バレンタイン大作戦
2月に入り街はバレンタイン一色。
本宮大輔は一度家に帰ってから1人でデパートの地下街に来ていた。
さしせまったバレンタインデーのためか中高生から
OLまでたくさんの女性が賑わっていた。
大輔はなるべく女の子に見える格好でこの場所に来たため違和感がないはずだ。
「えーと。高いのじゃなくて。そうだ手作りにしよう」
あげる相手は決まっている。
大輔はいろいろ歩きながら考えをまとめてみる。
去年までミーハーな姉がチョコを作ってるのを見ると呆れていた。
今年はどうしてもあげたくなった。
「タケルは喜ぶのかな」
大輔は1人で想像してしまい顔を真っ赤にしてしまった。
「すいません。その手作りチョコセット下さい」
「はい。525円です」
財布から1000円札を出すと店員に渡す。店員が紙袋とおつりを渡してくる。
それを受けとるとラッピングを買いにその場を離れると大輔は
にっこりと笑う。
これからの予定を考えるとどうしても笑ってしまう。
(タケル喜ぶかな。大好きな奴に嫉妬するほど俺って心が狭いんだし。
タケルは優しいから女の子にもてるし仕方ないよな)
自分に言い聞かせるように考える。
高石タケルと恋人同士になってから寝ても覚めても彼のことしか
考えれなくなってしまった。
彼が他の女の子と仲良くしているのを見ると悲しいことに
嫉妬してしまう。
これには例外があって八神ヒカリと井上京が喋っている時は
特に嫉妬することはない。
2人には笑い話ではないがバレテルのでからかわれることもあるが
相談にのってもらってるのだ。
「大輔くん?」
「あっ 本当だ。何してんの?あっ 可愛い格好して」
噂をすれば何とやらである。
ヒカリと京は大輔の格好を見て小さく笑う・
「女の子に見えるよ。大丈夫 大丈夫」
「そうそう。何?チョコ?本当にタケルくんにベタボレね」
やはりからかわれた…。予想通りとはいえ少々ずっこけてしまうが
大輔は小さく笑ってごまかした。
「そうだよ」
ここは素直に認めるのが勝ちである。ただでさえ2人にはタケルのことで
悩んでいる所を見られているので仕方はない。
「あんた本当タケルくんの前になると猫100匹くらいかぶるわね。
大体ガサツなとこなんてタケルくんには知られてるんだから
素直でいなさい」
京にわざとらしくため息をつかれヒカリには笑われてなんだか
ムカツク気分になるのは気のせいではないはずだ。
『恋』でバタバタするなんて格好悪いと昔は思ってたくせに
いざ自分がそうなると可愛くなるものだ。
「うるせーよ。いいんだよ。それくらいしてねぇーとアイツを
つかまえられないよ」
「大丈夫でしょ。タケルくんは大輔くん以外眼中にはないから
自信持ったほうがいいよ」
ヒカリのなんだかよくわからないお褒めの言葉をいただいてしまった。
「ってかタケルくんがあんたのこと手放す気はないはずよ」
京も慰める様に声をかけてくる。
はっきり言って現在の心境はワクワクでもなくかなりどんよりしている。
「サンキュー。俺帰るわ。」
2人に手を振ると大輔は早足にこの場を離れる。
京とヒカリに付き合っていると疲れてしまうのは気のせいではないはずだ。
(好きなのに切ないのはきのせいじゃねぇよな)
なんだかとことん深みにはまっていくのは大輔の気のせいではないし
たぶん事実だ。
大輔は自宅近くの公園まで歩きながらふっと息を吐く。
姉から借りてきたバーバリーのマフラーを首から取るとバスケットゴールに
向かってシュート練習をしている想い人に近づいていく。
「タケル」
「ああ 大輔くん。今日はとても可愛い格好をして。いつも可愛いけど
今日は格別だね」
こっそり近づいてタケルの首にマフラーを巻いて声をかけるとタケルは
自分の顔を覗きこんでくる。
彼は日仏クォーターのため口説き文句がさらりと出てくるのだ。
リトマス紙なみの反応しか返せない大輔相手では半分以上発揮
されていないのが事実である。
「あはは。照れちゃって。どっか行ってたの?」
「ちょっとな」
あわてて紙袋を隠す大輔にタケルはピンときたが黙っておくことにした。
ここで知っていると言えば大輔が激怒するのを知っているので
ここは何も言わないほうがいいとタケルは判断したのだ。
タケルの可愛い恋人は人一倍照れ屋なのだ。
自分がわざと大輔以外の人間に優しくしていると知ったら彼は
どう思うだろ?――――言うつもりはないが。
小さなイジワルだ。
「タケル どうしたんだよ」
いつもだったらからかうタケルが何も言わないのを大輔は
不思議そうに首をかしげている。
「ううん。それよりこれ返すよ」
「えっ?」
「どっからどう見ても大輔くんのじゃないよ」
タケルはクスクス笑いながら大輔の首にマフラーを巻いてやる。
たぶん大輔の姉の物だろう。
「大輔くん。暗くなるから早く帰った方がいいよ」
わざとそっけなく言うと大輔が泣きそうな顔をしている。
最近大輔が可愛くてタケルは自分の理性を抑えるのがキツイのだ。
下手に長くいると大輔を傷つけてしまいそうでタケルは恐いのだ。
「なぁ タケル。俺のこと嫌いになった?」
大輔の手が弱々しくタケルの手をにぎってくる。そして今にも泣きそうな
顔をしている。
はっきり言ってそんな顔をされたらタケルはつらくなってしまう。
「世界でいちばん大輔くんが好きだよ」
「ホントに?太一先輩がタケルはフランスでカトリーヌって子に惚れた
って言ってて。だから俺のこと嫌いになったんだって思ってた。
俺タケルのこと信用していいの?」
タケルは心の中で『太一さんぶっ殺す』と物騒なことを考えながら
自分の態度に反省をしてしまった。
自分の態度で大輔を不安にさせているのだ。
「僕の態度1つで大輔くんを不安にさせているんだね。ゴメン」
タケルは大輔を自分の腕の中に閉じ込めるとそっと壊れ物を扱う様に
抱きしめる。
「太一さんの言葉と僕の言葉。どっちを大輔くんは信じるの?」
「タケル…」
タケルは優しくささやく。
こんなに大切な人は初めてだ。
だから笑っていて欲しい。傷つけたくない。
「帰ろう。送るから」
「うん」
ようやく安心した様に笑う大輔の髪をタケルは何度かなでる。
大輔を傷つけるものは何だって許せない。
「そう言えばお兄ちゃんが言ってたんだけど。最近丈さんと仲がいいだって?」
「丈さんはほらヤマトさんの恋人じゃん。それでいろいろ相談にのってもらってるんだ」
城戸丈というのはタケルと大輔の共通の友人である。大輔から見れば
頼りになる存在である。
「丈さんは大人だからね」
たぶん大輔もタケルに言えないことがあるのだろう。その点
丈なら大輔と似た立場にいるから相談にのれるんだろう。
「でもタケル。怒らねぇの?」
「なんで?丈さんなら大輔くんの相談にのってくれるよ」
少し安心した様に笑う大輔を見てタケルは小さく息を吐くとそのまま
大輔の口唇を奪う。
付き合って半年間。手一つ出さなかったタケルだが流石に可愛い顔を
されて我慢する気もない。
「……ん………んぅ……」
その時大輔の頭の中は真っ白だった。
「ファーストキスだった?」
「あっ あったりまえだ!!(
///)」照れ隠しに怒鳴るしかない大輔を見てタケルは笑いをこらえきれず
吹き出していた。
「帰ろう」
笑いながらタケルは抱きしめていた大輔を名残おしそうに放す。
そして大輔の手をにぎるとタケルはそのまま歩き出す。
いつもだったら「放せ」とか「やめろ」というはずだったが大輔は
そのままタケルに従う。
「タケルってかっこいいよな」
「今さら。気がついた?」
なんだかわからないがいきなり大輔に誉めてもらいタケルが小さく
軽口をたたく。内心では大輔にかなわないと思って。
「ところでチビモンは?」
「………姉ちゃんにえづけされてる」
年末の一件でで大輔はデジタルワールドのことを両親に話せるをえない
状況になったらしくバレてるのだ。
「ああ それで」
ムスッとした様子が子供っぽくて可愛い。
人は自分にない物を持つ者に憧れる。たぶん喜怒哀楽に富み自分に
ない者を持つ大輔を愛しく思う反面こわしたくなるのだ。
(僕は屈折してるな)
「しかもチビモンの奴。すでに母さんにえづけされてるんだぜ」
「ははは。さみしいんだ」
「うーん。というか半身をとられたかんじ」
「そっか」
あたりさわりのない会話を交わしながらタケルは大輔をを送るため
大輔のマンションに向かう。
大輔が不安になるのなら何十回何百回何千回だって『好き』と言う。
タケルはそんなことを考える。
「ありがとな。送ってくれて」
「いえいえ。それじゃあ。お休み。バイバイ」
マンションのエントラスで大輔にお礼を言われてタケルは小さく笑う。
後ろ髪にひかれる思いだが今からとある人物に文句を言わないといけなので
タケルは早足で去っていく。しかし角を曲がると直前にちらりと
振り向くと大輔が手を振ってくれていた。
「君は何があっても守るよ」
決意に似た表情でタケルは呟く。
恋は盲目。タケルには大輔しか見えなかった……。
バレタインデーまで残り10日。
To be continued
…