空は

 やっぱり重たく曇ってる





                      このお話(?)はフィクションです