友達以上恋人未満

 

夏休みも後3日で終わる。

本宮大輔はやりかけの宿題と格闘していた。

母親の厳命で宿題を終わらせるまで外出はできないため

大輔は読書感想文用の本を読んでいた。

「あれ?あんたこんなとこで何してんのよ」

「姉ちゃんこそ」

「あたし?図書館に行くのよ。宿題してんの?」

「そうだよ」

大輔はクーラーの効いたリビングで宿題を広げているのを呆れた

様に声をかけられて思いきり眉をひそめた。

何せ部屋で勉強するより数倍効率がいい。

「じゃあ行ってくるね」

「うん」

 

大輔はローテーブルの上に置いてあるジュースを飲みながら

ため息をつく。

本当ならデジタルワールドの復旧作業を仲間とするはずだったが

今日だけはだめだった。

いつもならもう終わっている宿題のことで昨日の夜に大きな雷が

落ちてしまったのだ。

本宮家の母親はミーハーな所もあるが怒らせるとかなり怖いため

普段は怒らせないようにしている。

その時。間延びしたチャイムに大輔は反応して立ちあがる。

「はい」

「高石です。チビモンを連れてきたけど」

「あっ悪い。今下のオートロック開ける」

大輔はオートロックの解除ボタンを押すと玄関の鍵を

開けに行く。

昨日仲間に行けないと連絡をしたらパートナーデジモンだけ連れて

行くと行ってくれたので預けていた。

「やぁ。はいチビモン。宿題はどう?」

「読書感想文だけかな。お帰りチビモン」

高石タケルは大輔に手渡してくる。

大輔はチビモンに優しく微笑むとタケルにはいつもの笑顔

を見せる。

「タケル何か飲んでけよ」

「いいの?」

タケルの手を取ると無邪気に笑う。

「今1人なんだ。パタモンも疲れてるだろ?俺も1人で

退屈してんだよ。あっ…それとも用事あった?」

少し残念そうな声をしてしゅんと沈みこむ大輔の姿に

タケルは慌ててしまう。

自分の言動に一喜一憂する大輔が可愛くて仕方ない。

「いいの?」

「もちろん」

 

タケルの言葉にぱあっと笑う大輔はタケルから見ても可愛いと思う。

多分恋に落ちた人間の欲目だろう。

(大輔くんって小犬みたいだな)

そんな感想を抱きながらタケルはリビングに足を踏み入れる。

キッチンでジュースをいれたりしている大輔を横目で見ながら腰を下ろす。

本宮家のリビングはとても居心地がいい。

「大輔くんお家の人は?」

「いないよ。パタモンとチビモンはい」

大輔はトレイにお菓子やジュースをのせて戻ってきた。

ローテーブルの上を手早く片付けながら大輔はパタモンとチビモン

にお菓子を渡す。

(って俺…タケルに「好き」って言われたんだよな)

夏休み中に告白されたことを今思い出して大輔は思いきり

赤面してしまった。

「大輔くん何照れてるの」

クスクスと可笑しそうに笑うタケルにムッとした大輔をみて

ますますタケルは笑う。

「1ついいか?俺のどこが好きなんだ?」

「単純だけど優しい所かな」

それは誉めているのかと大輔は内心でつっこみながら脱力

してしまった。

「あとね可愛い所」

後半のセリフを聞いて首をかしげてしまった。

 

生を受けて11年たつが他人にそれを言われたのは初めてだ。

何せ親戚一同には「可愛い」とは言われているし家族からにも

「可愛い」と言われているので言われ慣れてはいるが

同性の目から見ても「かっこいい」と思うタケルの言葉に大輔は

複雑な気分になってしまった。

「俺のどこが可愛いんだよー」

子供時代はともかく今は言われたくない言葉である。

大輔はタケルの言葉に反論する。

「そういうとこ。そうだ大輔くんこの前の返事はゆっくりでいいよ。

それじゃあ僕は帰るね」

タケルは固まっている大輔の頭をくしゃりとなでるとお菓子を

食べているパタモンを軽々と抱き上げると玄関に向かう。

その後ろ姿を唖然としている大輔にパタモンは心の底から

同情してしまう。

(タケル…欲しいと思ったモノは何をしても手に入れる質だから…

大輔は…どんなことしても手に入れるよ)

悪魔に魅入られた哀れな子羊…。

そのたとえが1番だ。

 

「大輔ぇ…どうしたの?」

「チビモンどうしよう。オレ…あいつのことが気になるんだ。

笑った顔とか…オレ変かも」

心配そうに自分を見ているチビモンを抱きしめると泣きそう

になってしまう。

笑った顔が好きだと思うのはどうしてだろう。

親戚のお兄さんが言ってたことを思い出しながら大輔は

パニックをしている。

『恋は電光石火だぜ。好きになったら一直線だ』

…大輔の脳裏に酔うと母親にプロポーズをした時の

言葉を言う父親の姿が思い浮んだ。

大輔はチビモンを抱えたまま大きな瞳からポロポロと涙を

こぼしてしまう。

「好きって伝えなきゃ」

「大輔ぇ宿題は?」

「終わってから伝えよう」

涙をふくと宿題に取りかかる。

後少し。後少しというものがなかなか終わらなくて大輔は

イライラしながら鉛筆を走らせる。

「終わった――」

…全ての宿題が終わったのは夜の10時だった。

大輔はすっかり気持ち良さそうに寝ているチビモンに優しく

微笑む。

「お疲れさん」

いい夢を見ているチビモンを見ていると楽しい。

誰かを守りたいと思うのはチビモンだが(本当は守られてる)

守ってもらいたいと思うのはタケルなのかもしれない。

「寝よ」

部屋の電気を消して眠りに落ちる。

 

今も昔も恋をしたらその人のことだけを想うのだ。

そして青少年の暴走はまだまだ止まらない。

本宮大輔11歳。初恋にふりまわされる日々はまだまだ

続くのである。

翌日。

2人はトモダチから恋人になった。

そして2人の恋のステップはこれから…。