入道雲
ブルーのセロファンを一面に貼り付けた空へと、真っ白でもこもこした雲が水平線から
立ち昇っている。
「すっごい入道雲。あれを抱きしめて寝たら気持ちいいだろうな」
ゆうこが語尾を上げてそういう。僕たちはコンビニで買ったレジャーシートを浜辺に
広げ、その上に並んで寝そべっている。平日の海岸には僕たちの他に人影はない。
「ひんやりしてて、ふわふわで、ちょっと力を入れたら消えちゃうんだろうね」
ゆうこらしいせりふだと僕は思う。
ここにいるのがゆうこじゃなくて、まりだったらどういうだろうか。
すごい積乱雲ね。なんだか怖いくらい。
きっとそういうだろう。
少し暑すぎるみたい。車に戻りましょう。
そう続けるに違いない。
「ねえ、ちょっと身体焼きたくなっちゃった。ここで背中出したらびっくりする?」
ゆうこが笑みを浮かべ、僕の顔をのぞき込む。日差しに目を細め、僕は首を振った。
「ちょっとだけファスナー降ろして……。あっ、もうそのくらいでいい」
水色のワンピースから白い肩がこぼれた。ゆうこはそのままうつぶせになって目を閉じ
る。
「ああ、ケンコウコツがお日様を吸収してる」
気持ちよさそうにくすくす笑う。
まりがこんな風に振る舞える娘だったら、もっと違う付き合い方ができたのかもしれな
い。一瞬浮かんだそんな身勝手な思いを、砂と一緒に振り払って立ち上がる。
海から吹き寄せる風が僕の身体から熱を奪い、ゆうこの長い髪を乱した。
思い切り息を吸い込み、叫ぶ。
「でっけえ入道雲」
一呼吸置いてあふれ出したゆうこの笑い声は、海の上を渡り、いつまでも心地よく響き
続けた。
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